マツダ3まではよかったが、その後の「魂動デザイン」には疑問を感じはじめている。
待望のCセグメントクロスオーバー、CX-30。スタイリングはクラスでもっともシュッとして美しい。しかし、ナゼか印象に残らない。容姿端麗なのに芽が出ないモデルやタレント、そんな感じなのである。
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インパネも専用デザインだが、これはマツダ3に似た雰囲気だ。出来栄えも同様に素晴らしく、コックピットは触感や操作感を含め、非プレミアム系でクラストップの上質さ。骨盤を立てて座らせるシートは腰の位置がしっかりキマり、ドライビングポジションをとるとクルマ全体が体になじむ感覚さえある。
試乗車はXDのFFと20Sの4WDの、ともにLパッケージ、6速AT車。前者の1.8Lクリーンディーゼルは2.8Lガソリンなみのトルクが頼もしく、後者の2Lガソリンは実用域の静粛性と伸びやかなパワーが特徴だ。両者とも走りっぷりはマツダ3より60kg前後重い車重をほとんど感じさせない。
ハイライトは、やはり「スカイアクティブ ビークル アーキテクチャー」がもたらすシャシー性能だ。前述のシートも、その新世代車両構造技術の一要素として開発されている。
試乗コースはマツダR&Dセンター横浜周辺の一般道、および首都高。普通の道をフツーに走るだけでも、クルマの挙動には驚くほど密な「人馬一体」感がある。ステアリングはすっきり上質な操舵感で、直進安定性を損なうことなく中立から遅れのないレスポンスを実現。しかも、それこそ指1本分の操舵にもフロントは反応し、その正確さがステアリングを切るにせよ戻すにせよ全域で滑らかにつながる。
特に、穏やかにレーンチェンジするくらいまでの小舵角では、ステアリングを切るというより、イメージするだけでクルマがそのとおり動くような「以心伝心」感を覚える。視線が少し高いクロスオーバーの視界のよさと相まって、運転のしやすさは抜群。ハンドリングのスポーツ性はマツダ3に譲るが、実用域における走りの一体感はCX-30が上かもしれない。
乗り心地は路面からの突き上げがマツダ3よりマイルドで、さらに上質。20SはXDよりエンジンが静かな分、前席でもロードノイズが若干目立つ傾向にあるが、全般的な静粛性もCX-30が優位だろう。
パッケージにはクロスオーバーの空間メリットが十分生きている。1540mmに抑えられた全高は、たいていの機械式駐車場が利用可能。シート地上高は高からず低からず絶妙で、乗り降りがとてもしやすい。ホイールベースはマツダ3より70mm短いが、実質的には同等以上の後席ニールームと、同セダンに近い430Lの荷室容量を備える。ロングノーズのプロポーションでありながら、CセグメントSUVとして十分な実用性を見事に両立しているのだ。荷室とのせめぎ合いでマツダ3より2度立った後席シートバックが改善されれば、なおよし。
競合車は非プレミアム系の日本車だけでもトヨタC-HR、ホンダ ヴェゼル、三菱エクリプス クロス、スバルXVなど実力派が揃う。しかし、CX-30は内装と走りの質感、ハンドリングの一体感、装備の充実ぶりでいずれもクラストップ。室内の実用性もクラス標準を十分確保している。総合力は日系Cセグメントクロスオーバーでナンバー1。現行マツダ車でもっとも幅広いユーザー層にマッチする車種と言っていい。それを考えれば、誰が見てもクセのないデザインにも、とりあえず合点がいく。
不思議なのは、マツダ3と同じくステアリングアシスト機能をあえて渋滞限定としたCTS(クルージング&トラフィック・サポート)。マツダらしい“こだわり”ではあるが、わざわざ競合相手につけ入る隙を与える必要はない。
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉
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