AWDのほうが乗り心地が良いクルマも!
かつて、同じクルマの2駆と4駆を比較した場合、2駆のほうが乗り心地がよい、静かに走る……というケースがままあった。しかし今では駆動方式によって乗り心地や車内の静かさが大きく異なることはまずなくなったと言っていい。SUV人気もあって自動車メーカーは、FFはもちろん、AWDモデルでも快適性や静粛性にまったく手を抜いていないからでもある。
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ところで、SUVのAWDというと、悪路の走破性に最大のメリットがあると感じているかも知れない。たしかに2輪駆動より4輪駆動のほうが悪路に向いているのは確か。が、じつは、最近のAWDモデルには、走破性以外にも、大きなメリットがあったりする。
その一例が、なんと乗り心地である。新型ヴェゼルのFFとAWDを乗り比べてみると、明らかにAWDのほうが乗り心地がよい。AWDのほうが、車両重量が増し、よりしっとり重厚な乗り心地を実現できる……というクルマもあるにはある。トヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーがそうで、FFモデルなら16インチタイヤを履くグレードの乗り心地がベター。でも、17インチタイヤ&ホイールのカッコ良さは譲れない……場合、17インチタイヤ×4WDを選べば、重量増によって、17インチタイヤ特有の乗り心地の硬さも緩和され、乗り心地にも満足できるというわけだ。
日本のSUVブームの火付け役ともなったトヨタ・ハリアーの最新モデルも似たような傾向だ。たとえば、開発陣にとってイチオシであろうHVの19インチ大径タイヤ装着グレードの乗り心地は、ロードノイズは見事に抑えられているものの、けっこう固め。タイトでスポーティな乗り味を好むユーザーに向いている印象だ。
一方、18インチタイヤ装着車になれば、乗り心地面で優位に立つことは間違いないのだが、19インチと違って専用開発タイヤではないため、荒れた路面でのロードノイズの発生が、そもそも静かなハリアーHVの快適感に水を差すこともあったりする(良路では静か)。で、専用開発タイヤであり、見た目もカッコいい19インチタイヤ装着グレードのFFと4WDを比べると、足まわりに大きな違いがないにもかかわらず、想像どおり、HV Z 19インチタイヤ装着車の4WDの乗り心地が(重量増などにより)よりよかったりするのである。
が、新型ヴェゼルの場合はちょっと事情が違う。AWDモデルのほうが、乗り心地面だけを見れば圧倒的にいいのだが(FFでも先代モデルより乗り心地は圧倒的にいい)、それは決して駆動方式による重量増だけが理由ではない。じつは、AWDの足まわりを、あえてFFモデルよりコンフォート寄りにセッティングしているからなのである。本題とは逸れるけれど、新型ヴェゼルの筆者のお薦めグレードがe:HEV PLayではなく、e:HEV Zなのは、そのAWDが選べるからにほかならない(PLayはFFのみ)。
昭和臭漂う、4駆より2駆のほうが、乗り心地、静粛性で勝る、という古き先入観は、もはや捨てたほうが良い。
また、実用面でも2駆より4駆のほうがよいこともあるのだから、これいかに。
ラゲッジは広さだけでなく段差にも注目!
たとえば、ラゲッジルームの使い勝手である。たしかに、後輪を駆動しないFFのほうが、ラゲッジフロアを低くすることができ、ラゲッジルームの容量が、4駆より2駆のほうがわずかとはいえ、増えているケースが一般的だ。しかし、実際の使い勝手面では、ラゲッジルームの開口部に大きな段差がないほうが、重い荷物の出し入れ、あるいは大型犬などのペットの乗降(足を引っかけない)で有利なことは明白。
この点についても、じつは2駆より4駆のほうが、うれしかったりする。そう、先代ヴェゼルを例に挙げれば、FFは開口部に約50mmの段差があり、敷居からフロアが一段下がっている。が、AWDモデルは駆動方式によってラゲッジフロアがいくぶん上がっているため、開口部の段差はなく(掃き出しフロア)、スーツケースやゴルフバッグなどの重量物も、スルスルと出し入れできるから使い勝手がいい(腰にもいいし、掃除もしやすい!?)。
トヨタ・プリウスにしても、FFでは約100mm!! もの段差があるのに対して4WDモデルは、フロアが上がっているぶん、約45mmにまで段差が減少。ラゲッジルームの容量はやや減少するものの、段差がほぼないに等しく使えるのである(先代プリウスのラゲッジスペース開口部に段差はなかった……)。
そうそう、悪路、オフロードでの走破性は別にして、オンロードでは4駆より2駆のほうが軽快に走る、曲がりやすい……というイメージも、正確ではない。トヨタRAV4を例に挙げれば、トヨタ最新のGA-Kプラットフォームのよさもさることながら、もっとも硬派なモデルと言える、
最近では「オフロードパッケージ」なる特別仕様車もある、2リッターガソリンエンジン、4WD限定のアドベンチャーグレードには、新型RAV4のために開発された「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」が採用されている。後輪左右のトルクを別々に制御(0~100)するトルクベクタリングコントロールと、4WDを必要としない場面で後輪への動力伝達を切り離し、燃費を向上させるディスコネクト機構を備えた4WDシステムで、悪路、オフロードでの走破性のすごさはもちろん、オンロードでもじつに曲がりやすく、痛快に走れるように仕立てられているのだからびっくりだ。
具体的に説明すれば、山道などのオンロードのカーブで驚かされるのは、後輪左右のトルクを別々に制御する「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」の威力で(とくにスポーツモードで顕著)、たとえば左カーブなら、右後輪側から曲りを積極的にアシスト。ステアリングを切った方向に、吸い込まれるようにグイグイと曲がってくれるのだ。しかも車体の姿勢変化は最小限。本格SUVに乗っていることをすっかり忘れさせてくれるほど走りは上質で、運転する楽しささえ満点の、オンオフ二刀流の、走破性だけじゃない”できる”4WDなのである。
というように、4駆、AWD、4WDだからこそ、乗り心地や使い勝手、オンロードでの走行面などでメリットありのクルマも、今は少なくないのである。ただし、すべてのクルマの2駆と4駆がそうした関係にあるわけではないので、あしからず。
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