物流の「2024年問題」をご存じだろうか? 働き方改革関連法により2024年4月1日から、トラックドライバーなど「自動車運転の業務」に時間外労働の上限が課されることにより生じる諸問題を指すものだ。
時間外労働の上限規制は大企業では2019年の4月から、中小企業では2020年の4月から施行されているのだが、実際の勤務形態からかけ離れているトラックドライバーなどの職種では5年間の猶予期間が与えられている。その猶予期間が終了するのが2024年の3月末となる。
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働き方改革が進まないまま2024年の4月を迎えればドライバー不足はさらに加速し、物流が停滞しかねない。2024年問題は物流業界だけの問題ではなく、日本が抱える社会課題の一つと言える。
とはいえ、運送業が世間から「3K」(きつい、汚い、危険)と見られているのは事実だ。働き方改革関連法の施行以降、ドライバーの労働環境は改善しているのか? 全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)が行なっている大規模なアンケートから、その実態に迫る。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、表/全日本運輸産業労働組合連合会
調査について
運輸労連は「トラックの安全を守る全国行動」の一環として「職場安全点検」「ドライバーの安全運転を支援する先進技術等に関するアンケート」を2021年6月に実施し、このほど調査結果がまとめられた。
「職場安全点検」調査は過労運転の防止をはじめ輸送の安全を確保するために必要となる事項を点検・集約し、改善要求を行なうとともに、安全確保の体制を確立させていくことを目的としている。2021年調査の回答数は無回答・不明を除いた5865件だ。
質問項目の多くは毎年同一調査を実施しているので5年推移での比較が可能だが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となっている。従って2020年を除いた2016年から2021年の5年分の比較となる。
運行管理と安全対策
運行管理に関する部分では、乗務の前後に行なう点呼は「毎回実施されている」が96.5%、アルコールチェックは「実施されている」が99.5%、乗務記録の保管は「正しく保管・管理されている」が99.5%、始業点検は「行なわれている」が94.4%となり、ほとんどの事業者で基本的な運行管理は正しく行なわれている。
いっぽう過積載に関しては、「過積載をしないように指示されている」が85.5%で、改善は進んでいるように見えるが、「ほとんど指示されていない」も8.9%となった。これは前回調査の9.9%や2016年調査の9.1%からあまり変わっていない。
Q. 会社から過積載をしないように指示されていますか
一部の事業者では過積載を容認する風潮が根強く残っていることを伺わせる。
ドライバーの確保については、「車両台数の1.2倍以上の運転者がいる」は48.9%となり、2017年以降初めて過半数を割った。ドライバー不足が深刻化するなか、保有台数を減らすなど事業継続に向けた取り組みが続いている。
Q. 車両台数と運転者数はどうなっていますか
車庫は「充分確保されている」が92.1%、ドライバーの休憩・睡眠スペースは「充分確保されている」が69.1%、運転者の適性診断は「定期的に実施」が95.0%、健康診断は「定期的に実施」が99.4%となった。
ドライバーの健康に起因する事故が大きな社会問題になったこともあり、健康管理に関する部分は改善が進んでいるようだ。
Q. 定期的に健康診断が実施されていますか
労働時間の改善は進んでいるのか?
トラックドライバーの労働時間等の改善を図るため、厚生労働省は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、通称「改善基準告示」を策定している。ポイントとしては次のようなものだ。
●一日の拘束時間(労働時間と休憩時間の合計)は13時間以内、延長する場合は16時間以内。15時間超は週2回まで
●一か月の拘束時間は293時間まで。労使協定締結時は320時間まで延長可能
●休息期間は1日8時間以上
●休息期間は1回あたり4時間以上、合計10時間以上に分割可能とする特例がある
●運転時間は2日平均で1日9時間以内、2週平均で1週44時間以内
●連続運転は4時間以内
●運転開始後4時間以内または4時間経過直後に1回10分以上、合計30分以上の休憩が必要
●時間外労働は1日および1か月の最大拘束時間の範囲内
●休日労働は2週間に1回まで
特に「430休憩」と言われる4時間の運転につき30分の休憩という基準は、運転の仕方にも大きく影響するが、大型車のドライバーからは基準を守れるだけの休憩施設(駐車場)がないという意見も多い(トラックの駐車場については後編の「道路編」で取り上げる)。
改善基準告示の拘束時間については「守られている」が91.1%で、この数年で改善が進んでいる。
Q. 改善基準告示が守られていますか
拘束時間が守られていないものとしては、1日13時間という原則の部分が多く、1日16時間の最大拘束時間や1か月の拘束時間などについてはやや改善した。
Q. 守られていない拘束時間はどれですか
1日の運転時間や連続運転時間は「守られている」が90.1%、休息期間は「確保できている」が93.2%、休日労働は「守られている」が92.6%となり、こうした部分でも改善が進んでいる。
時間外労働の上限が短縮されることについては、「特に問題ない」が69.5%となり、前回(2019年)より増えたが、依然として3割以上の事業者に影響があり、8.9%は「運行が維持できなくなる」と答えている。
Q. 総拘束時間の上限が短縮されることの影響は
上限短縮のために必要となると思うこととしては、「賃金アップ」が最も多く、「人員の確保」は31.5%だった。
年間の時間外労働が「701時間以上」となったのは9.5%で、前回(12.9%)より減った。なお、2024年度から施行される時間外労働の上限規制では、特別の事情があって労使が合意する場合でも年720時間以内としている。
Q. 1年間の時間外労働は何時間ですか
事業者・ドライバーの意見
自由回答欄に寄せられた意見は次のようなものがあった(一部抜粋)。
(賃金に関するもの)
業界全体の運賃値上げをお願いしたい時短に伴う残業代が減少しているため、賃金のアップが必須収受率(1件あたりの運賃)を底上げしないと従業員の離職原因となる若手の賃金をもっと上げないと辞めてしまう時間給で働いているため、極端に働く時間が短くなると給与に関わることから懸念している人々が生活する上で必要な荷物の輸送に関わっている人たちに対し、物流を止めないための、金銭面でのフォローが国からも必要である
(労働時間に関するもの)
労働時間が減ったとしても、それに伴い賃金も減ってしまっては意味がない不規則な出勤時間になる運行ダイヤが問題である緑ナンバーの深夜割引の時間前倒し、または時間を廃止して終日割引としてほしい待機時間が長い。事故渋滞などで遅くなった時、また、4時間で30分休憩するのは、さらに目的地までの到着時間が遅くなってしまうため、休憩時間を見直してほしい待機時間の短縮や運賃アップ等、顧客の理解が必要拘束時間や時間外労働の短縮は、安全上良いと思われるが、実生活を取ってみると、給料に跳ね返らないとどこかで負担を強いられる
(荷主・職場環境・その他に関するもの)
バラ積みをパレット積みにし、無理のない仕事量を望む高速道路PAにおける大型専用の駐車場確保増を求めたい自動車運転業務を行なうものは、何年もこのようなアンケート行なっているが、実態は変わっていない荷主の理解と会社からの的確な運行指示が、改善基準告示を守れるようになるために必要絶対的にドライバーが少なく、高齢化が進んでいる免許さえあれば誰でもできるだろうという誤ったイメージが拭えない。簡単な仕事というイメージが低賃金に繋がっているのか
(運輸労連の「職場安全点検」「ドライバーの安全運転を支援する先進技術等に関するアンケート」調査結果報告書)
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みんなのコメント
ちゃんと家に持ち帰れよ。