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存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?

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存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?

初回 都市部の暮らしに丁度いい小柄なボディ

小さな電動ハッチバックが、長期テストで筆者のところにやってきたのは、自宅の引っ越しの2週間前だった。同じバッテリーEVでも、フォルクスワーゲンID.バズなら、とても役立ったのに。

【画像】存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 競合の小さな電動ハッチ フィアットの500eも 全134枚

テールゲートとスライドドアを開き、フロアのパネルを取り外し、リアシートをフラットに畳めば、アパートにある荷物の半分近くは積めただろう。ワンボックスカーをレンタルする必要はなかった。植木鉢を倒したり、新居と何度も往復することもなかった。

アバルト500eは、シトロエン・アミなどのマイクロカーを除いて、英国で購入できるバッテリーEVとしては最小の1台。4シーターだが2ドアで、荷室も狭い。そのおかげで、パートナーと断捨離するべきか、相談する機会にはなったけれど。

もちろん、小さなクルマにも良い部分は沢山ある。説明するまでもなく、小柄なボディは都市部での暮らしに丁度いい。

アパート前の狭い駐車スペースへ余裕をもって収まり、入り組んだ路地にスルスルと入っていける。ヒースロー空港の混雑したターミナルビル付近でも、気を使う頻度は減る。

都心に住まうクルマ好きは、以前から相反することを天秤にかけてきた。車内は多少窮屈でも、扱いやすい小さなモデルにするべきか。高速道路が得意で、郊外の一般道も快適に飛ばせる、より大きいモデルにするべきか。実用性は別として。

この2つの条件を、同時に満たすモデルは多くない。しかし、アバルトの500eなら可能性はありそうだ。

短めの航続距離 595を模した排気音

サスペンションは減衰特性が良く、乗り心地は素晴らしい。小さな交差点をくるりと旋回し、キビキビと走り、市街地への通勤にぴったり。以前に、グレートブリテン島北東部のノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へ向かった時は、素晴らしい走りも披露してくれた。

ただし500eで問題になるのが、交通量の少ない、気持ちいい道まで到達すること自体。高速道路を数10km北上するだけで、42kWhと小さい駆動用バッテリーの15%くらいを消費してしまう。

ロンドンの北に広がるドライブルートを目指す場合、向かった先での充電を考慮する必要がある。急速充電能力は85kWで、最近のモデルとしては速いといえず、待ち時間も短くない。これからの長期テストの、足を引っ張りそうなことの1つといえる。

そんな航続距離とは別に、初めのうちに評価しておきたい機能がある。このアバルトでは、人工的なエンジン音を再生できるのだ。運転体験の充足度を高めるため、ガソリンエンジンで走るアバルト595の排気音を模したサウンドを聞くことができる。

これは、人によって好き嫌いが明確にわかれるだろう。耳障りでうるさいと感じる人もいれば、楽しいと感じる人もいるはず。筆者は嫌いではないが、考えが変わるまでオフにすることにした。

アシッド・グリーンで対外的な主張は充分

もともと595のサウンドが好きだったわけではないし、バッテリーEVに排気音が必要だとも思わない。自分があえてオンにして、本当は静かなクルマで人工的な排気音を楽しんでいると受け止められることへ、若干の抵抗もある。

高速道路を延々と走る場面では、低音が少し耳障りでもある。アバルトらしい個性を強めているとしても、この表面的なギミックが不可欠とはいえないだろう。だから、オン/オフを選べるのかもしれない。人工音を楽しんでいる人を、否定するつもりもない。

対外的な主張は、既に充分ある。サイズは小さいものの、ラッパーのカニエ・ウェスト氏並みに路上では目立つ。アシッド・グリーンと呼ばれる鮮やかなボディカラーもあって、スーパーの駐車場で見失う可能性はほぼない。

市街地を運転していると、人工音なしでも沢山の目線を感じる。遥かにパワフルな、最新のスポーツカーを試乗している時より。

小さくて目立つだけでなく、動力性能もアバルト級が目指されている。引き上げられた加速力と敏捷性は、とても楽しいフィアット500e以上の価値を、どれほど生み出したといえるだろうか。これは、長期テストで探りたいポイントの1つだ。

現在のEVならではの制限を、楽しさは上回る?

英国価格はお安くない。185Lの荷室と、荷物置き場に近いリアシート、航続距離250kmが与えられたバッテリーEVのお値段は、オプション込みで3万8795ポンド(約784万円)になった。

もっとも、内燃エンジンのホットハッチでも、このくらいの値段の選択肢が存在することは確かだ。動力性能では、遥かに勝るかもしれないが。

現在のバッテリーEVならではといえる制限を、運転の楽しさは上回るだろうか。今後数か月をかけて、電動のアバルトを検証してみたい。

セカンドオピニオン

自分は、実はアバルト500eが大好き。郊外の一般道を楽しく感じさせるバッテリーEVであり、都市部での生活にも溶け込める。ただし、ホットハッチとしては少しエネルギッシュさが足りないかも。

人工サウンドは、そこまで体験を左右しないように思う。サソリのエンブレムは、伊達ではないといえるだろうか。ベースとなった、フィアット500eとの違いにも興味は湧いてくる。 イリヤ・バプラート(Illya Verpraet)

テストデータ

価格

モデル名:アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
新車価格:3万8195ポンド(約772万円)
テスト車の価格:3万8795ポンド(約784万円)

オプション装備

アシッド・グリーン塗装:600ポンド(約12万1000円)

テストの記録

電費:5.9km/kWh(WLTP値)
航続距離:252km(WLTP値)
故障:なし
出費:なし

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