未開の大地へも挑めそうな悪路性能
2代目へ進化したフォルクスワーゲン・アマロック。欧州市場に提供されるのはダブルキャブのみで、トルクコンバーター式の10速ATが標準装備される。アジアなど一部の市場では、MTでシングルキャブのユーティリティ仕様も提供されるとのこと。
【画像】2代目へ一新 フォルクスワーゲン・アマロック 競合ピックアップと比較 初代も 全109枚
四輪駆動が標準で、クラッチベースのトルク分配機能を採用。通常は後輪駆動での走行となるが、必要に応じてフロントアクスルへも駆動力が伝えられる。
リアにはロッキングデフが組まれるほか、常に四輪駆動で走ることも可能。ローレンジ・トランスファーも載っている。悪路の走破性は、相当に高い。
今回の試乗場所は南アフリカで、過酷ではない程度の荒れ地へ数km挑んでみた。サスペンションのストロークは長く、設置性を保ったまま難なく走破してみせた。急な下り坂ではブレーキを介入させつつ、ヒルディセント・コントロールが効果的に機能した。
経験の長いフォードだけに、路面とシャシー底面との位置関係は良好。前後のオーバーハングは短く、アプローチ・アングルやデパーチャー・アングルは大きい。
渡河水深は、先代の500mmから800mmへ増えている。オプションのシュノーケルを装備すれば、さらに深い場所にも対応できる。アンダーボディのプロテクションも取り付け可能。ジープ・ラングラーには敵わないとはいえ、未開の大地へも挑めそうだ。
洗練され馴染みやすいピックアップトラック
舗装路での快適性や能力にも優れている。特に試乗車はアベンチュラ・グレードで、オンロード前提の仕立てになっていた。
フォルクスワーゲンらしく、現実的な予算で購入できる、最も洗練され馴染みやすいピックアップトラックが目指されている。自社で細部のデザインや素材の選定をしたという運転席に座れば、その努力が伝わってくる。ダッシュボードの造形も違う。
車内は広々とした印象で、内装パネルなどの質感にも優れる。運転席からの視界は良好で、メーター式モニターも確認しやすい。
インフォテインメント・システムには、実際に押せるハードボタンが沢山用意されている。ダッシュボードの表皮はレザー調の素材で覆われ、エアコンの送風口はメタリック調。トラックという言葉から想像する以上に、雰囲気は洒落ている。
シフトセレクターや電子ハンドブレーキのレバー、駆動系の選択スイッチなどが並ぶセンターコンソールは、シンプルなデザインで実用性重視。アマロックが使える道具だということを匂わせる。
一方で、初代のアウトドア・アイテム的な雰囲気が恋しく感じられるかもしれない。フォードの製造品質が低いわけではないものの、フォルクスワーゲンが100%仕上げたデザインセンスには敵わないようだ。
快適性を意識した乗用車のような安定感
アマロックのドライビング体験は、従来以上に静かで洗練性を高めた。平滑な高速道路を走っている限り、実用性を優先した商用車というより、快適性を意識した乗用車のような安定感すらある。
リジットアクスルのリアタイヤへ難題を与えない限り、上下動は限定的。小さめの声で会話ができるほど、車内は平穏な空間が保たれる。ハーマン・カードンのサウンドシステムが装備されているが、その音質もちゃんと楽しめた。
一般道へ降りてカーブが続く区間へ進むと、シャシーとボディが別体だということを実感する。旋回時のボディロールや、加減速時のピッチングは抑制されているが、先代の方がまとまりのある挙動だったはず。2代目のボディは、大きく重くなっている。
筆者が気になったのはステアリング。レシオは妥当で正確に反応するものの、路面の感触が期待ほど伝わってこないように感じた。といっても弱点とまではいえないレベルで、優れたオフロード性能を考えれば、納得できる操縦性は備えている。
フォード由来の10ATは効果的に仕事をこなすが、先代が積んでいたZF社のユニットほどフィーリングは良くないように思う。機会があれば、MTを試してみたい。
フォードの血を宿し、魅力度を増した2代目
フォードの血を宿した2代目フォルクスワーゲン・アマロックは、農場や建設現場以外でも、一層乗りやすいクルマになった。先代よりプロダクトとしては間違いなく優れている。唯一、初代の好感を持てる操縦性までは受け継いでいないことが残念だ。
とはいえ、能力や質感を向上させ、魅力度を増したことは間違いない。全体的に見れば、評価できる新世代への進化だといえるだろう。
フォルクスワーゲン・アマロック 3.0TDI アベンチュラ(南アフリカ仕様)のスペック
英国価格:5万8900万ポンド(約977万円)
全長:5350mm
全幅:1910mm
全高:1888mm
最高速度:201km/h(予想)
0-100km/h加速:−
燃費:11.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:−
パワートレイン:V型6気筒2993ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:240ps/3250rpm
最大トルク:50.9kg-m/1750-2000rpm
ギアボックス:10速オートマティック
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