2020年12月13日、ヤス・マリーナ・サーキットで開催されたF1第17戦最終戦アブダビGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポールトゥウインを達成、メルセデス勢を圧倒した。アレクサンダー・アルボンもメルセデスを脅かして4位に入賞。アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーが8位に入るなど、ホンダのパワーユニット勢は3台が入賞を果たしてシーズンを締めくくった。ホンダ快走の要因はどこにあったのか。ホンダのドライバーのコメントから探ってみよう。
メルセデス勢もアブダビでのホンダの速さにはなす術なし
この日のフェルスタッペンの速さは素晴らしかった。フェルスタッペンはポールポジションから好ダッシュを見せると、オープニングラップで後続をDRS圏外まで突き放す快走を見せる。
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5番手からスタートしたアルボンは、6周目に前を行くランド・ノリス(マクラーレン)をパスして、4番手に浮上。2番手、3番手のメルセデス勢をレッドブル・ホンダの2台が挟む形でレースを進める。このアルボンの走りはメルセデス勢にとって脅威で、思い通りの作戦がとれなくなくなっていく。
アルファタウリ・ホンダの2台は、ダニール・クビアトがスタートポジションの7番手を守り、ピエール・ガスリーは1つポジションを落として10番手で1周目を終え、その後、ガスリーはクビアトとポジションを入れ替えて8番手、9番手で序盤を進める。
レースが動いたのは10周目。セルジオ・ペレス(レーシングポイント・メルセデス)がエンジントラブルでコース上にストップし、バーチャルセーフティカー導入からセーフティカー出動となる。この時フィニッシュまでハードタイヤで走りきれる周回数であったことから、ホンダのパワーユニット勢4台を含め、大半のマシンがこのタイミングでピットインし、タイヤ交換を行うことになる。
フェルスタッペンはピットアウト後もリードを拡大し続け、盤石のレース運びを見せる。チームメイトのアルボンはタイヤをマネージメントしながら、終盤にはメルセデス勢との差を詰めていくが、3位のルイス・ハミルトンに約1.5秒差まで迫ったものの一歩届かず、4位でフィニッシュした。
一方、アルファタウリ・ホンダの2台は、セーフティカー導入の際にステイアウトしたマシンの後方にポジションを下げトラフィックの中で苦戦。しかし、それでもガスリーはシャルル・ルクレール(フェラーリ)、ランス・ストロール(レーシングポイント・メルセデス)、セバスチャン・ヴェッテル(フェラーリ)を立て続けにオーバーテイクして8位でフィニッシュ。クビアトも追い上げてポイントまであと一歩の11位で完走を果たした。
2020年シーズンを終え、ホンダのパワーユニットは3勝、表彰台14回を獲得。4人のドライバーすべてパワーユニットの使用を規定通りの年間3基以内で終了、パワーユニットマニュファクチャラーの中では唯一のエンジン交換ノーペナルティでシーズンを終えた。
最終戦の快走の背景には、どうやらこのパワーユニットの信頼性があったようだ。最終戦ではメルセデス勢はホンダのパワーユニットに太刀打ちできなかったが、思うようにパワーを出せていなかった節がある。また、アルボンの快走により、思い切った作戦がとれなかったのも大きい。この戦いが来季できれば、おもしろいことになりそうだ。
ちなみに、レーシングポイント・メルセデスのペレスは、規定を超えるパワーユニットの使用のためグリッド降格になったばかりか、わずか10周でエンジントラブルに見舞われている。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、レースを終えて「シーズン最終戦、アブダビGP決勝はレッドブルのフェルスタッペン選手がポールトゥウインを飾り、ホンダとしてシーズン3勝目を挙げることができました。フェルスタッペン選手は終始トップを譲らない力強い走りで、ライバルを寄せ付けずチェッカーフラッグを受け、最終戦を勝利で締めくくってくれました。チームメートのアルボン選手は、終盤前の車に迫る走りを見せたものの残念ながら4位、アルファタウリのガスリー選手は見事なオーバーテイクをいくつも見せて8位、クビアト選手はピットストップでポジションを大きく落としたことが響き、惜しくも入賞には一歩届かず11位という結果でしたが、ホンダとしていい形でシーズンを締めくくることができました。コロナ禍の中、短期間かつ過密日程で戦うことになったシーズン全体を振り返ってみると、レッドブルと一緒にチャンピオンシップ獲得を目標としてシーズンインを迎えたものの、結果としてはチャンピオンのメルセデスに大きく離されるという悔しい一年になりました。パッケージとしてさらなる進化を果たさなくてはいけないことを痛感している一方で、今日の勝利以外にも、F1の70周年記念レースでの勝利や、アルファタウリ(トロロッソ)との50戦記念レースでガスリー選手が初勝利を挙げるなど、記憶に残るレースができたと思っています。また、シーズン3基の使用が許されているパワーユニットレギュレーションに沿う形で、ホンダの4台すべてがパワーユニット交換によるペナルティなしでシーズンを終えられたことは、過去に学び信頼性の向上を図れた結果だと思っています。来年はホンダにとってF1に参戦する最後の一年になります。チャンピオンシップ獲得を目指し、ファクトリーではさらなるパフォーマンスアップに向けて、チームとともに開発を懸命に続けていきます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
「レースウイーク前はここまでの成果を予想していなかったので、この2日間はとても楽しめました。ポールポジションはうれしかったですし、こんな完勝でシーズンを締めくくれるのも僕らにとってはいいことです。タイヤマネージメントがよかったですし、マシンバランスがとてもよくてドライビングが楽しかったです。タフな戦いを予想していましたが、すべてがうまくいったと思いますし、プレッシャーを感じる場面が全くなく、なかなかいい気分でした。こういう形でシーズンを終えるのはもちろんうれしいです。そして、来シーズンはスタートから競争力を発揮できればと思います。チャンピオンシップ獲得を目指して戦いたいと思っていますし、そのためには序盤から強さがなければなりません。そういう意味では、今日はいい位置にいると思います。チーム、そしてホンダの全員が、一年を通じて本当に懸命に取り組み、マシンを向上させてくれました。これからのオフシーズンに向けてとても励みになる結果ですし、今夜はみんなそれぞれ祝福気分に浸ってほしいと思います」
アレクサンダー・アルボン(レッドブル)
「結果には満足していますし、あと数周レースが長ければルイス(ハミルトン)をパスして表彰台に立てたと思います。スティントの最初からタイヤをマネージメントしたのですが、レース終盤でみんなタイムが落ち始めても十分なタイヤライフが残っていたので、少し大事にいき過ぎたのかもしれません。今週末はマシンの感触がとてもよく、F1に来てから一番だったかもしれません。レース前には大きなプレッシャーを感じていましたが、自分のパフォーマンスに集中することのみが目標でしたし、自分にできる最高の仕事をしようと思っていたので、その中でこのような結果を残せたことを誇りに思います。いろいろな外野の声をシャットアウトして成長を続け、自分の強さをみんなに証明できたのは、とてもいい気分です。僕らはチームとして決してあきらめませんでした。ファクトリーの全員から大きなサポートを受けてきましたし、エンジニアたちとマシンを向上させるために懸命に取り組んできました」
ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
「8位フィニッシュはとてもうれしいです。激しいレースになり、かなりの数のバトルで、オーバーテイクも多くありました。全体的には、楽なレースウイークではなく、マシンの感触もよくなかったのですが、レースではなんとかいい形にすることができました。シーズン最後の戦いでチームへさらなるポイントを持ち帰れて本当にうれしいです。今季のチームみんなに心から感謝を伝えたいです。全員と仕事ができたことが本当にうれしかったですし、全領域で大きな進歩を果たし、中団でしっかりと戦えるようになったと思います。今は、少しだけ僕らの初勝利や今季の成果を喜ぶ時間を過ごします。そして、来年に向けて、さらに強くなって戻れるようにバッテリーをフル充電したら、さらに力強いパフォーマンスができるように取り組んでいきます」
ダニール・クビアト(アルファタウリ)
「いい結果でシーズンを終えたいと思っていたので、フラストレーションの溜まる展開でした。ヴェッテル選手の後方に連なるDRSトレイン状態の中で大きくタイムロスしてしまいました。レースのカギは最初のスティントにあり、ソフトタイヤのデグラデーションがリアに出ると想定していたのに、フロントタイヤが終わってアンダーステアが出てしまい、結果を左右する位置にいたマシンの後ろへポジションを落としてしまいました。ペースはあったので、ポイント圏外でフィニッシュするのは残念ですが挽回するのは厳しかったです。シーズン全体はとてもよく、いい結果を出せたレースもありましたし、もっとポイントを獲得できたはずのレースもありました。ただ、どういうわけか、僕にそのチャンスは訪れませんでした。こういう結果になるときもありますが、激戦のシーズンをともに戦ってくれたチームのみんなに感謝したいと思います」
タイヤを供給するピレリは「レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、10周目のセーフティカーのタイミングを使ったミディアムからハードへの1ストップで勝利しました。第2スティントでハードを使う1ストップ戦略を11人のドライバーが選択、ハードタイヤは45周を問題なくクリアしました。結果的に長い最初のスティントを想定してハードタイヤでスタートしたドライバーには向いていませんでした。ルノーのリカルドはハードタイヤでスタートして39周を走り、ミディアムタイヤでファステストラップを記録して7位に入りました」と分析している。
2021年のF1グランプリは、現時点では3月21日、オーストラリアGPで開幕する予定となっている。
2020年 F1第17戦アブダビGP 決勝結果
優勝 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)55周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+15.976s
3位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+18.415s
4位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +19.987s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+60.729s
6位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+65.662s
7位 3 D.リカルド(ルノー)+73.748s
8位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +89.718s
9位 31 E.オコン(ルノー) +101.069s
10位18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス) +102.738s
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1周
2020年 F1ドライバーズランキング(最終結果)
1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)347
2位 V.ボッタス(メルセデスAMG)223
3位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)214
4位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)125
5位 D.リカルド(ルノー)119
6位 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)105
7位 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)105
8位 C.ルクレール(フェラーリ)98
9位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)97
10位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)75
11位 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)75
12位 E.オコン(ルノー)62
13位 S.ヴェッテル(フェラーリ)33
14位 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)32
15位 N.ヒュルケンベルグ(レーシングポイント・メルセデス)10
16位 K.ライコネン(アルファロメオ・フェラーリ)4
17位 A.ジョビナッティ(アルファロメオ・フェラーリ)4
18位 G.ラッセル(ウイリアムズ・メルセデス/メルセデスAMG)3
19位 R.グロージャン(ハース・フェラーリ)2
20位 K.マグヌッセン(ハース・フェラーリ)1
21位 N.ラティフィ(ウイリアムズ・メルセデス)0
22位 J.エイトケン(ウイリアムズ・メルセデス)0
23位 P.フィティパルディ(ハース・フェラーリ)0
2020年 F1コンストラクターズランキング(最終結果)
1位 メルセデスAMG 573
2位 レッドブル・ホンダ 319
3位 レーシングポイント・メルセデス202
4位 マクラーレン・メルセデス195
5位 ルノー 181
6位 フェラーリ 131
7位 アルファタウリ・ホンダ 107
8位 アルファロメオ・フェラーリ 8
9位 ハース・フェラーリ 3
10位 ウイリアムズ・メルセデス 0
2021年 F1暫定エントリーリスト
●メルセデスAMG
L.ハミルトン/V.ボッタス
●レッドブル
M.フェルスタッペン/未定
●アストンマーティンBWT
S.ヴェッテル/L.ストロール
●マクラーレン
D.リカルド/L.ノリス
●アルピーヌ
F.アロンソ/E.オコン
●フェラーリ
C.ルクレール/C.サインツ
●アルファタウリ
P.ガスリー/未定
●アルファロメオ
K.ライコネン/A.ジョビナッツィ
●ハース
N.マゼピン/M.シューマッハー
●ウイリアムズ
G.ラッセル/N.ラティフィ
2021年 F1暫定スケジュール
3月21日:オーストラリア
3月28日:バーレーン
4月11日:中国
5月9日:スペイン
5月23日:モナコ
6月6日:アゼルバイジャン
6月13日:カナダ
6月27日:フランス
7月4日:オーストリア
7月18日:イギリス
8月1日:ハンガリー
8月29日:ベルギー
9月5日:オランダ
9月12日:イタリア
9月26日:ロシア
10月3日:シンガポール
10月10日:日本
10月24日:アメリカ
10月31日:メキシコ
11月14日:ブラジル
11月28日:サウジアラビア
12月5日:アブダビ
[ アルバム : 2020年F1第17戦最終戦アブダビGP 決勝 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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