北米の日産「ローグ」は2020年10 月に新型へ、中国のエクストレイルも2021年4月に新型が発表され、三菱の「アウトランダーPHEV」も、2021年12月にすでに発売が開始となるなど、姉妹車は続々とデビューを迎えるなか、日本の新型エクストレイルは、なかなか姿を見せてくれない。
今年中に発売との情報もあるが、すでに待ちくたびれたを通り越して忘れ去られている感もあり、また、これだけ姉妹車が登場している中で、e-POWER搭載などのありきたりな内容では、せっかく新型が登場しても「なんのために待たされたのか」という印象すら受けてしまいかねない。
え!? e-POWERじゃなくて!!? 日産 ジュークハイブリッド電撃発表!! 日本導入はあるか?
そこで!! 日本向けエクストレイルはこうあってほしい、ということを3つ挙げてみた。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
e-POWERターボだけでは、驚きが少なすぎる
日本向けの新型エクストレイルのパワートレインがe-POWERとなることはほぼ確定事項。2020年2月に欧州発表となった新型キャシュカイに搭載される「e-POWERターボ(1.5L VCターボを発電エンジンとした新e-POWER)」が搭載されるとみられる。
だが、欧州キャシュカイのパワートレインも、いまだに1.3リッターガソリンターボのみ。エクストレイルにe-POWERが搭載されることが発表された中国でも、現時点はVCターボモデルのみ販売で、「エクストレイルe-POWER」はまだ登場していない。
ここまで登場が遅れている原因は、半導体不足などのコロナ禍による影響が大きいのだろう。とはいえ、ここまで待たされると「出遅れ」を挽回するビッグトピックが欲しいところ。そこで国内待望の新型エクストレイルには、e-POWERターボ以外に、以下で紹介するようなビッグトピックを盛り込むことを期待したい。
北米や中国では発表・発売されている新型エクストレイルのデザイン。大きく変わることはないはずだ
「新型エクストレイルPHEV NISMO」のようなバリエーションの早期配備を!!
現行エクストレイルには、意外とバリエーションが多い。標準モデルに加え、NISMO、AUTECHをはじめとして、マイチェンの都度設定される特別バージョンがあり、現在のラインアップだと、エクステリアのカスタムを中心とした、「エクストリーマーX」という特別仕様車が用意されている。こうしたバリエーションを、新型エクストレイル日本デビューと同時にずらっとラインアップさせることができたら、大いに話題になるだろう。
また、現行モデルのパワートレインは、2.0Lガソリンと、2.5L ハイブリッドの2種類だが、新型モデルには、アウトランダーPHEVとの共用で、プラグインハイブリッドを期待したい。全長全幅を伸ばして巨大化した新型アウトランダーPHEVに対し、オーバーハングを削って全長を短く(マイナス約40mm)した新型エクストレイルに搭載されれば、運動性能が高い、優秀なSUVになることが期待できる。
新型エクストレイルPHEVが登場し、そのNISMO仕様が登場することがあれば、最も速いPHEVの称号をかけ、アウトランダーPHEV、そしてRAV4PHVとの熱い戦いも期待できる。こういったストーリーは、ファンならずとも胸を熱くさせてくれるものがあり、話題作りには最適だ。
<参考>
新型アウトランダーPHEV 全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm、ホイールベース:2705mm
先代アウトランダーPHEV 全長×全幅×全高:4695×1800×1710mm、ホイールベース:2670mm
新型エクストレイル 全長×全幅×全高:4648×1839×1722mm、ホイールベース:2705mm
現行エクストレイル 全長×全幅×全高:4690×1820×1730mm、ホイールベース:2705mm
レース参加など、パフォーマンスをアピールできる場を!!
エクストレイルはこれまで、インテリジェント4×4といった独自の4WD制御をアピールしてきたが、どれ程優れているものか(特に対他メーカー)、認知が進んでいないように感じる。
おそらく新型エクストレイルにも、新たなe-POWER 4WDの新制御が盛り込まれ、「オールマイティな4WDシステム」のようにアピールするのだろうが、どのメーカーも同じようなアピールをする中で、ユーザー側からすれば、違いがわかりづらい(もちろんちゃんと中身を理解すれば違いはわかるのだが、知るために労力をかけるユーザーは多くない)。
そんななかでわかりやすく実力を示すには、やはりパフォーマンスを最大限アピールできるレースに参加することだろう。
三菱は、2021年5月11日に行われた決算発表会において、三菱のワークスチーム「ラリーアート」を復活させることを明言している。その予告から半年後に行われた東京オートサロン2022において、新型アウトランダーPHEVをベースとした「ビジョン・ラリーアート・コンセプト」が発表となった。前後バンパー、オーバーフェンダー、サイドパネルといったライトチューンではあったが、かつて国際ラリーで活躍したラリーアートの復活は、ファンにとっては胸アツの展開。やはり、レース活動をしている自動車メーカーには、感情移入しやすくもなるものだ。
ちなみに、昨今の国際ラリー選手権(WRC)では、フォードがプーマというクロスオーバーSUVで参戦している。トヨタやヒョンデ(HYUNDAI)など他メーカーがハッチバックボディで参戦する中でも、技術的にはやってやれないことはないのだ。
WRCへ新型エクストレイルが参戦することはあり得ないだろうが、ラリーアートが今後何らかのチャレンジをするなかで、日産が指をくわえてみているなんてのはもったいない。例えばフォーミュラEのオフロード版、「エクストリームE」への電撃参戦など、ぜひ見てみたいものだ。
最低でも現状維持の価格
最後に、我々ユーザーにとってもっとも重要なのは、やはり車両価格だ。エクストレイル属する国産ミドルクラス4WD SUVは、RAV4、ハリアー、CR-V、フォレスター、CX-5、アウトランダーPHEVなどで、車両価格は概ね300万円から450万円、プラグインハイブリッド車などは500万円強、というのがおおよその価格帯だ。
現行エクストレイルは、このミドルクラス4WD SUVの中でも格別に安い。2.0L直4ガソリンの「20S Vセレクション(4WD)」が税込248万円、「20S HYBRID(4WD)」が税込297万円という「超」破格でラインアップしている。もちろん、自慢のインテリジェント4×4は標準搭載だ。
遮音ガラス無し、ハンドル上にはスイッチ一切無し、足踏みPKB(標準はE-PKB)になるなど、売れ筋グレードと比べると寂しい装備内容ではあるが、それでもミドルクラスSUVをこの価格で提供できるのは驚異的。ちなみに鉄チンホイールではなく、17インチアルミホイール仕様となる。
もちろんこの安グレードが販売の中心ではないのだが、コストダウンを突き詰めていけば、ここまで安くまとめられるというのは凄いことだ。新型エクストレイルは、e-POWER化によって価格上昇は免れないだろうが、現行エクストレイルにある、2.5L直4ハイブリッドより安くなる可能性はある。最安エントリーグレードを270万円程度に抑え、売れ筋となる中間グレードを310万円~320万円程度に抑えてほしい。
一刻も早いフルモデルチェンジが必要
SUVの流行が続いているなか、国内日産のSUVは、キックスとエクストレイルのみ。エクストレイルはかつて、「セレナ」「ノート」とともに、日産を支える3本柱のひとつであったが、既に他メーカー製のSUVに対し、価格以外には魅力がない状況。一刻も早いフルモデルチェンジが必要だ。
どんなに新型フェアレディZや、今春に登場とされている軽バッテリーEVが話題になろうとも、新型エクストレイルの成功なくして、国内日産の完全復活はありえない。絶対に負けられない戦いであることは日産自身がもっとも理解しているはず。必ずなんらかの驚きを用意してくれていることだろう。日本向け新型エクストレイルの登場が楽しみだ。
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