現在位置: carview! > ニュース > イベント > スバル/STI ニュルブルクリンクへの挑戦 2020仕様へWRX STIをモディファイ中

ここから本文です

スバル/STI ニュルブルクリンクへの挑戦 2020仕様へWRX STIをモディファイ中

掲載 更新 3
スバル/STI ニュルブルクリンクへの挑戦 2020仕様へWRX STIをモディファイ中

スバル/STIのニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦は、前回11月のテスト報告から始まっている。NBRマシンは2019年完全優勝をしたものの、まだまだ改善すべきポイントがあるという。チーム総監督の辰己英治氏は、自ら課題を課して2020仕様のモディファイに取り掛かっている。そうした2019年の年の瀬も迫る中、辰己総監督が率いるスバル/STIのNBRチームは富士スピードウエイで再びテストを行なっていた。

全領域の見直し

スバルの次世代戦略 2030年代前半に全車電動化と死亡交通事故ゼロを目指す

11月のテストで2020仕様の大まかな方向性を示し、年末12月25日のテストでは2020年のベースとなる仕様を使って修正ポイントを確認していくテストが行なわれていた。キャリーオーバーされたWRX STIマシンではあるが、空力ボディ、サスペンションを変更し燃料タンクやブレーキの変更なども行なっており、全領域での見直しが行なわれている。

この日のテスト課題は、ハンドリングのキモとなるジオメトリー変更の確認だ。かねてから辰己総監督は、ロールセンターを上げるなどのジオメトリーには課題があるとしていたのだ。この日は、そうした取り組みからの変更がどこまで成熟できているのか、その確認だ。また、燃料タンクの変更、ABSの制御変更と摩材変更によるマッチングなどの確認作業も同時に行なわれていた。実は、この日スーパーGTのGT300に参戦するBRZ GT300もテストがあり、ドライバーはSGTを山内英樹選手が担当し、NBRを井口卓人選手が開発担当する役割でテストしていた。

ポイントはアッカーマン

辰己総監督によれば2020仕様の中心となるジオメトリー変更の狙いは、如何に抵抗なく滑らかにコーナリングをしていくか、ということでAWDの特性を活かしつつ旋回抵抗を減らすジオメトリーを目指しているという。

11月のテストの時のレポートでもお伝えしたが、アッカーマンジオメトリーが一つのキーになるという。アッカーマンジオメトリーは後輪車軸の延長線上に旋回半径の中心があり、フロントタイヤの操舵時の中心点までの距離と角度でスムーズなコーナリングが生み出される。それを、スクラブ半径やホイールのオフセットなどの影響も含め、タイヤに旋回抵抗のかからない理想的な旋回を目指そうというのが2020仕様の狙いになる。

関連記事:スバル WRX STI 2020年ニュルに向けて始動開始

辰己総監督によれば、操舵初期に内輪もきちんと横力を発生させるようにした方が回頭性は高くなり、物理的には不可能ではあるが、完全アッカーマンを目指したいという。これまでの旋回は内輪に抵抗が生じ、外側タイヤがメインで旋回しているが、そうした常識を覆していくということかもしれない。

そこでトライしているのがロールセンターとリヤのサブフレームだ。ロールセンターをこれまでより20mm上げることとし、そのためにアップライトを新規に作り直してこのテストに装着してきた。リヤのサブフレームは、前回のテストで前後ともにピロボールへ変更したものの、ドライバー評価が低かったために、従来どおり後ろ側をブッシュに戻している。

ただし、ブッシュのすぐり角を回転方向とは逆の角度へ変更することで、トー変化は従来とは異なり、理想のアッカーマンへと近づくのではないかというトライだ。そしてドライバーの体感的には全体に剛性感が上がったように感じるという。井口選手からも同様のコメントがあり、狙いどおりに仕上がってきていることがわかる。

辰己総監督によれば、ドライバーがそう感じられれば、等価的にはスプリングを硬くしたのと同じ効果があり、逆にスプリングは柔らかくセットアップできるので、より乗りやすくなるはずだという。

ブレーキの変更

ブレーキはブレンボのローター&キャリパーに変更はないもののサイズを少しダウンさせ、またABS制御変更を行なっている。そしてエンドレスのブレーキパッドも藦材変更をしている。

その理由だが、19年仕様は冷えた状態ではかなりレベルの高いブレーキ性能だったというが、レースで温度が上がった状態になるとABSの介入が早くなる傾向があったという。井口選手によればニュルの路面はミューが低いので繊細なブレーキタッチが要求されるということで、ABSが介入されるたびにタイムロスしていることを感じているという。

そのため、ブレーキシステム全体の見直しを行ない、とくにABSの介入に関する制御変更を行なったという。変更後群馬のテストコースでABSテストをしてみるとブラックマークがきれいにつながるような制御になったという。19仕様だと、ブラックマークが途切れ途切れになり、ロック状態が繰り返していたことがわかったという。



燃料タンクも変更

燃料タンクは100Lタンクを搭載しているが、ニュルのレースでの給油は通常のガソリンスタンドで使う一般的な給油ノズルを使う。だからタンクからの逆流があるとノズル先端のセンサーが働き、給油が自動でストップする仕組みのそれだ。そのため、給油中、満タンになるまで何度もカチカチとガングリップを握る動作を繰り返すことになる。そこには十数秒のタイムロスが生じているのは言うまでもない。そこで、給油された燃料が逆流しないような、タンク内の空気の抜けがいい形状に設計変更して今回搭載してきたのだ。そして、テストでは一度も給油が止まることなく、99Lまで給油できたという。

この変更で、1回の給油時間も十数秒の短縮になるという。それが24時間のレースでピット回数が18回あるので、数分の短縮へとつながり、課題としている1スティント9ラップの目標も可能になるという施策だ。

エアロボディ

空力変更ではフロントフェンダーの形状変更とリヤウイングの変更があった。こちらはまだ、風洞テストができておらず、ダウンフォースの変化などデータはない。フロントフェンダーはエアアウトレットを大きくサイズ変更し、タイヤハウス内の空気の抜けとエンジン房内のエアの抜けを改善し、冷却効果もありメリットは大きいという。また、フロントフェンダーはサスペンションのジオメトリー変更にともない、トレッドが若干狭くなった。片側-3mm縮小しているので、その分フェンダーは内側に入り、正面からみた時にくさび型のルックスへとなっている。肉眼ではその違いまでは確認できないが、そうした違いからも前面投影面積も変わり、いい方向に変更されていると辰己総監督は話す。

リヤウイングはステータイプから吊り下げ式のスワンネック形状へ変更し、それに伴い、ウイングのサイズ変更も行なわれている。しかし、この日はウイングの角度調整などのレベルまではテストできておらず、次のテスト段階に入ってからの調整になるようだった。

エンジン、トランスミッションには大きな変更はなく、クラッチに変更を加えたレベルだという。これはギヤ比の設定でハイギヤード化していくと1速のギヤが高くなり、発進がしにくくなっているからで、高回転で繋ぐとクラッチは一瞬で滑ってしまうので強化をしたという。そしてエンジン自体もピットレーンに侵入した時点でエンジン回転を絞る信号を出すように変更し、不注意から起こるトラブルを未然に防ぎ、ドライバーの負担軽減にもなる対策をしているわけだ。

このように、NBRはベース車両が19年のチャンピオンマシンだけに順調に2020仕様へと変貌を遂げている。ベースモデルがしっかりできているため、リヤサブフレームのように、仮に変更してよくない結果になれば元に戻すこともできるアドバンテージがある。そうした余裕があるからなのか、さまざまなトライができており、さらに戦闘能力が高まっていっているように感じられるテストだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

Twitter:https://twitter.com/autoprovenet
facebook:https://www.facebook.com/autoprovepage/
Youtube:https://www.youtube.com/user/autoprove/

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス

みんなのコメント

3件
  • アッカーマンって見た瞬間「立体機動装置」を思い浮かべてしまった・・・^^;
  • まあいいんだけど、年に1回だし、WRCに比べると楽しみは少ない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

452.1485.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

85.01588.0万円

中古車を検索
WRX STIの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

452.1485.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

85.01588.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村