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北欧の新鋭はパンクに散る。逆転のヘイデン・パッドンとヒョンデが初優勝/ERC開幕戦

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北欧の新鋭はパンクに散る。逆転のヘイデン・パッドンとヒョンデが初優勝/ERC開幕戦

 欧州域内最高峰のFIA格式チャンピオンシップ、2023年ERCヨーロッパ・ラリー選手権が3月9~12日にポルトガルで開幕。世界戦でも活躍する一線級のドライバーが集結した『ラリー・セラ・デ・ファフェ・フェルゲイラス』は、現フィンランド王者ミッコ・ヘイッキラ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が終始ラリーを支配したものの、最終SSでまさかのパンクを喫し万事休す。代わってBRCレーシングチームとのジョイント参戦で挑んだヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)が、自身とヒョンデにERC初優勝をもたらしている。

 2023年よりヒョンデのファクトリードライバーに“復帰”したクレイグ・ブリーン(ヒョンデi20 Nラリー2)を筆頭に、数多くのトップドライバーが顔を揃えた今季のERC開幕戦は、昨季初タイトルを獲得したエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRSラリー2)擁するチームMRFタイヤが物量作戦を展開。タイトル防衛に向け、ディーラーチームをサテライト的に展開し、WRC世界ラリー選手権でも優勝経験を持つマッズ・オストベルグ(シトロエンC3ラリー2)らも、MRFを装着して自身初のERCフル参戦に挑む。

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 同国北部で開催されたフリープラクティスから同一レイアウトを使用する予選ステージでも、そのブリーンが最速タイムを記録し主導権を握ると、2番手にオストベルグが続き、3番手は昨季もERCでの優勝を記録したミコ・マルチェク(シュコダ・ファビアRSラリー2)と、この時点でピレリ、MRF、ミシュランの各タイヤメーカーがトップ3を分ける。

 そのまま夜に開催されたオープニングのスーパースペシャル(SSS)では、地元出身で国内2冠のリカルド・テオドシオ(ヒョンデi20 Nラリー2)が意地のトップタイムを記録。さらに2番手には予選ステージでロールオーバーを喫し、徒歩でセレモニアルスタートを切っていたエリック・カイス(シュコダ・ファビアRSラリー2)が続き、一部始終を見守った沿道のファンからの拍手喝采を浴びた。

「僕のチームに対し、ただただ感謝を捧げたい」と、新型シュコダを突貫工事で修復したオルサック・ラリー・スポーツのクルーを称えたカイス。「彼らはクルマを本当に良くリペアしてくれた。可能な限りスムースにドライブしようとしたが、それがうまくいったよ。かなり注意深くアタックしたが、クルマの感触は素晴らしかった」と、満足げな表情を浮かべた昨季の同SSSウイナー。

 その背後、3番手に続いた2度のポーランド王者であるマルチェクも「僕らはクルマを理解しようとしているし、ここにいることができてうれしい」と手応えを語った。「明日はマディ・コンディションの長い1日になるだろう。これがドライバーとして成長する機会を与えてくれることを願っている」

 一方、予選ステージでのジャンクション失速以降、リズムが掴めないでいた王者ヤレーナに対し、短いSSSで1.6秒近く速いペースを刻んだピレリ装着のパッドンは、現時点で「リスクはまったく犯していない」と、翌日からの本格ステージ群を見据える。

「この濡れた石畳では、どれだけのグリップがあるか分からないし、間違いなく安全側でプレーしている。明日以降に向け良い走りと良いウォームアップを心掛けたよ」

 そんな予報どおり雨に祟られた土曜はアクシデント多発の展開となり、予選ステージ勝者ながらスターティングオーダーで最初のポジションを選択しなかったブリーンは「判断を誤った」と悔やみつつ、最初のSS2で17番手と大きく出遅れることに。この挽回に意気込んだか、SS7のステージ中盤ではタイヤを損傷し、フィニッシュ後にはバッテリーにも異変が生じて優勝戦戦から脱落してしまう。

 一方、同ステージではWRC経験者で現ポルトガル王者の大ベテラン、アルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が激しいクラッシュを喫して即時リタイアとなり、チームからは以下の声明も出された。

「残念ながら、アルミンド・アラウージョとルイス・ラマーリョはSS7でアクシデントに見舞われ、以降のラリーを欠場します。クルーには明らかな身体的損傷は見られませんでしたが、予防措置のために救急搬送されました」

 安全上の理由とされたSS5のキャンセルに続き、このSS7の赤旗とSS8、SS9もキャンセルとされ、レグ1が事実上の早期終了に追い込まれるなか、各ステージでオストベルグやパッドンと渡り合い、トップタイムを分け合っていた北欧出身ヘイッキラがラリーリーダーとして夜を越すこととなった。

「確かにかなり挑戦的だった。僕にとって最も難しかったのは、グリップや泥だらけの場所を見つけること。前もってわからないから、推測するのは非常に困難だった」と、最終的に4.2秒のリードを築いたヘイッキラ。

「フィンランドでは雨が降ったり濡れていたりしても、こんなに泥だらけになることはないから、こういう状況に直面したことはないんだ。でも、これは良い学習でありペースは大丈夫だった。僕らは戦いに参加しているようだね!」

■目の前に合った勝利が……残り5km足らずで開幕戦優勝が霧散

 明けた日曜はSS総距離84.28km、4つのステージを午前と午後でループし、世界的に有名な“ペドラ・センタダ”のビッグジャンプも設定されたが、前日にタイヤにダメージを負って後退したブリーンがここで奮起。SS10で発生したパワーステアリングの問題も克服し、SS11からの3連続と最終パワーステージも制してみせる。

 一方、同じく好調さを披露したのがニュージーランド出身“Kiwi”のパッドンで、序盤にオストベルグを捉えて総合2番手に浮上すると、首位ヘイッキラに対し最終SSを残して2.8秒差まで詰め寄ってくる。

 現APRCアジア・パシフィック・ラリー・チャンピオンでもあるパッドンからのプレッシャーも響いたか、フィンランド王者がフィニッシュラインからわずか5km足らずで左フロントタイヤのパンク交換で停止したとき、2023年ERC開幕勝者の栄光はパッドンの手に渡ることとなった。

「(パンクの原因は)分からない」と、このタイムロスで総合8位に終わったヘイッキラ。「石がたくさんあったからパンクはしやすいけど、ミシュランタイヤには満足している。泣いても何の役にも立たない……それが現実だ。僕のチームに感謝したいと思うし、彼らは非常にうまく機能した」

 一方、初のERC本格フル参戦初戦を制し、ヨーロッパ選手権で勝利を飾った最初のヒョンデ契約ドライバーとなったパッドンも「ヘイッキラには申し訳ない」と謙虚な言葉で応じた。

「僕らは今週末、完全に最速ではなかったが、ラリー全体を通して一貫してそれを維持するペースがあった。過去の経験から、すべてのステージで速くなければならない……というゲームでないことを学んだんだ」と、35歳で自身ERC初優勝を手にしたパッドン。

「プッシュしたがリスクを冒すことはなかった。それが週末全体の哲学であり、スピードを選んでそれを維持し、今日はそれがうまくハマっただけさ。ポーランド、ラトビア、スウェーデンに行くと、彼ら若い選手たちは非常に速く、全速力のとてつもない勢いで走る。僕たちもそれに追いつく必要があるね」

 こうして70周年のシーズンが幕開けを迎えたERCは、続く5月4~6日に第2戦『ラリー・イソラス・カナリアス』の開催を予定。ここではSS総距離190.06kmのターマック全13ステージが争われる。

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