マイナーチェンジを受けたばかりのトヨタ・アルファード/ヴェルファイア。その試乗会が横浜で行なわれた。世界的にもあまり例がない、大型高級ミニバンという世界を作り上げたアル/ヴェルシリーズの開発エンジニアに話を訊いた。
絶大な人気を誇るトヨタの大型高級ミニバン、アルファード/ヴェルファイアがマイナーチェンジ受けた。
試乗記、パワートレーンの記事はこちらをご覧ください。
[新型アル・ヴェル試乗] アルファード/ヴェルファイア 新3.5?V6エンジンの実力は?
最大の敵は、過去のアルファードというように、カテゴリーシェアは75%だという。「競合車がない状態で、あえて言えば、これまで作ってきたアル/ヴェルがライバル」と開発責任者は言う。ライバルであるはずの日産エルグランドの立場は?という想いが頭をよぎるが、フルモデルチェンジから3年目の2017年でも月販約7400台と好調さを維持しているのだから、「ライバルはいない」というのも肯けるところだ。
特に、法人・高級志向のユーザーの支持が厚いところもアル/ヴェルシリーズの特徴だろう。
王者として、マイナーチェンジでどこに手を入れるか? 今回は、ボディ・シャシー、NVH担当の開発者に話を聞くことができた。
アル/ヴェルシリーズのような大容積で、2.2~2,3トンにもなる重い車両をちゃんを走らせるのは大変だろうと素人でも想像できる。開発者も「正直重いものですから、難しいところもあります。今回の3.5ℓV6は、重さを感じさせずに、気持ちよくドライバーの意志と同調できるような性能にしました」という。
アル/ヴェルのサイズだとそうそう軽く作るのは難しい。重量も乗り味に影響するし、そもそもセリングポイントである一脚60kgにもなる豪華なシートは重たい。とはいえ、あのしっかり座り感のあるシートがアル/ヴェルシリーズの魅力である。
決して新しいプラットフォームではないシャシーの上に載る大きな箱の中央に重たいシートを積むわけだから、NVH性能と走行性能を両立させるのは、相当高いハードルになるのだろう。
ボディでは、構造用接着剤の使用範囲を拡大した。重点的に使ったのは、Bピラーの後ろ側とCピラーの前側。スライドドアの開口部のマッチ箱変形を抑えるためだ。またフィクスドウィンドウ(前後ガラスとリヤクオーターガラス、そしてフロントの三角窓の計6枚)とボディの接合部分も柔らかいウレタンではなく高剛性ガラス接着剤を使った。ガラスそのものを構造部材に使い、周波数の高い振動を抑えたという。
トヨタには、得意の技術としてレーザースクリューウェルディング(LSW)という接合技術がある。今回は作りやすさを考えて、LSWではなく構造用接着剤を使った。
開発陣は、高級ミニバンのあり方を考えるために、マイバッハに乗り、参考にしたという。マイバッハは、現行のメルセデス・ベンツSクラスベースのモデルではなく、先代モデルだ。マイバッハに乗って「高級とはどういうことか」を開発メンバーで経験したそうだ。「細かい制御とか、アクセルを深く踏み込んでも後席の動きはマイルドでGを感じさせないとか、おもてなしの感じが違いました」という。
「乗ってみたら、マイバッハは、やはり静かで風きり音が小さい。やはりここからやらないと対抗できないんじゃないか」と思ったそうだ。「ドアの閉まり音もマイバッハは細かいチューニングがしてあるんですよ」
先代マイバッハは、5.5ℓV12エンジンを積む、超高級サルーン。車重も2.7トン、価格もほぼ5000万円からという正真正銘の高級車だった。
でも、開発陣は
「大空間という点では、我々はマイバッハに勝っている。シートを下げて脚を伸ばせるのもアル/ヴェルの魅力。静粛性能を磨けば、マイバッハとはもちろんカテゴリーは違うけれど、高級車になれる」と考えたという。マイバッハだけでなく、豪華クルーザーも見に行った。「クルーザーを買う方は高級車に乗っておられる。クルーザーからアル/ヴェルに乗り換えたとき、違和感を覚えないようにしたいと思いました」
静粛性については、とくに運転席とセカンドシートとの間の会話明瞭性を4%ほど高めたという。
操縦性では、ボディ剛性を上げて、脚をきちんと動かすようにした。ダンパーもバルブを変えて微振動を減衰させるようした。乗り心地をより重視していた旧型よりふらつきを減らして、ロール量も2割ほど低減させたという。V6は脚の作り方も変えている。これは試乗して比較してもわかるが、V6は固め、ハイブリッドの方が柔らかめに仕立てられてる。
開発者は、こういった、
「個人的な野望なのですが、社長さんみんながアル/ヴェルに乗ってほしい。社長や社長夫人に、“アル/ヴェルが欲しい”と言っていただける、思っていただけるクルマにしなくては」
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