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青山にオープンしたDSの旗艦ストアでチーフデザイナーに直撃インタビュー

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青山にオープンしたDSの旗艦ストアでチーフデザイナーに直撃インタビュー

フランス本国ではパリ8区のど真ん中に展開するフラッグシップストア、「DSワールド」。その東京版が青山に上陸した。「DSストア東京」のことだ。ただクルマを見られるだけのショールームではない。本国と同様にDSの世界観を構成するフランス独自のクラフツマンシップ、革加工のようなノウハウや、着想の源となるアーティスティックな側面を体験するスペースとなっている。クルマ自体は販売していない本国のフラッグシップストアと異なる点は、DSストア東京にはディーラー機能があること。つまりクルマを購入することもできる。

シトロエンから独立して4年が経過した今も、DSはブランドとして一歩ずつ歩みを固めているプロセスにある。今回のDSストア東京のオープンには、チーフデザイナーで、DSの車両プロダクトは無論、カタログやショールームなどデザイン関連のすべてを統括するティエリー・メトローズ氏が姿を見せた。

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DSのモノグラム・ロゴは、シトロエンのダブル・シェヴロンを分解して再構築したかのように、「D」も「S」も同じ要素で組み合わされ表現されており、連続させてパターン化すれば「トラム(織り綾のこと)」にすることもできる。メゾン系ブランドの鞄などに見られる手法だが、そもそもこのモノグラムは誰が考えついたのだろう?

「2007~2008年頃だったと思います。当時在籍していた社内のエクステリア・デザイナーですね。彼はもう独立したので名前は挙げませんが、自動車業界でこうしたラグジュアリー・メゾンのコードに沿ったロゴを採り入れたのはDSが最初です。シトロエンのダブル・シェヴロンだけでなく、ルーヴル美術館のピラミッドも意識しています。でも当初のDSはシトロエンのラインナップ中の一部分で、2014年に独立ブランドとなるにあたり、既存のDS 3、DS 4、DS 5から一度リセットして、さらに一歩踏み込む必要があった。それが同年のパリサロンで発表したプロトタイプ Divine(ディヴィーヌ)です」

ディヴィーヌはその後のDSのデザイン・ランゲージやエッセンスを詰め込んだスタディ・モデルで、今もDSのデザイン・スタジオに“立ち戻るべき手本”として並べられている。テールランプのうろこ状のモチーフは、一枚板の樹脂にレーザー彫りで加工し、ランプには一つ一つ小型のLEDが組み込まれている。匠の技の繊細さとテクノロジー、DSのヘリテージがすべて凝縮されているという。

「シトロエンDSが50年代に採用したステアリング連動型のディレクショナル・ヘッドライトは安全装備でもありましたが、現代のDSが光の演出にこだわるルーツでもあります。テクノロジーはただ搭載するのではなく、いかに演出するかも大事なのです」

ただたんに、豪華で凝った造りを目指したクルマとは一線を画すのだという。ちなみに、メトローズ氏は“プレミアム”という言葉が嫌いだともいう。

「今やあらゆるメーカーがそういっているから、ありふれています。そもそも、人にそう認めてもらうならまだしも、自称していい云い方かどうか、大いに疑問です」

DSは、長らく失われていたフランスのハイエンドなクルマ造りを標榜するだけに、チーフデザイナーの「プレミアム嫌い」は意外だったが、メトローズ氏はこう続ける。

「通常のプレミアム自動車メーカーなら、DS 7クロスバックのようにイグニッションONでライトを一灯づつ回転させることはしないでしょう(笑)。あれはマジックな効果を求めたというか、非合理的なもの、すなわちエモーショナルなもの。クルマにエモーショナルなものをもとより感じない人は、DSの顧客ではないと考えています」

自動車のマーケットがグローバル化し、グローバルに好まれるデザインが台頭しているなか、DSらしいデザインの特徴として、常に“手工芸的”、つまりアルティザン的な部分を残すこと、そして調和を作り出すコントラストが必要という。DSというクルマがエモーショナルな存在であるためにメトローズ氏がとくに重視するのは、彫像的なプロポーションと、マロキニエ(革小物職人)的な素材と仕上げだそうだ。

「エクステリアは、筋肉は感じさせてもシンプルで控えめであること。その方が頑丈で安定して見え、古びにくい。インテリアについては、フランスの伝統的な匠の技である革加工の技術に習うところが大きいです。たとえば、時計のブレスレットのような形状のシートも、細かい革をツギハギにしているのではなく、質のいい大きな一枚革のような高貴な素材を丁寧なステッチで縫い上げるという、そういう仕上げです」

プロダクトの素材やディティールに事細かにこだわる一方で、それ以外の部分にもメトローズ氏は腐心している。

「これまでの“製品のデザイン”から“体験のデザイン”の時代にわれわれは突入しています。10年ぐらい前は、クルマというプロダクトのデザインに特化すればよかったことが、グローバルに通用するような'体験'までデザインすることが求められている時代です」

具体的にどういうことなのか?

「DSのデザインチームはプロダクトをデザインするだけに留まりません。プロダクトと一貫性を保つためカタログ、ショールームデザイン、モーターショーブースといった周辺の様々なツールをも、別に存在するCI統括部とつねに連携をとって管轄するデザイナー要員を揃えています。インダストリアル・デザインから五感の経験をデザインすることに移行している以上、デザインの仕事は、かなり幅広い編成となっています。インテリアとエクステリア、カラーリストや素材の専門家もいますし、バーチャルラボの専任フォトグラファーや、ライティング専任チーム、そしてHMI・UIに携わるチームも。すべては五感を刺激するようなデザインに仕上げるためです」

ただし、エモーショナルなデザインをものにするためには、合理的なアプローチを進めるだけでは不十分であることも、メトローズ氏は承知している。

「自動運転とパワートレインの電化は不可避ですが、そのために“無機質なデザイン”にはしたくないのです。例えば、なぜEVといえば白や銀のボディに青いアクセントがお約束なのか? 今年のパリサロンで発表したDS 3クロスバックは内燃機関もEVも分け隔てなく、DSとしての色味や素材感を楽しんでもらえます。テクノロジーなくしてデザインはないと考えますが、どちらか一方だけに傾斜するのはアンバランスなのです。実際、われわれのデザインチームはデザイナーだけで成り立っているわけではありません。同じフロアでひとつのモデルを創るために、デザイナーとエンジニアそれぞれのチームが協業しています。たとえ話ですが、3Dプリンターを使っている隣のセクションではミシンが動いているような。そうやって互いの仕事をリスペクトして、初めて素晴らしいものができる、そういう確信に基づいてDSのデザインは創られているのです」

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