■優雅なオープンモデルを待っていた
2017年に登場した「LC」。次世代レクサス第一弾であると共に、「LS」と並んでフラッグシップを担うモデルです。
【画像】ラグジュアリーなオープンモデル! 「LC500コンバーチブル」を画像で見る(56枚)
レクサスの「Allway on」の精神で毎年進化・熟成がおこなわれてきましたが、2020年6月にはLC初の大幅改良を実施しました。
注目はコンバーチブルの追加です。LCが属する高級クーペ市場はオープンが必須で、構想段階から検討はされていたといいますが、さまざまな事情により3年目の追加となりました。筆者的(山本シンヤ)にはもう少しスピード感が欲しいと思いながらも、追加に関してはウェルカムです。
では、一体どのようなモデルに仕上がっているのでしょうか。
今回一般道、高速に加えてクローズドコース(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)でチェックをしてきました。
LCコンバーチブルのエクステリアは、塊感の強いクーペに対して、ルーフがなくなったことで伸びやかなフォルムに仕上がっています。
2+2のレイアウトながら、オープン時は2シーターのようにタイトに見えるキャビン、クローズド時はファストバックのように見えるシルエットなど二面性を持ったデザインです。
クーペよりスタイリッシュなのはもちろんですが、いい意味で“緊張が解けた”印象を受けました。逆に注目度は断然上がっています。
インテリアはコンバーチブル化に合わせてシート表皮や空調(レクサスクライメイトコンシェルジュ)、サウンドシステムを変更。
ただ、メーター周りは最新のトレンドからすると少々時代遅れな感があるのも事実です。ほかのレクサスもそうなのですが、ここが変わると印象はガラッと変わると思います。
オープン時はベルトラインやリアの造形の工夫による空力性能やウィンドディフレクターの採用などにより不快な風の流れも抑制されていますが、それもそのはずで、オープンで270km/hまで実験をおこなっているそうです。ちなみにクローズド時は下手なクーペ顔負けの静粛性を実現していますが、これは4層構造の幌の採用が大きいでしょう。
ソフトトップの開閉は50km/h以下なら走行中でも操作可能です。開閉時のスピードはかなり速いレベルですが、開閉動作にあえて0.2秒の“タメ”を持たせています。
これは書道の「トン・スー・トン(=三折法)」をヒントにした制御で、スマートかつ人間味のある自然な動きはまさに日本人ならではの発想です。
リアシートはさすがにクーペよりも狭く、大人が長時間座るのは厳しそうですが、ちょっとそこまでという程度であれば十分でしょう。
「高級クーペにはリアシートはいらない」という意見もありますが、2シーターか2+2かは購入条件(人が乗れるではなく荷物置きにもなる)のなかでは重要なポイントです。
ラゲッジスペースはクーペ(ハイブリッド)並みの容量が確保されており、日本人が気になるゴルフバッグは1個搭載可能です。
パワートレインは5リッターV型8気筒エンジン「2UR-GSE」+10速ATの組み合わせのみで、クーペに設定されるハイブリッドの設定はありません。
チーフエンジニアの武藤氏は「V8のみの設定はNAサウンドをダイレクトに楽しんでもらいたいからです。ソフトトップはエンジンの魅力を引き立たせるための機能備品といってもいいです」と自信を見せます。
ちなみにATの変速マップはクーペよりもエンジンを回すコンバーチブル専用の制御に変更されています。
もちろんLCの世界観のなかで、高回転を積極的に維持するほどではありませんが、エンジン音は今まで以上にクリアに耳に入ってきたため、意味もなくひとつ下のギアで走って一人ニヤニヤしてしまうかもしれません。
ただ、個人的にはハイブリッドで今まで聞けなかった外の音を聞きながらもオープンドライブも悪くはないと思いますが、バッテリーの搭載位置にソフトトップ収納のスぺースを割り当てているので、物理的にコンバーチブル+ハイブリッドの両立ができないようです。
■フィーリングだけじゃない走行性能の進化
フットワーク系はオープン化に伴い床下ブレースやアルミダイキャスト製のリアサスペンションタワーブレースなどによる補強に加えて減衰効果を持つパフォーマンスダンパーをプラスした車体に専用セットアップのサスペンションをプラス。重量増はクーペに対して+100kgから120kg。
加えてアルミ化されたフロントロアアーム、コイルスプリング、ホイールなどの軽量化がおこなわれています。
一般道はもちろんサーキットでも剛性の部分でネガな部分は感じられなかったうえに、むしろクーペでは剛性にこだわりすぎて逃げがない突っ張った車体だったのに対し、コンバーチブルは適度なしなやかさを持つ車体になっているように感じました。
フットワークは初期モデル(クーペ)とは激変レベルです。具体的にいうと、穏やかなのに一体感が高い乗り味に仕上がっています。
従来モデル(クーペ)は見た目のエレガントさに対して、コンバーチブルの走りは意外と武闘派で、「ロールを抑える」、「重量を感じさせない俊敏性」のハンドリングに対して高級クーペに必要な「直進安定性」や「快適性」は今一歩でしたが、コンバーチブルは「クルマを無理に抑え込まない」、「綺麗に動かす」といった考え方です。
結果として姿勢変化は大きくなっていますが、クルマの動きに連続性が増したことやしなやかな足さばき、より精緻でシッカリ感の増したステア系により、過度な部分がなくなり全てが自然に仕上がっています。
レクサスの走りは「すっきりと奥深い」をテーマにしていますが、コンバーチブルはそのテーマに見合った走りを手に入れた感じです。
サスペンション周りの変更はクーペにも水平展開されています。コンバーチブルはキャラクターに合わせてクルマの動きはゆったり系で安定性重視のセットアップですが、クーペはコンバーチブルの無駄な動きを少し抑えているうえにFRの旨みがプラスされています。
従来モデルは基本はアンダーステアでオーバーステアに持ち込むのは至難の業でしたが、新型は車両重量が重いので無理は禁物ですが、フロントもリアも安定感は増しているにも関わらず、ドライバーの操作次第で弱アンダーから弱オーバーまで可能。つまり、懐が深い走りになったということです。
LCが採用するGA-Lプラットフォームは、ほかのTNGAプラットフォームと比べると従来プラットフォームからの伸び代が少々気になっていましたが、コンバーチブルに乗ってちょっと安心しました。
そう、GA-Lは失敗作ではなく、さまざまな経験を経て「使いこなせるようになった」のです。
コンバーチブルの追加でLCの世界観がより明確で解りやすくなったのはもちろん、走りに関してもレクサスの目指す方向性がより明確になった気がしています。
筆者は大幅改良された「IS」や一部改良の「ES」に乗っても同じような印象を持ったので、レクサスは“何か”を掴んだのでしょう。
新世代モデル攻勢のトヨタブランドに対してやや遅れが見えるレクサスブランドですが、着実に前に進んでいます。
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