トヨタからF1ドライバーを。そんな動きが本格的に加速してきた。
宮田莉朋がARTに移籍してFIA F2での2シーズン目を戦うことが既に発表されているが、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の2025年体制発表では、中村仁がフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権(FRECA)とフォーミュラ・リージョナル中東選手権(FRMEC)に参戦することが発表された。チームは共にトップチームの一角であるR-ace GPだ。
■国内カテゴリー“2冠”を引っ提げF2挑戦も、苦しむ宮田莉朋。欧州での経験値不足は想像以上に大きい?「そこが一番難しい」と中嶋一貴
トヨタがF1パドックに姿を現し、ハースとの提携を発表して現在に至るまでの約1年強の間、WEC(世界耐久選手権)王者の平川亮がマクラーレンF1のリザーブドライバーになったり、スーパーフォーミュラ、スーパーGTで王者になった宮田がF2に挑戦したりと、TGRの有力ドライバーがF1パドックに送り込まれてきたが、その動きはやや性急な印象を受けた。しかしついに、F1へと続くピラミッドの下位層に位置するカテゴリーに若手ドライバーが送り込まれたのだ。これはF1でも通用するドライバーを本腰を入れてしっかり育成しようというというTGRの意図が感じられる。
フォーミュラ・リージョナルは、F3とF4の中間に位置付けられるカテゴリー。その欧州選手権は2019年にスタートし、2021年にフォーミュラ・ルノー・ユーロカップと統合されてからは台数が急増。今ではF4を卒業したほとんどのドライバーがFRECAを経由してF3にステップアップしており、2025年にF1デビューを果たすアンドレア・キミ・アントネッリのようにF3をすっ飛ばしてF4→FRECA→F2→F1とのし上がるルートすら生まれた。F3やF2よりも走行時間が多い点も、FRECAが重宝されている一因かもしれない。
そんなFRECA(と年初に開催されるFRMEC)に参戦する中村は、2006年生まれの18歳。2024年はスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)とスーパーGT・GT300クラスにステップアップし、SFライツではランキング4位を獲得した。中村は同年中から欧州のサーキットでフォーミュラ・リージョナル車両に乗って走行経験を積み、準備を進めてきた。
FRECA参戦への意気込みを、中村はこう語る。
「僕としては、もっと先に大きな目標がありますが、まずは1個1個目の前のことをこなしていくことが大事だと思うので、そこは日本でやっていることと変わりません」
「4輪レースを始めてから3年が経ちましたが、活かせるところは活かしつつ、(日本と)違うところは対応していきたいです。正直、英語も得意じゃないですが、そこも含めてチームの皆さんとしっかりコミュニケーションを取れるようにしつつ、さらに成長できればと思っています」
「しっかり上位を走って目立つ走りができればと思います。素晴らしいチームで走らせてもらえるので当然結果を追い求める必要もありますが、自分の成長にフォーカスしつつ、目立つ走りがしたいですね」
ちなみに、既にヨーロッパのサーキットでテスト走行をこなしている中村だが、ヨーロッパのサーキットは日本のサーキットと違った走らせ方が要求されることもあるのだという。
「日本のトラックだと、基本的には(イン側にある)縁石の外側を走ると思いますが、ヨーロッパはフォーミュラであっても低い縁石をショートカットしていくようなサーキットが多いです。今のところポールリカール、ミサノ、ムジェロを走りましたが、トラックリミットがなく縁石にバンバン乗るケースも多いです」
「そういった縁石の使い方がまだまだかなと思います。あっちのドライバーはアグレッシブですから、そこは走りの課題ですかね」
幼少期からクルマ好きで、TV番組の『SUPER GT+』を通してレースの虜になったという中村。自身のルーツは箱車だが、この1年でトヨタドライバーとF1との距離が急速に縮まることになったことについては「このような新しい道を切り開いてくれた関係者の皆様には感謝しかない。フォーミュラでも箱車でも行けるところまで行くという目標は変わらないので、全力で取り組んでいく」と語った。
インタビュー冒頭で語っていた、「もっと先にある大きな目標」とは何なのか? 最後に尋ねると、中村は笑顔でこう語った。
「ビッグになります!(笑)」
「誰かの目標になれるというのが、僕のレーシングドライバーとしての目標です。形を問わず、誰かの目標や憧れになれればいいなと思っています」
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みんなのコメント
かたや未だ中途半端な対応のホンダ。
今回の角田クンのシート争いみてたら、F1目指す若者はどちらのバックアップを望むかな。