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アメリカIMSAの現場から感じるWEC/ル・マン24時間2020年レギュレーションへの懸念

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アメリカIMSAの現場から感じるWEC/ル・マン24時間2020年レギュレーションへの懸念

 IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ(WSCC)の2018年シーズン第6戦サーレンズ6時間オブ・ザ・グレンがニュー・ヨーク州のワトキンス・グレン・インターナショナルで開催された。

 同シリーズはアメリカのスポーツカーレース最高峰。主催はフロリダ州デイトナビーチに本部を置くIMSA7(インターナショナル・モーター・スポーツ・アソシエイション)だ。

ACO、2020年WECの『新トップカテゴリー』の概要を発表。“ハイパーカー”とコスト削減を狙う

 ウェザーテックというのは、車のトランクやフロアに敷くラバー製トレイ。汚れた靴や濡れた靴を履いたたま乗っても車内のカーペットが汚れず、トランクやSUVの荷室も完全にカバーするので泥などでクルマが汚れずに済む便利なグッズで、多くの自動車メーカーのかなりのモデルに対して専用設計した製品を用意している。

 WSCCのトップカテゴリーはプロトタイプ(P)クラス。デイトナプロト・インターナショナル(DPi)と、FIA規定のLMP2マシンがここに含まれる。そして、WEC世界耐久選手権やル・マン24時間耐久レース同様にGTマシンも混走するレースを行っている。

 ワトキンス・グレン・インターナショナルにはP、GTル・マン(GTLM)、GTデイトナ(GTD)の3クラス合計42台が出場した。今回のレースで優勝したのはプライベーターの走らせるオレカLMP2マシンで、DPi勢のトップはアキュラの3位だった。

■バラエティに富むIMSAのトップカテゴリー
 参戦経費を抑えればバラエティに富むマシンが数多くエントリーし、ファンが見て楽しめるエキサイティングなレースを実現可能。1980~90年代にGTPというカテゴリーで大成功を納めた彼らは、自分たちの考え方に自信を持っており、2017年にDPiをスタートさせた。

 キャデラック、ニッサン、マツダの3メーカーがコンセプトに賛同してすぐさま参戦を始め、2018年はそこにアキュラ(ホンダ)が加わった。

 DPiは市販されているLMP2マシンをベースにしている。自動車メーカーが魅力を感じるよう、彼らにボディのモディファイを許した。

 キャデラックのDPiマシンは彼らのハイパフォーマンスラインであるVシリーズの特徴をよく表したものとなっており、アキュラのマシンもNSXやアキュラブランドで展開する市販車のイメージを上手に取り入れている。

 シャシーは現在の出場4メーカーそれぞれが異なるブランドを選んだ。キャデラックはイタリアのダラーラ、ニッサンはフランスのリジェ(オンローク)、マツダはアメリカのライリー、アキュラはフランスのオレカで、各コンストラクターの協力もレースを戦う上で重要なポイントとなっている。

 IMSAは各自動車メーカーが望むタイプのエンジンの搭載も許している。キャデラックはいかにもアメリカンな自然吸気の大排気量V8(6.3リッターでスタートし、今年5.5リッターに変更)を選び、マツダはコンパクトな2リッター直列4気筒ターボをチョイス。ニッサンはGT-Rの3.8リッターV6ツインターボを選択し、アキュラはNSXと同じ3.5リッターV6ツインターボ(ハイブリッドではない)をセレクト。

 エンジンが違えばエキゾーストサウンドも各社独特のものになる。DPiはバラエティ豊富なマシンが競い合う点も大きなセールスポイントとなっている。

■競争の存在しないレースほどつまらないものはない
 今年のル・マン24時間、トップカテゴリーのLMP1クラスに出場したはトヨタのハイブリッド2台と、プライベーターが走らせるプロトタイプが8台だけだった。

 優勝と2位の差は2ラップ。2位と3位の差は10ラップもあった。それに対してIMSAシリーズの今年の開幕戦デイトナ24時間では、トップ3が同一周回。1、2位はキャデラックで、3位はプライベイターの走らせたオレカのLMP2マシンだった。

 どちらのレースが見て楽しめるものだったかは明らかだろう。レースに求めるのが先端技術のみという人たちは、ル・マンの方がおもしろいと感ずるのだろうが、競争の存在しないレースほどつまらないものはない。

 WEC/ル・マン24時間を運営するACOフランス西部自動車クラブとFIAは今年のル・マン開催期間中に2020年からのマシン・レギュレーションの外郭を発表した。中身はプロトタイプ、外観は市販車というものだが、果たして何メーカーが出場するのだろうか?

 すでに4メーカーが競い合っているDPiをル・マンのトップカテゴリーとして採用するのでは駄目なのだろうか?

 アメリカでは、そうなることに対して淡い期待が抱かれていた。ファン・パブロ・モントーヤのル・マン初出場もそうした事情に備えてのものだった。しかし、ル・マンはアメリカの期待に背を向けた。

 なぜか? それは彼らが今も“世界の自動車メーカーなら参加するための費用には糸目をつけない”と信じて疑わないからだ。それだけの価値がレース、特に“自分たちのル・マンというレースにはある”と信じている。

■ファンを惹きつけるレースでなければ未来はない
 彼らは自分たちの直面している危機を正しく理解できていないということだ。F1と大きく変わらない。参戦費高騰にかける歯止めが十分ではない。技術競争はレースの大きな魅力のひとつだが、そればかりを重視すれば参戦メーカーは増えない。参戦経費を抑制しつつ、ファンが見てエキサイトできるレースを実現すべき時代になっている。

 しかし、ル・マンもF1も自分たちの理想を掲げ、ファンがそれを盲目的に受け入れてくれると考えている。そういう時代はとっくに終わっているというのに、だ。

 ファンにサーキットでのレース観戦を楽しんでもらうためには、彼らの求めているエンターテインメントを提供しないとならない。そのために知恵を絞り、アイデアを出し合ってファンを惹きつけるようにしなければ、レースの世界に未来はない。

 DPiを丸々そのまま受け入れろとは言わない。アメリカがすべて正しいというわけでもない。もう少し先端技術が入り込むスペースを与えることも、魅力が増えるのならトライすべきだろう。本来2番目のカテゴリーであるLMP2とは一線を画すのも正しい考え方かもしれない。

 結局は、複数の、それも2メーカーとかではなく3社や4社と、多くの自動車メーカーが一斉に参加してくれるようでないと、ル・マンが栄光と人気を取り戻すことはできないだろう。

 サッカー・ワールドカップの成功を目の当たりにしている今だけに、現状打開の必要性を痛切に感ずる。世界的にモータースポーツは考え方の根本を変えるべき大きな転換期に直面している。そこを理解し、世界中のファンがエンジョイできる魅力あるカテゴリーを創出して欲しいものだ。

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