トップ画像のランボルギーニウラカン。乗り味こそ違うものの、クルマの構成や部品がアウディR8と共用なことはご存じだろうか?
国内外を問わず多くの自動車メーカーが、メーカー間の提携を行っい、コストダウンとともに技術的な成長を支えあっている。もはや1対1で有利に戦える時代ではないのだ。
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そんな提携には幸せなものもあれば、残念ながら不幸に終わってしまったものもある。今回はそんな自動車メーカーの提携の歴史を振り返ろう。
文:福田俊之/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年9月26日号
■トヨタといすゞの提携解消をどう読むか
日本列島が高気圧に覆われ、名古屋でも観測史上初めての気温40℃台を記録した2018年8月3日午後3時。
トヨタ自動車といすゞ自動車が同時にニュースリリースを発表した。
「いすゞとトヨタ、資本関係を解消」というタイトルで、A4サイズ1枚には「具体的な進展がないまま現在に至り、出資関係を見直す」というわずか500字程度のあっさりした内容。
その直前、トヨタは2019年3月期の第一四半期決算の説明会を開いたが、この案件についての説明はなかった。
思えば、トヨタがいすゞに出資したのは12年前の2006年。
いすゞは米ゼネラルモーターズ(GM)と長い間資本関係を持ち続けてきたが、経営危機に陥ったGMが富士重工業(現スバル)株とともに、いすゞの全株を放出したため、トヨタは間接的な「GM支援」という形で引き受けた。
トヨタは傘下にトラックメーカーの日野自動車を抱えており、現実にライバル関係にある2社への出資に踏み切ったことは、「予想外」の組み合わせであり、業界再編にもはや"聖域〟はないということを内外に深く印象づけた。
トヨタといすゞは小型ディーゼルエンジンの共同開発を目指したものの、ディーゼル車の需要減少とともに、トヨタがハイブリッド車(HV)に注力する方針に転換したことから開発を中断。
その後も具体的な進展がなく出資の意義がなくなったと判断した。
ただ、発表資料には「今後も両社は要素技術レベルの共同開発を継続するなど良好な関係を維持していく」との文言も盛り込まれ、"金の切れ目が縁の切れ目"ではないことを強調。
が、冷え切った関係を再び温めるのは容易ではない。トヨタから離れるいすゞが成長戦略を描き直すためには、新たなパートナーを模索することになるだろう。
■1990年代の提携は成功と言えそうだが最近は……
「結婚」なのか「同棲」なのかは別にして、長い人生のなかで思いもよらぬ他人同士がともに手を取り合って暮らすように、自動車業界にとってもライバル同士による提携はそれほど珍しいことではない。
歴史的に見れば、米国ではビッグ3に収斂されるまで、延々と再編劇が繰り広げられてきた。
欧州もかつては大手以外にも小資本のメーカーが林立していたが、英国のメーカーは事実上消滅。
EU諸国においてもポルシェやランボルギーニなどは独フォルクスワーゲン(VW)グループの傘下に収まっているように、スーパーカーなどニッチ商品を開発する小メーカーのほとんどは、大手メーカーと資本関係にある。
また、1990年代後半には、欧米を中心に"400万台クラブ"という言葉が流行し、独ダイムラーと米クライスラーが経営統合、日産が仏ルノーの傘下入りといった国境を越えた大型提携が次々に飛び出した。
自動車業界の歴史はまさにコラボの歴史と言っても過言ではない。
ただ、21世紀に入り、米ビッグ3の経営危機に巻き起こった新たなコラボは、従来のパターンとは少し様相が異なる。それまでは"規模こそが正義"という視点に立って行われてきた。
しかし、「世紀の大合併」と呼ばれたダイムラーとクライスラーがあっけなく"離縁"したように、スケールメリットだけを狙って救いの手を差しのべる「焼け太り型」では、業績向上に直結するシナジー効果は期待できないからだ。
今日のコラボは単純な生産台数という規模ではなく、競争力のある車種や先進的な技術をどれだけ多く開発し、どれだけすばやく、しかも数多く市場に投入できるかというメーカーの力が増すという点を軸に展開されている。
先述のトヨタといすゞの提携解消も、当初は「援助交際型」の意味合いも強かったが、いすゞの収益力が改善したことからむしろ"自活"の妨げになると、トヨタ側が"忖度"したのではないかと思われる。
いすゞは日産、トヨタとともに日本の自動車産業の"御三家"と呼ばれた名門企業。プライドが邪魔をしてソリが合わなかったという見方もできる。
■トヨタとスバルの提携はいいクルマを生んだ
その意味では、トヨタはスバルともGMの放出株を購入する形で資本関係にあるが、開発部門が完全な人手不足に陥っているなかで、小型スポーツカーを共同開発するなど新技術や商品を生み出すリソースを、共有するメリットは大きい。
だが、トヨタの出資比率は16.7%で筆頭株主だが、ダイハツやデンソーのような連結子会社の関係ではなく、お互いの本拠地の愛知と群馬では風土も社風も違う。
最近のスバルは度重なる不祥事で発言力はやや抑え気味のようだが、軽自動車などの量販車種ならともかく、ニッチ商品でバッジと車名が違うだけの「OEM車」を共同開発するには限界もある。
この先も「遠距離恋愛型」のコラボを継続できるかどうかは不透明だ。遠距離恋愛型では「長すぎた春」の後に破局を迎えたスズキと独VWの悪しき教訓も見逃せない。
国際仲裁裁判所を通して4年近くも争ったが、経営の独立性などを巡って対立したことが"破談"の原因だ。
スズキがイコールパートナー(対等関係)を主張したのに対し、VW側は上から目線の子会社扱い。
提携には経営トップの力量が試されるが、お互いに意地の張り合いの「自己顕示欲の強いゴリ押し型」では成果をあげるのは難しい。
自己顕示欲が強いタイプでも日産・ルノー、そして三菱自動車を含めた3社連合は、カルロス・ゴーン氏が3社のトップとして君臨していることで一定のアライアンス効果をあげている。
カリスマ経営者による「強烈なリーダーシップ型」で規模の拡大を狙って成功した珍しい事例である。
が、ゴーン氏が去ってからの次のリーダーに託された課題は重い。権力構造の変化でバランスが崩れれば"空中分解"する可能性もある。
■異業種とのコラボは「吉」と出るか?
完成車メーカー同士の最近のコラボでは、トヨタがスズキと業務提携を結び、マツダとも資本提携まで踏み込んだ。
今後注目されるのは、トヨタとパナソニック、ホンダとソフトバンクのように、EVバッテリーや「つながるクルマ」の次世代技術の共同開発など、「異業種との生き残り戦略型」のコラボが増えてくるのは間違いない。
そして過去の成功例を見ると、日産が経営危機に陥った三菱を子会社化して支援するような「お助けマン型」のコラボが圧倒的に多い。
それにはブランドの自主性を尊重しながら指揮系統を明確にして「主従」の関係を維持し続けられるかがポイントだ。
長年連れ添った仲のいい夫婦でも"熟年離婚"に発展するケースも少なくない。意気投合したライバルでも所詮は他人同士の寄り合い所帯。
市場環境の変化によっては、関係が断ち切れるという危うさを伴うことを肝に銘じ、プロジェクトをうまく進めていくことが、いいコラボを生む企業提携の秘訣だろう。
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