レースの世界から誕生した元祖・空力パーツ
アメリカンなカスタムを施した車両に装着されている、ホイールをツルツルに見せる「ムーンディスク」。じつはドレスアップアイテムではなく、元々は最高速を目指すレースの世界で誕生したパフォーマンスパーツだった。そんなムーンディスクの歴史と知られざる製造方法を紹介しよう。
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足まわりを大きくイメチェンするスタイリッシュなムーンディスク
皆さんは「ムーンディスク(MOON DISCS)」をご存知だろうか? カーショーなどのイベントで、ツルツルのカバーのようなパーツをホイール部分に装着している車両を見たことがあるはず。あれがムーンディスク。つい先日行われた「ストリートカーナショナルズ」でもムーンディスクを装着した車両が何台もエントリーしており、ムーンディスクをドレスアップパーツだと思っている人も多いことだろう。
ところがシンプルで可愛い見た目に反して、本来はレース用のパフォーマンスパーツなのだ。ホイール内に空気が入り乱流が起こるのを防ぎ、ホイール&タイヤが回転する際の空気抵抗を極限まで減らすために考え出された形状が、このツルツルの表面というわけだ。
ムーンディスクはMOONEYESの超ロングセラー商品
ムーンディスクは、「MOONEYES(ムーンアイズ)」が販売しているパーツだ。現在のMOONEYESは日本の会社だが、そのルーツは、アメリカ・カリフォルニア州にあった「MOON AUTOMOTIVE」にある。創設者であるDEAN MOON氏がレース用のパーツやエンジンのチューニングなどを行っていたのだが、そのMOON AUTOMOTIVEの人気商品だったのが、ムーンディスクだったのだ。ちなみに現在日本にあるMOONEYESは代表であるシゲ菅沼氏が、渡米時にDEAN MOONからムーンディスクの日本での販売を許可され、商売をスタートしたのが始まり。MOONEYES設立当初からの主力商品であり、超ロングセラーなのだ。
装着には加工が必要で意外とハードルは高かった
ムーンディスクをよく見て見ると、単純に円形に切り出した鉄板というわけではなく、中央部が盛り上がった球状になっていることがわかるはず。じつはこれ、ホイールの中央部にあるハブなどを避けるために膨らんだ構造となっているのだ。また外周の3箇所に小さな穴が空いていて、ネジで固定されているのが判るはず。そのためホイール側に固定用ボルトを受ける穴を開ける必要があり、無加工では装着できない構造となっている。そんな装着へのハードルが高いのもムーンディスクの魅力と言えるだろう。
ちなみに実際のレース用ホイールは、外周にムーンディスク固定用のナットを溶接することもあるそうだが、レースで迅速な脱着が必要な場合には、クイックファスナーで固定できる仕様もリリースされている。
ムーンディスクのルーツは戦闘機?
一説によるとこのムーンディスクの形状の原点となったのは、第一次世界大戦時に活躍した戦闘機カーチスのホイールカバーだと言われている。これをユタ州ボンネビルでのスピードトライアルレーサーのホイールに装着することで、空気抵抗を低減するというアイデアがほかのレーサーにも広がり、ポピュラーになっていったと言われている。初期のころはハンドメイドや洗濯機の蓋などを流用していたそうだが、これを1950年代にMOONの始祖であるDean Moonが製品化したというわけだ。
現在ではアルミホイールが主流となり、回転抵抗の低いホイールも登場しているが、当時はスポークホイールやスチールホイールが一般的だったため、ムーンディスクは非常に大きな効果を発揮したのだ。
現在でも手作業で生産される金属の工芸品
そんなムーンディスク、ぱっと見は単純な形状に見えるが、前述の通り複雑な形状をしている。じつはこれ、1枚のアルミ板を旋盤で回転しながら、鉄製の型にローラーで押し付けながら徐々に曲げていき、膨らみをつけて成形している。Spun Alminumと呼ばれるこの工法は、日本風に言えば「ヘラ絞り」加工に相当する。
現在でもムーンディスクはカリフォルニア州サンタフェスプリングにあるMOONEYES USAの工房で1枚ずつ手作業で作られている。いわば金属を使った工芸品である。誕生時からMOONEYESのムーンディスクは、ファッションアイテムとしてでなく、パフォーマンスパーツとしてボンネビルの現役レーサーに愛され続けているのだ。
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みんなのコメント
走るたびにカチカチカチカチ鳴るので
なんか壊れてると指摘されやすいよ。