McLaren GT × Aston Martin DBS Superleggera × Porsche 911 Carrera4 S
マクラーレンGT × アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ × ポルシェ911カレラ4S
熟成の極みに達した新型マセラティ ギブリに渡辺慎太郎が試乗! 待望の最強V8モデルも登場
GTの主張
GTとしての実力が最も端的に現れるのが、長距離を走った時の性能だろう。そこには速さだけでなく快適性や荷物を積載する実用性、さらには経済性も求められる。今を代表するスーパースポーツGT3台で行った約1000kmのロングツーリング。そこから見えてきた新しい景色をお伝えしよう。
「すべての自動車は創世記から『GT』を目指してきたのである」
非常にシンプルで収まりのいい名前であることは間違いないが、「マクラーレン GT」という名前は私にとっては少々意外だった。数多の老舗スポーツカーメーカーとは異なり、レース活動で培った合理的な最新技術を活かして、ピュアでストイックな“ニュータイプ”のスーパースポーツカーを送り出して来たマクラーレンが新型車のネーミングとして選ぶには、「GT」という二文字はちょっと古めかしく、伝統的にすぎる称号ではないかと感じたからである。
ご存知のようにマクラーレンは自分たちの製品をスポーツシリーズ、スーパーシリーズ、そしてアルティメットシリーズという3本柱にカテゴリー分けしている。だが基本的に同種のパワーユニットとカーボンモノコックを使用している限り、この先のラインナップの拡大にも限界があるだろうとの見方に反発するように、2018年に彼らは25年までに18種のニューモデルを送り出し、年間6000台レベルに生産台数を引き上げるという「Track25」なる中期計画を明らかにした。それに従って発表されたのが「GT」である。まだ正式なシリーズ名は付いていないようだが、マクラーレンの4本目の柱となるのがGTシリーズなのだろう。
そもそもGT(グランドツアラー、あるいはグランツーリスモ)は、長距離を高速で移動できる高性能自動車を意味する。自由に速く遠くまで、そしてできるだけ快適に移動するための道具として生まれたのが自動車であるからには、GTは自動車の核心的価値を象徴する言葉とみなされてきた。草創期からすべての自動車は「GT」を目指してきたのである。
「伝統的なGTの代名詞的ブランドの最新モデル3台を1000kmの旅に連れ出す」
もっとも、19世紀末に自動車が誕生する前から「グランドツアー」という言葉は存在した。これは昔の(18世紀ごろの)英国の上流階級の子弟が見分を広めるための大陸旅行のことで、白洲次郎がベントレーで駆け抜けたヨーロッパ大陸旅行も同様。GTの背景にはそういう伝統が存在しているのである。
さらに言えば、FISA(現FIA)が定めた競技車カテゴリーの主役のひとつがGTだった。モノポストのグランプリカーに対して市販車ベースの2/4座スポーツカーであり、ロードゴーイングカーとレーシングカーの中間に位置するのがGTであり、耐久レースの花形としてルマンなどで活躍した。英国から海峡を越えて自走でルマンに至り、24時間レースを戦って再び帰ったという大昔のベントレー・ボーイズの例が象徴的である。
ミッドシップカーでGTを名乗るクルマはめったにないが、自走でサーキットに駆けつけてそのままに走れるということでは、マクラーレン GTはまさしくその名に相応しい。
今回は伝統的なGTの代名詞的ブランドの最新モデルとともに、その実力を探るべく東京から伊勢まで一気に走ってみた。図らずも他の2台はFRのDBSとRRの911カレラ4Sと三車三様である。
「街中でも足まわりがしなやかに動くマクラーレンGTの乗り心地は模範的だ」
飛び抜けたパフォーマンスだけでなく、快適性や実用性をも追求した新しいカテゴリーの新型モデルがマクラーレン GTというが、基本的な構成は他のモデルと同様である。4.0リッターV8ツインターボは620ps/630Nmを生み出し、マクラーレンがSSG(シームレスシフトギヤボックス)と呼ぶ7速DCTを介して後輪を駆動することも同じ。ただし異星からやって来た生物のような有機的フォルムではなく、シンプルでシャープなスタイリングを持つ。
もうひとつの特徴は意外に車高が高いこと。車高は720Sよりも17mm高い1213mmだが、フロントにはリフターが備わり、さらに20mm持ち上げることもできる。フロント前端は他モデルより高めに設定されているが、さらに実用性を考慮しているのである。また「モノセルII-T」と称するカーボンモノコックを採用することも同様である。サスペンションは720S譲りのプロアクティブ・サスペンションだが、より快適性を重視したという。
「スピードが増すにつれてビシリと安定するのは他のマクラーレンと同じ」
もともとマクラーレンは、乗り心地に優れたスーパースポーツカーである。スーパーシリーズの720Sであっても、ガツンゴツンという剥き出しの突き上げとは無縁で、高性能=スパルタンな乗り心地と考えている人は、街中でも足まわりがしなやかにスムーズに動くことに驚くはずだ。
実際にマクラーレンGTの乗り心地は模範的である。日本の高速道路のように中途半端な速度では若干のピッチングが感じられるが(特にコンフォートモードでは)、スピードが増すにつれてビシリと安定するのは他のマクラーレンと同じ。どう見てもスイートスポットはもう少し高いところにあるようだが、高速道路で他車の流れに合わせても不満はない。同じくステアリングフィールも低速ではいささか心許なく感じられるのがマクラーレン流、これももう少しスピードを出せば格段に正確で安定した手応えになるはずだが、一般道で試すには限りがある。
「ロングツーリングにも十分以上のラゲッジなどGTの資質を発揮」
パフォーマンスについても同じことが言える。普通に走る限りはせいぜい2000rpmぐらいであっという間に7速に入り、それで十分に他車をリードできる。低回転ではビジネスライクに、むしろ退屈に回るV8ツインターボは4000rpmぐらいから豹変し、爆発的に8000rpmを超えるまで瞬時に吹け上がるのもまた他のモデル同様である。0-100km/h加速が3.2秒、最高速326km/hという性能を公道では試すことはできない。ただし、ブレーキは例によってしっかりとした踏力を要するし、左足ブレーキ優先の配置になっていることに注意が必要だ。
リヤのガラスハッチの下にはGTの最大の特徴であるラゲッジスペースが設けられている。エンジンの上だけにフロアはゴルフ場のコースのように凸凹しており、深さはそれほどではないものの容量は420リットル、実際にスーツケースだけでなく、ゴルフバッグやスキーなどの長いものも収められるという(あまり積み上げると後方視界に影響するが)。加えてフロントフード下には他のマクラーレンと同様、大きくはないが深く、キャリーオンサイズのバッグなら形状によっては2個入るほどの容量150リットルのスペースも設けられている。なるほど、これならロングツーリングにも十分以上である。
「クルマ好きの心をくすぐる伝統の名前をもつDBS」
ジェームズ・ボンドが駆るアストンマーティンもGTの代名詞。最近威勢がいいのはそのアストンマーティンも同じ、何しろ15年からの7年間に毎年1台ずつのニューモデルを市場に投入すると公言している。フラッグシップモデルに“DBS”と名付け、さらに“スーパーレッジェーラ”を重ねるのも、長い歴史を持つアストンマーティンなればこそだ。オリジナルのDBSは1960年代に発売された高性能モデルで、一方スーパーレッジェーラとはかつてミラノのカロッツェリア・トゥーリングが専売特許にしていたボディ製作法で「超軽量」を意味する。細い鋼管チューブラーフレームでボディ骨格を組み立て、その上にアルミパネルをリベットで貼り付ける構造であり、アストンマーティンは1950~60年代のDB4~6の時代に採用していた。新型DBSのボンネットにもかつてと同じ字体のロゴマークが貼り付けられている。クルマ好きオヤジにはその名前だけでゾクッとするほどの伝統商品名のダブルネームである。
無論18年春にデビューした現代のDBSが当時の構造を踏襲しているわけではなく、自慢のアルミスペースフレームたるVHプラットフォームの最新バージョンに、カーボンファイバーなど複合材のボディパネルをまとっている。前輪後方の特徴的なサイドストレーキ上部からガバリと開くエンジンフードもカーボン製。その結果、ベースモデルとなったDB11に比べて70kg以上の軽量化を果たしているという。
「パワーアップしたエンジンは、まったく油断ならない野獣のような力を秘めている」
DBSは獰猛な見た目通りに剽悍だ。鍛え抜かれたアスリートのような体幹の強靭さが印象的で、乗り心地はフラットだががっしり引き締まっている。その分、コーナーからの立ち上がりでは、たとえDSCの介入が控えめになるスポーツプラス・モードを選んでも、電子制御デフの助けもあって後輪が路面に食いつくように蹴り出し、前へ前へと押し出してくれる。後輪駆動GTのお手本のようなコントロール性である。
とはいえ、DB11の5.2リッターV12ツインターボを大幅に強化、725psと900Nmにパワーアップしたエンジンは、まったく油断ならない野獣のような力を秘めている。わずか1800rpmから最大値に達するトルクの奔流は激烈で、中間域でもスロットルの踏み方によってはたちまち巨大なリヤタイヤが暴れる。その気で踏めばDBSスーパーレッジェーラは0-100km/hをわずか3.4秒で加速、最高速は340km/hに達する超高性能車であり、最後の最後は腕っぷしでねじ伏せなければならない猛々しさが隠れている。普通に走れば扱いやすいと勘違いするかもしれないが、それはDBSのほんの一面に過ぎない。
「分別のあるスポーツカーとして実用性を維持しつつ速さを身につけた911」
いわゆるスーパースポーツカーとは異なり、ポルシェは356の時代から実用性を重視したスポーツカーを生み出して来た。きちんとしたコンディションのものであれば、356スピードスターでもカレラRS2.7であっても、現代でも十分に実用に足ると断言できる。分別のあるスポーツカーとしての実用性を維持しつつ、パフォーマンスおよび環境適合性を向上させてきたのが近年の911の特徴だが、今やスーパースポーツカーあるいはエキゾチックカーと呼ばれる超高性能車に匹敵する速さを身につけている。新型のカレラ4Sではまたも速くなって0-100km/h加速は3.6秒、これは従来型を0.4秒上回る数値であり、スポーツクロノパッケージを装着すればさらに0.2秒短縮されるという。しかも8段に増えたPDKのおかげで誰でもその性能を発揮できるのが21世紀の911である。
ご存知のように、911カレラS及びカレラのエンジンは15年のマイナーチェンジでツインターボに一新されているが、新型はそれを踏襲しながらターボチャージャーやインタークーラーを刷新したうえにピエゾ・インジェクターの採用などによってさらにパワーアップを果たした。カレラS/4S用は450psと530Nmを発生、これは従来型と比べて30psと30Nm増しの数値である。先代の3.0リッターツインターボはその清々しいレスポンスと、回転上昇につれて自然にパワーが積み増されていく様子が自然吸気ユニットのようだったが、新型エンジンはそれに比べればターボユニットっぽい感覚が若干強い。
「見事なバランスのお手本を示し乗る者を裏切らない」
ターボラグを感じるということではなく、ひとつには全域パワフルであり、またまったくストレスなしに7000rpmを超えて吹け上がるものの、ピークに向けて上り詰める感覚がいささか薄くなっていることが理由だ。とはいえ、それは旧型と比較した場合のフィーリングの違いでしかない。ごく普通に流す場合のレスポンスとスムーズさ、扱いやすさといい、ドライブモードを切り替えてフルスロットルを与えた際の爆発的な速さといい、まさにお手本と言えるだろう。
これまで以上にイージーで快適で速いのが最新型911の姿である。しかもそれらが見事にバランスしており、どこか突出した癖の強さはもはやない。だから物足りない、ヒリヒリした剥き出しの野性味が欲しい、という方もいるだろうが、そういう人には後からスペシャルモデルが用意されるはず、それもまた昔からのポルシェの流儀だ。
「この3台はそれぞれの手法でGTの資質を完璧に満たしている」
どこまでも遠くまで走り続けたいと思わせることがGTの資質だとするならば、この3台はそれぞれの手法でそれを十全に満たしている。問題はあまりに高性能すぎて、本当の力を発揮する舞台を選ぶということぐらいだろうか。
REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
マクラーレン GT
ボディスペック:全長4683 全幅2045 全高1213mm
ホイールベース:2675mm
車両重量:1530kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:456kW(620ps)/7500rpm
最大トルク:630Nm(64.2kgm)/5500-6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前225/35R20 後295/30R21
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:3.2秒
車両本体価格:2645万円
アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ
ボディスペック:全長4712 全幅1968 全高1280mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:1693kg(DRY)
エンジンタイプ:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5204cc
最高出力:533kW(725ps)/6500rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1800-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前265/35ZR21 後305/30ZR21
最高速度:340km/h
0-100km/h加速:3.4秒
車両本体価格:3567万8703円
ポルシェ911カレラ4S
ボディスペック:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1565kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCターボ
総排気量:2981cc
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm(54.0kgm)/2300-5000rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR21
最高速度:306km/h
0-100km/h加速:3.6秒
車両本体価格:1804万8148円
※GENROQ 2020年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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