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電動化まであと9年! マツダのクリーンディーゼルは生き残れるのか?

掲載 更新 205
電動化まであと9年! マツダのクリーンディーゼルは生き残れるのか?

 クルマ好きのユーザーから高い人気を得ている日本車メーカーとしてマツダが挙げられる。スカイアクティブ技術と魂動デザインにより、運転の楽しい数々のクルマを手掛けてきた。

 そして、近年のマツダの成長を担ってきたのは、クリーンディーゼルエンジンといっても過言ではないだろう。しかし、そのクリーンディーゼルエンジンが苦境に立たされている。2030年に東京都、2035年から政府が、電動化政策を推し進めているからだ。

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 そもそもクリーンディーゼルエンジンは、ハイブリッドと並んで環境性能に優れたエンジンではなかったか。なぜクリーンディーゼルエンジンが苦境に立たされることになったのか?

 マツダは欧州市場でマツダ6のクリーンディーゼル搭載車の販売を終了し、北米市場ではわずか1年あまりでCX-5のクリーンディーゼル搭載車の導入を終えた。

 この先、マツダのクリーンディーゼルエンジンは生き残れるのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】もう買えなくなる? 今日本で販売されているクリーンディーゼル車

クリーンディーゼルエンジンをいま一度考える

写真はマツダのスカイアクティブDエンジン。日本では2012年の初代CX-5発売を皮切りにクリーンディーゼルのラインアップを拡大してきた

 クリーンディーゼルエンジンは、実用回転域の駆動力が高く、燃費性能も優れている。しかも軽油の価格は、レギュラーガソリンに比べて1L当たり約20円安い(燃料の本体価格は軽油のほうが高いが、税額の違いで安く買える)。

 税制的にもクリーンディーゼル車は、クリーンエネルギー自動車に位置付けられ、2020年度までは購入時に納める環境性能割と自動車重量税が徴収されない。

 このようにクリーンディーゼルターボは、ユーザーにとってメリットが多い。燃料代は同サイズのハイブリッド並みに安く、前述の通り動力性能は上まわるから、競争力の優れたエンジンでもある。

 クリーンディーゼルターボに力を入れるマツダでは、排気量も1.5L、1.8L、2.2Lの3種類を用意して、車種に応じて使い分ける。搭載車種はコンパクトカーのマツダ2(旧デミオ)から、LサイズSUVのCX-8まで幅広い。マツダでディーゼルを搭載しないのは、MX-30、ロードスター、OEM車のみだ。

 マツダはMX-30にマイルドハイブリッドを搭載したが、運転の楽しさに重点を置いたスポーティな性格を考えると、クリーンディーゼルターボの親和性が高い。かつてアクセラにトヨタ製ストロングハイブリッドを搭載したが、売れ行きが伸び悩み、クリーンディーゼルターボに特化した経緯もある。

マツダの回答は「クリーンディーゼル車の販売は全面的に撤退するわけではない」

北米市場ではCX-5クリーンディーゼルの販売が振るわず、現地から撤退することになった

もともとクリーンディーゼルが人気だった欧州でも、2020年10月いっぱいでマツダ6クリーンディーゼルの販売を終了することが決まった

2020年11月9日に発表されたマツダ中期経営計画見直しを見るとしっかりSKACTIV-Dの制御Updateという内容が見える

2020年11月9日に発表されたマツダ中期経営計画見直し。クリーンディーゼル車のラインアップは残しつつ、新しいSKYACTIV-Xエンジンの開発を進めていく見通し

 ディーゼルエンジンは、もともと欧州市場で人気が高く、マツダもクリーンディーゼルターボを代表技術に位置付けたが、最近は欧州で大気汚染が問題視されるようになった。排出ガス規制が厳しくなったこともあり、欧州ではディーゼル車が人気を下げている。

 その結果、マツダは欧州でマツダ6のディーゼルの販売を終えると決めた。マツダ3のエンジンも、欧州では2LのガソリンとスカイアクティブXのみだ。ディーゼルの後継がスカイアクティブXという見方もできるが、メカニズムが複雑だから価格も大幅に高い。

 北米市場においても、2019年7月にCX-5のクリーンディーゼル車を投入していたが販売が振るわず、1年あまりで撤退することになった。

 今後のクリーンディーゼルターボについてマツダに尋ねると、以下の返答であった。

 「マツダ車が搭載するエンジンは、各地域のニーズに合わせて決めている。新しいスカイアクティブXを導入する一方で、従来からのディーゼルやガソリンエンジンの開発も進めている。ディーゼルの供給を抑えるようになった地域もあるが、全面的に撤退するわけではない」。

クリーンディーゼルの優遇税制がなくなる!?

マツダ2のXD系グレードは1.5Lのクリーンディーゼルターボを搭載。WTLCモード燃費は21.6~25.2km/L(2WD)

 それでも欧州でディーゼル需要が下がると、販売できる地域は大幅に限られてしまう。日本国内の状況も変化してきた。クリーンディーゼルターボの人気は今でも高く、メルセデスベンツやBMWのSUVを含めて売れ行きも堅調だが、クリーンエネルギー自動車としての税金の取り扱いは2021年度から変化する。

 まず購入時に納める環境性能割だが、従来のクリーンディーゼルターボは、プラグインハイブリッド/電気自動車/燃料電池車と同じく、燃費数値に係わらず非課税だ。それが2021年度以降は、ハイブリッドを含むガソリン車と同様、2030年度燃費基準の達成度合いに応じて課税の対象に入る。

 ただし、販売面の痛手が大きいことも予想されるため、激変緩和措置として、2022年3月までは2030年度燃費基準の達成度合いが低い車種でも非課税とする。つまり現状を維持する。自動車重量税は、従来は燃費数値に係わらず免税とされたが、2021年度以降は2030年度燃費基準の達成度合いによって判断される。

 ただしこれも激変緩和措置として、2021年度は全車が免税だ。このように直近の税額は、従来と同様、クリーンエネルギー自動車としての安さが保たれる。

 経済産業省による補助金は、2020年度の今でも、クリーンディーゼルターボの一部は交付対象に入る(CX-8の場合で2万5000円から3万4000円)。2021年度以降の扱いは不明だ。

 このように2021年度以降は、クリーンディーゼルターボの税金が車種によって高まるが、見方を変えると、今まで過度に手厚く保護されていたとも受け取られる。ハイブリッドは既にガソリンエンジン車と同じ扱いだが、クリーンディーゼルターボは、燃費数値に関係なく非課税や免税になっていたからだ。

 プラグインハイブリッドや電気自動車は、普及途上の段階にあって価格も高いから、税金を抑えたり、補助金を交付することも理解できなくはない(もちろん反対意見も根強い)。

 しかしクリーンディーゼルターボは価格が割安で、ベーシックなガソリン車との差額は、マツダ車の場合で30万円前後だ。ハイブリッドの価格上昇は35万~50万円に達するから、クリーンディーゼルターボのほうが割高感は少ない。

 公平性の観点から見ても、クリーンディーゼルターボの税金を安く抑えたり、補助金を交付する必要はない。ガソリンエンジンと同じ扱いにすべきだ。

 具体的に見ると、例えばマツダ3の場合、1.8Lクリーンディーゼルターボを搭載するXD・Lパッケージの価格は297万3055円だ。ノーマルタイプの2Lエンジンを搭載する20S・Lパッケージは269万8055円だから27万5000円高い。

 ただし前述の通り、2020年度(2021年3月まで)の購入では、クリーンディーゼルターボのXD・Lパッケージは購入時に納める環境性能割と自動車重量税が非課税だ。そうなると課税対象に含まれる20S・Lパッケージに比べて、購入時の税額が8万1000円安い。27万5000円の価格差は、実質的に19万4000円へ縮まる。

捨てがたいディーゼルエンジンの魅力

マツダ3ファストバック クリーンディーゼル車の最高出力は130ps/27.5kgm。WLTCモード燃費は19.8km/L(2WD/6AT)

 しかもディーゼルは、ガソリンエンジンに比べて燃料代も安い。マツダ3ファストバック(2WD/6速AT)の場合、クリーンディーゼルターボのWLTCモード燃費は19.8km/L、2Lガソリンは15.6km/Lだ。

 そこで実用燃費がWLTCモード燃費と等しく、軽油価格が120円/L、レギュラーガソリンが140円/Lで計算すると、1km当たりの走行コストはクリーンディーゼルターボが6.1円、2Lガソリンは9円だ。

 クリーンディーゼルターボでは1km当たり2.9円が節約され、19万4000円の実質差額を6万~7万km走れば取り戻せる。この距離を走り終えれば、距離が伸びるほど1km当たり2.9円トクをするわけだ。

 しかもクリーンディーゼルターボは動力性能に余裕がある。最高出力は130馬力(4000回転)、最大トルクは27.5kgm(1600~2600回転)だ。2Lガソリンは、最高出力は156馬力(6000回転)と高いが、最大トルクは20.3kgm(4000回転)に留まる。通常の走行で多用する実用回転域の駆動力は、クリーンディーゼルターボが力強い。

 この動力性能の違いを考えると、1年間の走行距離が5000km(実質差額を6万kmで取り戻せるとしても12年を要する)のユーザーにとっても、クリーンディーゼルターボは選ぶ価値のあるエンジンになるだろう。

 最近の話題で気になるのは、マツダのクリーンディーゼルターボに煤(すす)が溜まりやすいという話だ。低速域で加減速する走り方を繰り返すと、燃焼時に発生する煤が増えて、燃料噴射装置の噴出部分に溜まる。正常な燃料噴射が行われず、煤が一層増えて、排気バルブの作動にも悪影響を与えるものだ。

 この時には、警告灯が点灯したり、グローランプが点滅するので、販売店に預ける。排気系統のパーツなどが必要に応じて無償で交換され、粒子状物質を除去するディーゼルパティキュレートフィルターも清掃される。

 この点について販売店に尋ねると以下の返答だった。

 「長時間にわたる低速走行、アイドリングを頻繁に行うと煤が溜まりやすくなるが、症状は使い方によってさまざまだ。定期的にエンジンクリーナー(添加剤)を使って除去する方法もある」。

マツダのクリーンディーゼルは生き残れるのか?

 頻繁に渋滞に見舞われるユーザーは、ガソリンエンジンのほうが安心できそうだが、クリーンディーゼルターボも価値の高いエンジンだ。マツダは環境性能の優れた新しいエンジンとして、スカイアクティブXも用意するが、価格はX・Lパッケージが338万463円に達する。

 NAのガソリンエンジン車に比べると約68万円高く、クリーンディーゼルターボと比較しても約41万円上まわる。そうなるとマツダ車のなかで、最も買い得なエンジンはクリーンディーゼルターボだ。

 少なくとも日本のユーザーにとって、税額が多少高まっても、マツダのクリーンディーゼルターボは魅力的なエンジンであり続ける。エクリプスクロスがPHEVを加える代わりにクリーンディーゼルターボを廃止したこともあり、将来的な不安は濃厚だが、技術の完全否定はユーザーと世の中の双方にとってマイナスだ。

 ディーゼルの特性に前述のようなメリットがある以上、そしてモーター駆動を全車が採用する時代になってもエンジンの併用を続けるからには、欠点を克服して進化を続けるべきだ。

【画像ギャラリー】もう買えなくなる? 今日本で販売されているクリーンディーゼル車

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