基本は工具セット
DIYで愛車のメンテナンスにチャレンジしてみようと考えたときに、入門用として多くの人が手にするのが、工具メーカーが販売する入り組が50~80点程度、実売価格で3~7万円程度のスターターキット的な工具セットではないだろうか?
KTCやTONE、SIGNET(シグネット)などから販売される工具セットはプロのメカニックも愛用しており、クルマやバイクなどの現場でよく使われるサイズの工具がひと通りセットされている。このセットがひとつあればエンジンオイルやスパークプラグの交換、エアクリーナーの清掃・点検・交換、ブレーキパッドの交換くらいは問題なくできるはずだ。
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このセットに入っている工具は、スパナもしくはコンビネーションレンチ、メガネレンチ、六角レンチ、モンキーレンチ、ラチェットハンドル&ソケット、各種ドライバー、ニッパーやペンチなどの所謂「掴み物」、ハンマーなどとなる。これら工具の中でボルトやナットの取り付け&取り外しにもっとも活躍するのがラチェットハンドル&ソケットとなる。
ドライバーのセットスパナ・メガネレンチ各種サイズのラチェットハンドルとソケットラチェットハンドルのサイズは実はイロイロ
■差し込み口のサイズとソケットの関係
工具セットに入っているラチェットハンドルは、差し込み口(ラチェットハンドル先端にあるボールの付いた四角い突起)3/8インチ(9.5mm)のスタンダードハンドル・小判型ヘッドの製品がほとんどだ。クルマやバイクのメンテナンスで用いるラチェットハンドルには、ほかに1/4インチ(6.3mm)、3/8インチ(9.5mm)、1/2インチ(12.7mm)のものが存在するが、中間サイズの3/8インチのラチェットハンドルがもっとも使用頻度が高いことから工具セットに選ばれることが多い。
しかしながら、DIY整備にも慣れてできる作業内容が増えてくると差込口3/8インチのラチェットハンドル&ソケットだけでは物足りなくなってくるだろう。それというのも日本車や欧州車(英国車を除く)のメンテナンスで使用するメトリック(メートル法)ソケットの場合、それぞれに対応するラチェットハンドルは、1/4インチが3~15mm、3/8インチが5~32mm、1/2インチが6~46mm程度が一般的だからだ(メーカーによってソケットの設定が若干異なる)。
左から1/2インチ、3/8インチ、1/4インチのラチェットハンドル。差し込み口のサイズの違いがわかる。左から1/2インチ、3/8インチ、1/4インチの再仕込み口に対応するソケット。■工具は適材適所でサイズを選ぼう
各ラチェットハンドルに対応するソケットには重複したサイズがあるが、同じ12mmサイズのソケットでも1/4インチのものは小さく、1/2インチのものは大きくなり、許容される最大締め付けトルクも異なってくる。だから、狭い場所での作業で締め付けトルクが小さな場合には1/4インチのラチェット工具を使えば、その取り回しの良さを生かして効率的な作業ができるし、反対に充分な作業スペースがあり、締め付けトルクが大きなボルト&ナットを回すときには、1/2インチのラチェット工具を使わなければ必要なトルクをかけられず、走行中に部品が脱落するなど安全上の問題が生じることになる。
左から1/2インチ、3/8インチ、1/4インチ。ソケットサイズだけでなくハンドル自体のサイズも異なってくる。一般的には1/4サイズのものは、エンジンルーム内での細かな作業、クルマの内装やアンダーカバーなどの小さなサイズのボルトの取り付け・取り外しに使用することが多く、1/2インチのものは足廻り部品の脱着やエンジンの分解整備などの大きなサイズのボルトの脱着に使用されることが多い。中間サイズの3/8はある程度どちらの作業にも対応が可能だが、作業に習熟するうちに、いずれは1/4インチや1/2インチサイズのラチェットハンドル&ソケットが欲しくなるシチュエーションが出てくるかもしれない。
サイズだけじゃない!ソケットの違い
■シャローとかディープってナニ?
各ソケットにはその高さに応じて、シャロー(浅い=短いの意)、セミディープ(中深=中間サイズ)、ディープ(深い=長いの意)の設定がある。通常、工具セットには差し込み角3/8インチサイズの8~19mmのシャローソケットセットと、数本のディープソケット(サイズは8、10、12、14mmの4本)がセットされていることが多い。これはちょっとしたDIY整備で使用が多いソケットで、これより小さなサイズはクルマやバイクにはあまり使われていないし、これより大きなサイズは重整備となってアマチュアには手が余ることが多いことから選ばれたサイズと言えよう。
また、通常のボルト&ナットはシャローソケットで事足りるが、奥まった場所にあるボルト&ナットを脱着するにはディープソケットがあると便利だ。そうした場合、シャローソケットにエクステンションバー(延長アダプター)を組み合わせることで作業は可能となるが、バッテリーホルダーのナットのような長いボルトにナットがはまっている場所をネジのある側からアクセスする場合には、ディープソケットがあるとソケットの高さを生かしてネジ山を逃すことができるので、作業が格段にラクになる(なければスパナを使うしか手がなくなる)。
左からディープ、セミディープ、シャローのソケット。同じ12mmのソケットでも高さ違いで種類がある。■サイズはなるべく細かく揃えたい
最後に工具セットに入ったソケットのサイズで注意がある。どの工具メーカーでもソケットは1mm刻みで製品をラインナップしているのだが、工具セットには8、10、12、14、17、19mmの6つのソケットしか入っていないことが少なくない。これは長らく日本車に多く使われてきたサイズなのだが、欧州車では11、13、15、16、18mmのソケットも広く普及しており、セットの工具だけでは輸入車に対応できなくなってしまう。
「オレは輸入車には乗っていないから関係ないよ」と言う人がいるかもしれないが、自動車産業がグローバル化した昨今は海外生産の日系ブランド車や外国メーカーとの共同開発車も珍しくなく、こうしたクルマには輸入車御用達サイズのボルト&ナットがキッチリ使われている。作業中にソケットサイズが合わなくて困らないように、これから工具セットを買う人は8~19 mmまで1mm刻みのソケットが入り組されている製品を買うか、あるいは足りないサイズを工具セットと一緒に購入しておくことをオススメしたい。
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