現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > すべての“独創性”は快適な移動のために──新型シトロエンË-C4 ELECTRIC試乗記

ここから本文です

すべての“独創性”は快適な移動のために──新型シトロエンË-C4 ELECTRIC試乗記

掲載 更新 2
すべての“独創性”は快適な移動のために──新型シトロエンË-C4 ELECTRIC試乗記

フルモデルチェンジしたシトロエンのコンパクト・ハッチバック「C4」に設定された、歴代初のEV(電気自動車)モデル「Ë-C4 ELECTRIC」に世良耕太が試乗した。シトロエンが手がけたEVはやっぱり独創的だった!

見るからに独創的

新型ヒョンデIONIQ 5日本上陸! 479万円からの韓流最新EVとは?

Cセグメントに属するクルマはヨーロッパではメインストリームだ。フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ」はこのクラスのベンチマークとして君臨しているし、アウディは「A3」、BMWは「1シリーズ」、メルセデス・ベンツは「Aクラス」をマーケットに送り出している。

強豪がひしめいていることは、前出のモデル名を見ただけでおわかりいただけるだろう。仏・伊・米共同体のステランティスに属するプジョーのゴルフ対抗馬は「308」で、真っ向から勝負を挑んでいる格好である。

一方、からめてから攻める役割を担うのが、同じステランティスに属するシトロエンのC4だ。「コンフォートを実現すべくあらゆるイノベーティブな技術を用い、独創性を原動力として、人々の移動の自由とその移動をより快適にすることを目指してまいりました」と、シトロエンは新型C4を説明する。

独創的であるのは、ひと目でわかる。顔つきからしてフツーではない。「これからのシトロエンを示唆する新世代フェイス」の触れ込みで、C4のひとつ下のセグメント(Bセグメント)に属する「C3」のフェイスリフトにともなって2021年に登場した“新しい顔”が張り付いている。元ネタは2016年のパリモーターショーで発表された「CXPERIENCE(シー・エクスペリエンス)」だ。

シトロエンのブランドロゴであるダブルシェブロン(二段重ねの山型)の上の山から左右に伸びるクロームラインは、外側に向かって飛行機の翼のように跳ね上がり、LEDのデイタイムランニングライトと一体化。一方、下の山から伸びるラインはサイド部で下降し、3眼のランプユニットにつながっている。実に独創的な処理であるが、どこか愛らしい。

独創的なのは顔だけではない。SUVのような背高シルエットなのに、クーペのようなルーフラインを備えているのも、競合するCセグメント各車にはない特徴だ。さらに、電気自動車(EV)を内燃機関搭載モデルと同列に扱うのも独創的であり、これも、ほかのメーカーにはない特徴だ。使い方やライフスタイルに合わせてガソリンエンジンやディーゼルエンジンを選ぶように、EVを選んでほしいという思いの表れである。

見事なパッケージ

新型C4はガソリンの1.2リッター3気筒ターボ(最高出力130ps/最大トルク230Nm)とディーゼルの1.5リッター4気筒ターボ(最高出力130ps/最大トルク300Nm)、それにË-C4 ELECTRICを名乗るEV(最高出力136ps/最大トルク260Nm)の3種類のパワーソースを、サラダのドレッシングを選ぶような感覚で選べる。EVは特別ではなく、あくまでバリエーションのひとつというわけだ。なお、Ë-C4 ELECTRICは日本におけるシトロエン初のフルEVである。

内燃機関モデルとEVを同一モデルで共存させるために、プジョー/シトロエン/DSの各ブランドを展開するPSAグループ(現在はステランティス傘下)はプラットフォームを一括企画した。CMP(Common Modular Platform)と呼ぶプラットフォームで、国内導入モデルでは、2019年の「DS 3クロスバック」で初めて採用。2020年にはそのEV版である「DS 3クロスバックE-TENSE」や、プジョー「208」とEV版の「e-208」に採用している。

CMPのEV版はeCMPと呼び、構造的には、トーションビーム式のリアサスペンションにパナールロッド(横力を受け止めるためにつっかえ棒のように機能するリンク)を追加しているのが通常版との相違点。約350kgに達するバッテリーの重量増による負荷の増大に対応するためだ。

ユーザーに寄り添っている意味でeCMPが優秀なのは、総体積が約220リッターもあるバッテリーパックを搭載しても、居住性やラゲッジスペースを犠牲にしていない点だ。

バッテリーを搭載したために床が高くなって足が窮屈になったり、荷室が狭くなったりということが、eCMPに限ってはない。この点、特筆しておきたい(窮屈な思いを強いられるEVが世の中にはあるということである)。

内燃機関搭載モデルのプラットフォームをベースにEV化したのではこうはいかず、最初から内燃機関とEVの共存を考えて設計したために、ユーザー思いの見事なパッケージを実現することができたのだ。

驚くほど静か

ガソリンやディーゼルといった内燃機関搭載モデルの車両重量が1320~1380kgなのに対し、Ë-C4 ELECTRICの車両重量は1630kgで、250~310kg重い。1名乗車とフル乗車くらいの重量の違いがある……という“フリ”をしているということは賢明な読者諸賢ならおわかりのとおり、動力性能面にまったく不足はない。

首がのけぞるほどの強烈な加速は期待できないが、キビキビと思いどおりに走らせるのに十分な力を発揮してくれる。アクセルペダルの踏み込みに対する反応が俊敏、かつリニアに力を出してくれるのはモーターの強みで、Ë-C4 ELECTRICはその強みを存分に生かしている。

印象的なのは、静けさだ。古いビルのエレベーターや電車の床から“ウイーン”というモーターやインバーターの音がするのを耳にした経験は誰にでもあると思う。Ë-C4 ELECTRICもモーターで走るEVなので、類似の音はしているはず。

しかし、走行中ほとんど耳に届かない。静寂の極みだ。「ここは音のない宇宙空間なのか?」と、錯覚させるほどのインパクトがある。この静粛性の高さも、独創性のひとつと言っていいだろう。

作り手の愛情が伝わってくる1台

しなやかな乗り味も独創的な技術で成り立っている。シトロエンは「マジックカーペットライド」と、表現しているが、無音にも感じる静けさと合わせてË-C4 ELECTRICの走りを独創的に仕立てている。

シトロエン・ブランドでは、2019年に国内に導入された「C5エアクロスSUV」に先例があるが、新型C4シリーズは全車、プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)と呼ぶサスペンションを採用している。電子制御を駆使しして“魔法の絨毯”のような乗り心地を実現するのではなく、純粋にメカニカルな機構だけで成立させているのが特徴。技術の使い方が実に独創的だ。

シトロエンは1955年の「DS」で「ハイドロニューマチック」という独創的なシステムを実用化した。ハイドロニューマチックは、ダンパー、ステアリング、ブレーキで使うオイルをひとつのオイルポンプで集中制御するシステムで、サスペンションは一般的なダンパーとスプリングの代わりに、ガス室に出し入れするオイルの収支によって機能させる仕組みである。

シトロエンは魔法の絨毯のような乗り心地を実現するハイドロニューマチックを現代に復活させたいと考えたが、かつてとおなじシステムを採用したのでは、現代の技術をもってしても高価になってしまう。そこで、得られるメリットはそのままに機械的な部品だけで構成したのがPHCだ。

従来の一般的なダンパーはバンプ側(縮み側)でフルストロークしたとき、最後はゴムやウレタン製のバンプラバーが入力を受け止めた。バンプラバーはある程度の衝撃を受け止めるものの、ダンパーがストロークしているときほどソフトではなく、硬さを乗員に伝えてしまうことがある。

PHCはバンプラバーの役割を果たすセカンダリーピストンをダンパー本体に組み込んでいるのが特徴だ。サスペンションが大きくストロークする状況ではセカンダリーピストンを収めたシリンダーが衝撃を効果的に吸収し、底づき感のないふんわりした乗り味を提供する。1本のダンパーの中に、役割の異なるもう1本のダンパーを収めたようなもので、まさに独創的。実際に効果を体感してみると、低反発クッションを初めて体感したときのような、奇妙な感覚が入り混じった快感が体を包む。「え、なにこれ?」と。

シトロエンË-C4 ELECTRICは見た目のインパクトが強いだけのクルマではなく、独創的な技術がふんだんに投入されているのが特徴だ。しかも、技術をひけらかしたいわけではなく、背景には、人の移動を快適にしたい思いがある。

付き合うほどに、そんな作り手の愛情が伝わってくる1台だ。

文・世良耕太 写真・小塚大樹

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

HRC渡辺社長、フェルスタッペンの4連覇を祝福「ホンダ/HRCとしてサポートし続けてこられたことを誇りに思う」
HRC渡辺社長、フェルスタッペンの4連覇を祝福「ホンダ/HRCとしてサポートし続けてこられたことを誇りに思う」
motorsport.com 日本版
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
くるまのニュース
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
VAGUE
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
WEB CARTOP
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
motorsport.com 日本版
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
乗りものニュース
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
乗りものニュース
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
くるまのニュース
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
Webモーターマガジン
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
motorsport.com 日本版
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
くるまのニュース
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
motorsport.com 日本版
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
くるまのニュース
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
VAGUE

みんなのコメント

2件
  • このC4とC3エアクロスのどちらがいいか?ガソリン同士だと意外なことにC4の方が安い。シートはC3エアクロスの方がふんわりして色合いもいい感じ。クラシカルでフランスの雰囲気がある。でも、パッと見はC4が立派に見える。C4はたぶん売れるがC3エアクロスの方はレアになるかな?
  • 顔とエンブレムだけはシトロエンだが、エクステリアデザインは全体も各所も、明らかに日本車や韓国車のパクリ感満載。

    それでも絶賛なんでしょうね。
    なぜならば、フランス車だし、GQだから。。。(笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

425.0429.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8398.0万円

中古車を検索
C4の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

425.0429.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8398.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村