青木拓磨の夢のひとつ「ル・マン」参戦へ向けて準備万端
2018年から3カ年計画でル・マンを目指すという、実業家フレデリック・ソーセが率いるSRT41は、そのプロジェクトの目標地点であるル・マン24時間レースへの参戦を控えている。チーム代表のソーセも四肢欠損の障がい者だが、そこへ青木拓磨、ナイジェル・ベイリーが合流。ご存じの通り、ふたりはともに下半身不随の障がいを抱える車いすドライバーである。これら身障者によるチームとして、ガレージ56(特別出走)枠で8月21日(土)~22日(日)に開催される本戦に参戦する。
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COVID-19の世界的な感染拡大で2020年はエントリーをキャンセル
LMP2マシンであるSRT41「オレカ07」は、下肢を使わずに運転できるように手動運転装置を装着した車両となっており、アクセル/シフトアップ/クラッチは、ステアリングの裏にあるパドルを使用する。ブレーキ操作およびシフトダウンはドライバーの右側に設けられたレバーを用いて行う仕様となっている。
SRT41の計画は、2020年にル・マン24時間レースに参戦するというものだった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり昨年は参戦を見合わせ、2021年大会にターゲットを定めて準備を進めてきた。そして2021年は前哨戦として本戦出場の準備を兼ねて、ヨーロピアン・ルマン・シリーズにスポット参戦し、ル・マン24時間耐久レースの本戦に向けて本格始動した。
異色のドライバーがチームに合流「ヨーロピアン・ルマン」を拓磨とともに参戦
そんななかSRT41に、2018年から参画していた義手ドライバーのスヌーシー・ベン・ムーサがチームから離脱したことで、代わってピエール・サンシネナが今シーズンから合流することになった。
サンシネナはチームの中で唯一の健常者ドライバーとなる。手動装置を装着した車両だが、ボタンでシステムを切り替えることができ、パドルを装着したステアリングも別のものを使用することで、通常のオレカ07と同じようにアクセル・ブレーキ・クラッチペダルの操作、そして上下のシフト操作がステアリングを握ったまま可能になる。
現在29歳のサンシネナの経歴を振り返ると、15歳からレーシングカートを始め、ル・マンのACOコンテストで2位に入ると、2010年からF4シリーズに参戦する。2011年のF4フランス選手権では2勝を挙げ、シリーズ3位を獲得。翌年の2012年からヨーロッパF3選手権に挑戦するほか、2014~2017年にはプジョーRCZレーシングカップフランス、VdeV(ベドゥベ)シリーズ、FFSAGTに参戦。2018年からはアルピーヌA110を使用したGT4にもエントリー。ピエールアレクサンドルジャンとタッグを組み、アルピーヌヨーロッパカップ、GT4インターナショナルカップ2018では優勝も飾っている。しかし、LMP2マシンに乗るのは、今回が初めての経験だ。
LMP2マシンを初体験したサンシネナの感想は?
普段はルノー・スポールの空力エンジニアとして働く傍ら、週末はドライバー・コーチやクラシックレーシングスクールのドライビングレッスンも行っているという。LMP2マシンに乗る機会を探っていたなかで、ソーセ代表と共通の知人からの紹介があり、参戦の機会を得ることができた。
ただ、本戦への参戦は今のところ他のドライバーが決定しているため、現在のところ実際のレース参戦はヨーロピアン・ルマン・シリーズ参戦(開幕戦と第3戦)のみとなっている。ル・マン24時間耐久レースはリザーブドライバーとしてエントリーリストに名を連ねているが、それでもヨーロピアン・ルマン・シリーズでの実戦経験は彼にとって貴重なキャリアのひとつになったに違いない。
2度目のLMP2レースを終えたサンシネナ選手に話を訊いた。「自分のクルマ人生の中で一番素晴らしい経験だった。マシンは想像以上にパワフルでブレーキもすごく利く。ドライブすることはすごく楽しい時間だったよ。2レース走ってマシンにも慣れてきてその理解も進み、タイムも縮められてきたと感じている。レースはもっとできるといつも思っているから、今日のレースは75点くらいかな。(マイナス25点については)やっぱりシーニュ(高速コーナー)の入り方をもっと改善して、タイムを削りたいって思うよ」「(ふたりのドライバーは)とにかく感動だし、尊敬としか言いようがない。この速さのクルマをあのシステムで、他とほとんど変わらない速さで走れるのはすごいことだと思う。もし自分が同じシステムを使って走るとなったら同じように走れるか正直自信がないよ」
われわれが日本国内で目にすることができる「アルピーヌA110」のエアロダイナミクス・エンジニアとして関わっていたという。そしてこの日もレースが終わると「明日から仕事だから」とフランス・パリの南西部にあるレ・ジュリス(ルノーのスポーツカー開発拠点)へ向けて、早々にサーキットを後にした。
去り際に「今、何をしているかは言えないけれどね」と次期車両の開発を匂わせてくれた。
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みんなのコメント
是非表彰台に上がってほしいですね!