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コストが安く長寿命! わざと見えづらくするタイプも登場! LED式信号機のメリットとデメリットとは?

掲載 更新 16
コストが安く長寿命! わざと見えづらくするタイプも登場! LED式信号機のメリットとデメリットとは?

 ここ数年で都内などでは一気に設置が進んだように思えるLED信号機。かつて広く使われてきた、日差し除けのあるお馴じみの電球式信号機に比べて、どう違うのでしょうか?

 というのは、視認性がよく、夜も明るくて見えやすいのですが、日差しの強い天気のいい日は見えづらいなあと思うこともしばしばあります。

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 また、筆者の自宅近くにあるLED信号機は、遠くからは見えづらく、近づくとやっと青だとわかります。これはわざと見えづらくしているのか? それとも気のせいなのか?

 本企画では、最新のLED信号機とはどんなものなのか? かつての電球式信号機のメリット、デメリットについて考察していきます。

文/岩尾信哉
写真/コイト電工、信号電材、Adobe Stock

【画像ギャラリー】今やすっかりお馴染みとなったLED信号機 LEDならではの特徴とは?

■普及が進むLED式交通信号機

こちらがお馴染みの電球式信号機。クルマのテールランプと同じように電球と色付きのカバーとなる(Adobe Stock@PUBLICITY)

LED信号機。LED自体が発光するため、光が均一で明るい。伝統式の信号機に比べ消費電力は6分の1で、電球式の場合は約半年から1年程度であるのに対して、LED式では6~8年(Adobe Stock@PUBLICITY)

 ここでは車両用と歩行者用がある信号機のうち、車両用に絞って話を始めよう。

 日本で初めて信号機が設置されたのは、1930(昭和5)年に東京都の日比谷交差点とのこと。翌1931(昭和6)年に同じく東京の銀座4丁目交差点や京橋交差点など34ヵ所に3色灯の自動信号機が設置され、第二次世界大戦後に普及が進んだ。ちなみにLED式交通信号機(以下LED式信号機)に関しては、1994(平成6)年に愛知県と徳島県から設置が始まった。

 現在の日本全国でのLED式信号機について設置状況を見てみると、普及率に関しては、警察庁の2020(令和2)年3月末の発表(集計数は令和元年度)で、車両用灯器は約127万灯、歩行者用灯器は約102万灯、合計で約230万灯となっており、このうちLED式信号灯器が占める割合は、約60.7%(車両用約63.1%、歩行者用約57.8%)」とのこと。

 LED式車両用信号機の設置数でトップとなる東京都の普及率は100%に達していて、率の上では福岡県(99.8%)、長崎県(98.5%)、沖縄県(92.9%)と続いている。

■LED自体が発光するため光度が均一で視認性がよく消費電力は6分の1

LED式は電球式に比べてどんなメリット、デメリットがあるのだろうか?(Adobe Stock@xiaosan)

 LED式信号機の灯器部の特徴をまとめておくと、電球型のようにフィラメントが発光してレンズを介して光を周囲に放射するのに対して、LED自体が発光、発色するために、灯器自体の光度が均一で視認性が良いことが挙げられる。

 レンズで色分けする電球式信号灯器では、西日等が当たると実際には点灯していなくても点灯しているように見える(「疑似点灯」と呼ばれる)など、角度や日射しの加減で見えにくくなる場合があった。

 対して、LED式は前述のように光源のLED自体が発色するうえに、光が照射する方向が絞られている(指向性が高い)ことで見やすさ(視認性が高い)を獲得している。

 加えて、LED式は電球式に比べて消費電力が6分の1程度(電球式70W、LED15W)であるため、省エネ効果が高く電気料金コストが抑えられる利点がある。使用寿命についても、電球式の場合は約半年から1年程度であるのに対して、LED式では6~8年とされているため、メンテナンス面でも有利とされている。

■メリットは見やすさとコスト抑制効果

 最近、信号機に関して動きがあり、警察庁が2017(平成29)年2月に信号灯器の仕様変更を打ち出した。これを機に、LED式灯器の採用などによって小型化が進められることになった。

 具体的には、灯火(レンズ)部分の直系を従来の300mmから250mmに変更することになったため、筐体を含めた灯器部分の小型が実現でき、コスト削減に寄与するとされている。

 実際の灯器部分の価格については、個々の価格は公共物として自治体に納入されているため一括納入などの例から類推するしかないが、従来の電球式信号機の灯器部分の製造コストが、1基につき約10万円超であることに対し、LED式の信号機は同じく約9万円で、2割弱程度のコスト削減が実現されていることが類推できる。

■近づかないと見えない「青信号」の正体は?

筆者自宅近くの交差点にある信号。手前の一時停止のある交差点に入り、先の信号を見ると信号機が見えない(点灯していないように見える)

手前の交差点を過ぎて信号を見てもまだ見えない

信号機の5mくらい手前に来るとようやく青信号というのがわかった。遠くから青信号だとわかると、青信号のうちに通過しようとして速度を上げることを防止しているのだろうか

左右制限と上下制限フードを付けたLED信号機(出典:信号電材)

青信号に制限フードを付けた状態。道路状況に合わせて制限距離の調整が可能で上下制限については灯器の角度を調整することにより、制限距離の調整も可能(出典:信号電材)

 みなさんは、幹線道路から入った側道の信号機の青信号が遠くからは見えず、近づくとようやく青信号と認識したというような経験をしたことはないだろうか。筆者の自宅近くにある信号も30m手前では見えづらく、5m手前あたりでようやく見えるのだ。

 このような信号灯は「視角制限灯器」と呼ばれ、短い距離で連続する交差点などでの誤認防止を狙って、車両が一定距離まで近づかないと青信号の光が遮断され、視認できない仕組みになっている。

 詳細を見ると、灯火部分の周囲に箱形のフードや角度を付けた羽板(ルーバー)を装着することで、左右方向や上下(車両側からは前後)方向に信号灯の光の見え方を制限する機能が与えられている。

 たとえば交差点が隣接している地点では、奥の青信号に気をとられて手前にある赤信号に気づかずに進行してしまい、衝突事故を起こす確率が高いことから、「視角制限灯器」の採用が進んできた。

 踏切と信号機が近い場合でも、交差点の青信号に気を取られたまま一時停止せずに踏切に進入することを防止するために使われている。

 馴じみのある庇(ひさし)付きの信号灯は、積雪地帯の場合は冬期の降雪対策が主な機能だが、個人的には都会で見かける四角い筐体などは、前述のように単に日射しを避けるために装着されているのだろうなどと漠然と捉えていたが、事故防止の機能を備えているというわけだ。

 そこで数ある信号機メーカーのひとつである信号電材株式会社(本社:福岡県大牟田市)に、「視角制限灯器」の機能の詳細について問い合わせてみた。

 「(設計・生産する側としての)視角の『上下制限』は、ドライバーからすると前後方向の視認距離の制限となります。たとえば、車両が信号機から50m以上離れていると視認できないが、50m以内に入ってくると視認できるといったように、灯器の上下方向の視認角度を制限することで、車両が信号機に近づくと視認できなくなるように設定されます」とのことだ。

 さらに上下の視認角度の設定は、装着されるフードとルーバーによるのか、灯火部分や灯器の角度によって調整するのかと訊ねると、「視認角度の設定は、基本的にフード側で決められています。設置する交差点の形状や道路の起伏などに応じて、設置現場で筐体の角度などを調整してもらいます」という。

 それでは従来の電球式とLED式を比較すると、LED式のほうが視認角度を調整しやすいといえるのか? その点については「それぞれで光の特性を捉えて視角制限フードを開発していますので、LED式の方が調整しやすいといった認識はありません。現在電球型は生産していませんが、過去には電球型でも上下制限灯器の実績はあります」とのことで、特にLED式に優位性があるというわけではないようだ。

■LEDの利点を活かした「フラット型」

LEDフラット式信号機。厚さを6cmにまで薄くしたLED式フラット型信号機。灯器のレンズの表面に微細な凹凸を与え、雪が付着しにくい素材を採用。さらに雪が積もらないように設置時に灯器そのものを20度ほど下に傾けて、落雪しやすいように設置する工夫も見られる(出典/コイト電工)

 いっぽう、最近見かけるようになってきた、外観が明らかに薄く設計されていることがわかるLED式のフラット型車両用交通信号灯器(以下、フラット型灯器)について調べてみた。

 自動車用灯火類の大手メーカーとして知られる小糸製作所のグループ傘下にある、信号灯メーカーのコイト電工株式会社(本社:静岡県駿東郡)が手がける、フラット型灯器の特徴を見てみよう。

 形状については先の警察庁が進める信号機の仕様変更を受けて、光源に使用するLEDの小型軽量である特徴を活かして、厚さ6cmの薄型化を実現した。

 灯器を傾斜させた設置角度とグレアレス(眩しさ防止)加工を施した表示面の効果により、日中・西日時でも従来型と同等以上の見え方を確保しながらフードレスを実現、重量も従来型から約75%削減したとされている。

従来型と西日でも見えやすいフラット型信号機の比較(出典:コイト電工)

 同社が手がけるフラット型灯器は、薄型・軽量設計とともに専用光学レンズを採用、フードレス化を実現。信号灯本来の機能に加え、強風・積雪・着雪等による影響を抑えている。

 先に触れたように、従来型は太陽光の影響を軽減して視認性を確保するためにフードなどが装着してきたが、強風時には風を受ける面積が増えることや降雪時にはフードの上に積雪するデメリットがあった。

 なお、コイト電工では従来型の電球式およびLED信号灯器ではフードの装着により対応してきたが、フラット型ではレンズ面に視覚制限するカバーをつけて対応しているとのことだ。

薄型設計で軽く、西日でも見えやすいひさしのないフラット式LED信号機(出典:コイト電工)

■相性が悪い? ドライブレコーダーとLED式信号灯

 最後に、最近、ドライブレコーダーに記録されたあおり運転のYouTube動画を見たのだが「あれ?」と思うことがあった。

 動画に映っている信号機が点滅を繰り返したり、消灯もしくは点灯(点滅)して見えるのだ。いったいこれはなんだろうか? 私だけが思った、ふとした疑問なのか?

 調べて見ると、この現象はドライブレコーダーのカメラから得られる画像処理の影響から生まれるものらしい。LED式信号灯は目に見えないサイクルで点滅を繰り返しており、フレームレート(1秒間に撮像できる画像の枚数)の設定によって、カメラの撮像の周波数と同調してしまうと信号灯が点滅したり消えてしまうなどといった現象が発生するそうだ。

【画像ギャラリー】今やすっかりお馴染みとなったLED信号機 LEDならではの特徴とは?

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みんなのコメント

16件
  • LEDは結構省電力なんですね。雪国では冬になると雪がついて警察がブラシで雪落とししてるけど、雪が付きづらいようなればいいね。
  • フラット型信号機も慣れれば違和感ないよね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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