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大型シトロエンの再来か──新型シトロエンC5エアクロスSUVプラグ・イン・ハイブリッド試乗記

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大型シトロエンの再来か──新型シトロエンC5エアクロスSUVプラグ・イン・ハイブリッド試乗記

シトロエンのSUV「C5エアクロスSUV」に追加された PHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルに小川フミオが試乗した。

“マジックカーペットライド”

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日本におけるシトロエン初のプラグ・イン・ハイブリッドモデル「C5エアクロスSUVプラグ・イン・ハイブリッド」が6月24日に発売された。

ほかに類のないほどソフトな乗り心地と、独特なデザインの内外装などが光るモデルだ。日本やドイツのSUVで飽き足らなくなったひとにも、このフランス製のPHEV、乗ってみることを勧めたい。

全長4500mm、全高1710mmとやや背が高いボディに搭載されるのは、1598cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンだ。そこに電気モーターを組み合わせる。

メーカー値で65km(WLTC)までは駆動用バッテリーを使ってのモーター走行が優先される。ただし、急加速時などにはエンジンも始動。バッテリー残量が規定を下まわると、代わりにエンジンが前輪を駆動する。

力強い、というか、スムーズな走りがなにより印象的だ。軽いアクセルペダルに載せた右足にほんの少し力を入れただけで、いっさいもたつきを感じさせず走り出す。320Nmもの大トルクを瞬間的に発生するモーターの恩恵だ。

同時に驚くのが、乗り心地のよさ。路面の凹凸をきれいに吸収してショックはほとんど感じさせない。「プログレッシブ・ハイドローリッククッション」と、シトロエンが名づけたサスペンション・システム内の二重構造のダンパーの”仕事”とされる。

シトロエンではたとえとして「マジックカーペットライド」(空飛ぶじゅうたんに乗った気分)なる言葉を使っている。じっさいにじゅうたんで空を飛んだことがあるひとはいないだろう。でもその言葉が説得力を持つ。

小さな不整が続く路面やうねりを越えていく状況でも、荒れた路面でも、路面と車体が接地していないような、信じられないほど気持ちのいい乗り心地が味わえる。

かつてのDSやCXを思い出す

咋年4月に日本に導入されたガソリンエンジンのC5エアクロスSUVでも同様の、マジックカーペットライドに衝撃を受けた。今回のハイブリッドでは、さきに触れたとおり、モーターを使った加速感がクルマを超越したような感覚をもたらす。C5エアクロスSUVプラグインハイブリッドは強烈な個性の持ち主だ。

高速道路を巡航していると、ボディがゆっくりと上下動するのが感じられる。これが苦手というひともいるものの、かつての「DS」(1955年)や「CX」(1974年)といった大型シトロエンを思い出させる。

シトロエンのエンジニアが、DSの前後輪に油圧と窒素ガスを組み合わせた独自のシステムでもって、従来の金属サスペンションでは実現できない乗り心地を求めたのは、その時点では存在しなかったC5エアクロスSUVという目標を頭のどこかで思い描いていたのだろうか。そんなことを想像してしまう。

C5エアクロスと同様の乗り味をもったクルマはほかにない。もちろん、ひとそれぞれ好みがあるから、無理に勧めるわけではない。でも、ファッションや腕時計で多様性を好むひとなら、体験してみるといいのではないかと私は思う。

シトロエンの姉妹ブランドといえるプジョーでは、ひと足先に508シリーズに同様のプラグ・イン・ハイブリッドシステムを搭載したグレードを設定、導入した。

これはしゃきっとしたというような足まわりの設定で、ワインディングロードを含めてドライブが好きなひと向け。このシトロエンは、市街地も快適なロングツアラーだ。

独特なのはいいことなのだ!

室内は、スペースがたっぷりある。後席は足もとが広く、頭上の空間的余裕も大きい。試乗したモデルはスライド機能つきグラスルーフが標準なので、後席での爽快感はより大きかった。

デザインのテイストは、好みがわかれるだろう。かつて、ジョルジェット・ジュジャーロ氏(自動車デザイナー)から聞いた話では、イタリアやフランスのデザイナーは、ドイツや英国と違って、自動車の伝統的なプロポーション(ショートノーズにロングテールに大径タイヤなど)にこだわらないのだとか。

なぜなら、と、そのときジュジャーロ氏は言った。「自分たちが自動車を創造しているという自負があるから、決まりごとなんてないんだよ」と。私はシトロエンやプジョーの製品をみると、しょっちゅう、その言葉を思い出す。

C5エアクロスSUVの内外装が独特なのは、やはり、そんな自尊心ゆえなのだろうか。個性的すぎる、なんて言葉で簡単に評価してしまうのは、もったいないような気がしてくる。

オーディオは「BE WITH(ビーウィズ)」という佐賀で2002年に創業した若い会社のスピーカーシステム(フロント)をそなえている。プジョーとシトロエンの純正オプションなのだ。

迫力あるボーカルを聞かせてくれるという印象で、シンガーソングライター好きなひとにはとくにいいと思う。私はこのとき、ルシンダ・ウィリアムズと、ラナ・デル・レイを聴いてみて、気分がよかった。

快適なオーディオは、快適な乗り心地とスムーズなパワーユニットを持つC5エアクロスSUVプラグ・イン・ハイブリッドにとって、とても大事な装備という考えに、私も同感だ。

クルマに居心地の良さを求める人に、このフランス製SUVはぴったりかもしれない。

文・小川フミオ 写真・田村翔

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