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「え? 抜いちゃった?」小林可夢偉の激走バトルにKCMG関口雄飛コーディネーターも唖然/SF第6戦富士

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「え? 抜いちゃった?」小林可夢偉の激走バトルにKCMG関口雄飛コーディネーターも唖然/SF第6戦富士

「フロントウイングが壊れてなければ、めちゃめちゃ速かったね」

 7月に富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラ第4戦決勝のあと、Kids com Team KCMGの7号車小林可夢偉陣営では、そんな会話が交わされていた。このレース、1周目でフロントウイング翼端板を失っていた可夢偉はダウンフォース不足に苛まれながらも、8位でフィニッシュを果たしていた。

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 そして10月12日に再び富士で行われた第6戦の決勝でも、可夢偉は11番手スタートから好走。野尻智紀(TEAM MUGEN)との抜きつ抜かれつのバトルも制し、5年ぶりの3位表彰台を得た。

■「ちょっと野尻いじめとこう、と思って(笑)」

 レース後、久々の表彰台獲得の要因を問われた可夢偉は、「一番は、ペースが良かったこと」と答えている。予選は思うような結果とはならなかったが、決勝は第4戦の感覚が残っている。そのため、決勝直前のウォームアップ走行でもスタート練習を優先し、まともな計測は行わなかった。

「正直、レースは行き当たりばったりだったんですけど、前回の富士のレースをいい感じで走れたので、自信を持ってレースには挑めていたのかなと思います」と可夢偉。

 11周目という早いタイミングでのタイヤ交換は、第2スティント序盤にクリーンエアのなかでペースを上げられる要因ともなり、戦略と速さがうまい具合に絡み合っていく。

 そして22周目、キーポイントとなる場面がやってきた。目の前に野尻がピットアウトしてきたのだ。可夢偉はアドバン・コーナーで野尻をパスするも、コース後半に入ってタイヤが温まった野尻が、次のホームストレートで抜き返す。

 しかし、今日の可夢偉はこれで終わらなかった。翌周にはピット作業を終えた坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)に野尻が迫り、前方2台のペースが鈍る。そこですかさず可夢偉は再び野尻に挑みかかると、TGR(1)コーナーへの進入でポジションを奪い返すことに成功したのだ。

 この野尻とのバトルは、優勝を飾った坪井を結果的にアシストする形となり、トップ3記者会見では「ちょっと野尻いじめとこう、と思って(笑)。(坪井と野尻が争っている)展開は分かっていました」と可夢偉は冗談めかした。

 その後も可夢偉は、10周分フレッシュなタイヤを履く野尻を後方にとどめることに成功。さらに、ペースの上がらない太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をオーバーテイクし、表彰台をもぎ取った。

 好走を果たしたとはいえ、意外にも「手応えは、つかめてないです」と可夢偉。もちろん、目指すべきはもっと上、という意識があるからだろう。

「ラッキーなことに明日もレースがあるので、しっかりと、もっとやりきったレースをしたいと思います」と、可夢偉は日曜の第7戦に向けて期待を込めた。

■関口が呼び寄せたエンジニアとの作業も実る

 可夢偉の3位には、もちろんチームも沸いていた。KCMGは今季開幕前、大幅な体制変更と強化を行ったが、チームに新加入し、主に可夢偉車をサポートしている関口雄飛チームコーディネーターの表情も柔らかい。

「今日、早めにピットに入るというのはスタート前から決めてました。それは可夢偉の強いリクエストもあって」と、昨年までスーパーフォーミュラに乗ってた経験も活かし、無線でのやりとりも担当する関口。

 その後の野尻とのバトルは、関口にとっても意外な方向へと展開したようだ。

「1回、前に行かれたし、野尻くんの方がタイヤがいい状態だったから、もう無理かと思ったけど、それでも食らいついていって……。抜かれた後って、『なんとか諦めずについていって!』って一応(ピットから無線で)言うじゃないですか、みんな。僕も今日、そんなことを言ったような気がするんですけど、実際に抜くとは思わなかった(笑)。『え? 抜いちゃった?』みたいな」

「やっぱりそういう“抑えどころ”をきっちりと抑えられた結果の3位だと思うし、(ピット作業後の)裏で稼ぐときにOT(オーバーテイクシステム)をうまく使えたのもあると思う」

 なお第4戦の富士で、ウイングを壊しながらも手応えを得たセットは、第2戦からチームに加入したイタリア人エンジニア、コシュモ・プリシアーノ氏が中心となって作り上げたものだという。

 プリシアーノ氏は、関口がインターナショナル・フォーミュラ・マスターに参戦した際のエンジニアで、スーパーフォーミュラは未経験。それでも、エンジニアを探すとなった際に、関口の頭の中に最初に浮かんできた人物だった。

「やっぱりスーパーフォーミュラはレベルが高いし、ましてやコシュモも初めてだし、“マジシャン”ではないから、形になるのには少し時間がかかったけど」と言いつつ、第2戦以降に積み上げてきたものがリザルトとなって表れたことには、“推薦人”である関口コーディネーターもホッとしている様子だ。

「ピット作業も、今日は(福住)仁嶺の方が1.5秒くらい時間かかってしまったけど改善が見られて、ポールポジションも獲れたし、可夢偉も11番手から追い上げができたので、優勝はできていないけど、すごく大きなステップを踏めている。チームとして、成長が結果に表れて良かったかなと思います」

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