スズキスペーシアに4つ目のバリエーションとして4ナンバー商用車の「ベース」が追加されました。遊びも仕事も日常使いもでき、ヒトもモノも重視したクルマというスペーシアベース。その魅力を島崎七生人さんが愛犬「シュンくん」とともにさっそくチェック!
ソロキャンプ、車中泊、ペットのいるご家庭にも
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その名もスペーシアベース。いかにも「何かできそう」と期待感が膨らむスズキスペーシアの新しいバリエーションは、遊びも仕事も日常使いもでき、ヒトもモノも重視したクルマとして登場した。
ポイントは、5ナンバーの利便性と4ナンバーの機能性のいいとこ取りをした、文字どおりのマルチパーパスカーに仕上げられた点。聞けば商用車の設計スタッフが改めてユーザーの声をリサーチ、商用車であっても型にはまらないクルマとして企画立案したのだそう。ターゲットは1~2名の利用がメインで、バン、ハイトワゴンを仕事にもプライベートにもフル活用したいと考えているユーザー。とくに仕事での用途はまったく犠牲にせずに、きょうび広まってきたソロキャンプ、車中泊などでの使い勝手のよさを重視している点だ。
それとペットのいるご家庭にもぜひ!ということで、今回のレポートではソコのところをフックに、スペーシアベースにペットを乗せてのレポートをお届けすることにした。モデルはこの10月で月齢8ヵ月ながら(おかげさまで!?)すでに体重12kg+とスクスクと成長中、我が家のオスの柴犬のシュンである。カレは少し前にスペーシアギアや新型アルトラパンLCにも試乗しており、カルモマガジンでそのレポートをお届けしているが、生後8ヵ月にして今回3台目のスズキの軽自動車の試乗、である。
ペットとのアウトドア旅に使えるラゲッジの「前後分割」
何はともあれ、早速、実車の使いやすさを検証してみた。試したのはカタログで“前後分割モード”と呼ばれる、マルチボードを縦にしたパーティションとして使い、前側にペットを乗せるスペース、後ろ側をラゲッジスペースとする使い方。この場合、リヤシートは折り畳んで後席足元に沈ませて格納するが、こうすると低くフラットなフロアが出現、その上で所定の位置にマルチボードを立てると、前後方向のサイズで前805mm、後ろ545mmのスペースができる。
文字で説明するよりも写真をご覧いただいたほうが話は早いが、移動中を想定して10数年来愛用のコールマンのクレートが余裕で置けるほか、フロアにボアのマット(TUMIの廃盤の製品)を敷けば、停車中など、ペットが起きていようが昼寝をしていようが、自由にさせておける。大型犬でもスペースは十分だ。またパーティションのおかげで荷物をペットとは隔てて載せておけるので、シュンが荷物をいたずらすることもない安心感も助かる。
そしてこの状態でラゲッジスペースも十分な収容力があり、写真のように、実はインドア派の我が家にありったけのアウトドア用品(コールマンのクーラーボックスの大と小、フォールディングチェアで以上すべて。余談だがほかに買って箱に入ったままのBBQセットが物置きにある)と、スペーシアベースの純正アクセサリーのリラックスクッション(使用時のサイズは210cm×54cm)などを載せた程度では、まだ十分に余裕があった。
車中泊派には上下分割が便利!オプションで外部電源ユニットも
なおマルチボード(自重は5.5kgだそう)は、ラゲッジスペースで使う際に3段階の高さが選べ、目的、用途で使い分けられる。今回の試乗ではスーパーで買い物に行き、上段には買い物バッグ、下段には100円ショップで買った来年のカレンダーを載せて、丸めたりシワをつけたりすることなく持ち帰ることができた。この“下段モード”の下側のクリアランスは165mmあり、たとえば車中泊ならこの下段に荷物を整理して収め、上段をフラットなベッドにするといった使い方が可能だ。
実用面でいうと、カタログに販売会社装着アクセサリーとして載っている“外部電源ユニット”は重宝しそうだ。車外から電源を引き込むことができ、最大1,500Wまでの電化製品が車内で使用可能になる。ほかにも室内にはリヤクォーターポケット、オーバーヘッドシェルフといった収納スペースが用意されているのも便利。ラゲッジスペース自体はビールケースで24個積載可能という十分なスペースを持ち、最大積載量は200kg(2名乗車時)となっている。
スペーシアギアと同じ撥水加工のシート表皮は、一般的な4ナンバーのバンとは一線を画す質感と、水濡れ、汚れを臆することなく使えるのがいい。前席にシートヒーターを備える(XFとGFの4WD車は左右両席)のも冬場のドライブではありがたい。XFでは右側スライドドアがパワースライド式だが、これはドライバーをメインに想定しての配慮。そういえば47万円の初代アルトは、運転席側だけにキーシリンダーを備えていた(その後リモコンキーが登場すると、今度は助手席側のみキーシリンダーを備えた)。
出しゃばりすぎない、シンプルでスッキリとしたルックス
スタイリングは、ご覧のとおり。リヤクォーターはガラスに代えてビード入りの樹脂パネルが装着され、ここがスペーシアベースのデザイン上のアクセントになっている。フロントグリルは実はマイナーチェンジ前のスペーシアカスタムのそれを使い、ドアミラーハウジング、ドアハンドル、リヤライセンスプレートガーニッシュとともにブラックパール塗装、ルーフレール(スズキの軽商用車では初採用)、ランプ、ホイールなどはブラック塗装とし、クルマ自身が出しゃばりすぎない、シンプルでスッキリとしたルックスに仕上げられている。
身の丈に合ったストレスのない走り、サラッと良好な乗り味
走らせた印象は“普通”。搭載エンジンは52ps/6.1kg・mの性能を発揮する3気筒(DOHC 12バルブ吸排気VVT)で、これにCVTの組み合わせだが、身の丈に合ったというべきか、街中から高速走行までの実用領域でストレスなくクルマを走らせられる。今回の試乗ではフルロードは試さなかったものの、スムースさ、レスポンスの良さから想像すれば、おそらく非力感は実感せずに走らせられるはずだ。
足回りの基本はスペースアで、対荷重に配慮してフロントホイールのハブベアリングの容量をアップしていることと、ワゴンRスマイルで採用されたころがり抵抗が小さく燃費に配慮したタイヤ(ダンロップ・エナセーブ EC300+)を装着。指定内圧は前/後=240/260kPaながら、不快なざらつきは感じることなく、サラッと良好な乗り味になっていた。
なので、モータージャーナリスト犬・見習い5ヵ月目の我が家のシュンも、試乗時はまだ残暑の中だったが、クルマ酔いすることもなく、移動中の加・減速、コーナリングでも不快感を示すこともなく、時には“オスワリ”の姿勢で窓の外の景色を眺めたりしながら“平常心”で試乗がこなせていたようだった。
クレートに入れずにシートの上に座らせて載せるだけでは何かと不安定だが、今回のスペーシアベースのように低く水平な床に乗せておくことができればやはり安心感が違う。スペーシアベースの場合、後席のシートベルトは脱着式だが、床側にあるキャッチにベルトのバックルを差し込む方式になっているが、このキャッチを上手く活用して、ペットのハーネスの背中とつなげて走行中のペットの身体を保持できるような、そんな発想のしつらえがあるとより嬉しいかもしれない。
リヤスペースが合理的に自在に使えるのは何といっても魅力
現状では我が家では2ドアのフィアット500の限られたスペースの後席にやや苦労しながらクレートを押し込み、その中にシュンを乗せる方式をとっている。それに較べたら、スペーシアベースのスペースユーティリティの高さはやはり大きなアドバンテージだし、リヤスペースが合理的に自在に使えるのは何といっても魅力だ。我が家のクルマの後席のような“詰め込まれた感”がないせいか、試乗中に撮影したシュンの表情もいつもよりせいせいとしていた。時間と気持ちに余裕があるなら、ペットのためにもこういうクルマを1台用意して、人生をいろいろに楽しみたいものだ。
(写真:島崎七生人)
※記事の内容は2022年9月時点の情報で制作しています。
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