●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
必要装備を全部のせ! トヨタ タウンエースがベースのキャンパー
後輪駆動を採用した本格BEVの普及モデル
ID.4はEV専用プラットフォームのMEBから開発されたBEV。全長はゴルフ・ヴァリアント(ワゴン)に相応するが、短いフロントオーバーハングとロングキャビンを採用したことで、既存モデルの派生車ではないことを示している。ラインナップは2WDのみの設定だが、駆動方式は後輪駆動を採用している。
国内向けに導入されたのは、バッテリー容量と駆動モーターが異なる2つのグレード。52kWhバッテリーに125kWを出力するモーターを搭載しているライト(514万2000円)と、77kWhバッテリーに150kWモーターを搭載しているプロ(648万8000円)を選ぶことが可能だ。
プロの満蓄電航続距離は618km。実用性能も申し分なし
今回試乗したしたモデルは、高性能仕様となるプロのローンチエディション。カタログに記載された満蓄電航続距離は、ライトの数値を183kmも上回る618kmを誇る。実走行では八掛けくらいと考えても、プロならば500km近くは走れることになる。日帰りでのレジャーくらいはらくらくとこなしてくれる実用性も併せ持つ。
走りの印象としては、フォルクスワーゲンのBEVの先駆けとなったe-ゴルフのようなパワフルな味付けを想像していたのだが、いざ走ってみると意外なほど大人しい。全開加速時はモーター駆動ならではの大トルクを満喫できるが、低中速域では速度コントロールのしやすさを考慮した特性が際立つ。アクセルをじわりと踏み増せばそのとおりに反応するし、煽るような少し雑なアクセル操作をしたとしても、パワーの伸びは鈍されて滑らかに高まってくれる。極低速域では回生と油圧の協調制御に多少の違和感も感じるが、電動ならではの力強さや瞬発力を、制御の工夫で上品に仕立てているのは好感が持てる。
フットワークについては安定性を重視するフォルクルワーゲンらしいセッティング。後輪駆動も利いているのだろうが、重みをストロークでしっかりと受け止めることでしっとりとした味わいを生み出している。
大きなセンターディスプレイを組み合わせた見通しの良いレイアウトや、サイズに対して広々としたキャビンスペースが確保されるパッケージなど、実用車としての基本をしっかりと押さえている。走りも含め、BEVでもフォルクスワーゲンらしい魅力を持つことを確認することができた。
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