1.6L 3気筒ターボでハイパワーな2.0ターボ勢に挑む
2020年1月、東京オートサロンにおける衝撃のデビューから10か月。ようやく公道を走り始めた「GRヤリス」ですが、いよいよラリーシーンへの参戦がアナウンスされました。
舞台となるのは11月27から開催される全日本ラリー第3選。エントリーしたのは名門キャロッセのワークスチームであるクスコレーシング、ドライバーは柳澤宏至 選手、コ・ドライバーは保井隆宏 選手、マシン名はアドバン クスコ ヤリス GR4と発表されました。
現在の全日本ラリーのクラス分けではGRヤリスは最高峰のJN-1クラスにエントリーすることになります。ライバルは2.0Lターボを積むハイパワー4WDの「スバル WRX」や「三菱 ランサーエボリューションX」といったモデル。GRヤリスの心臓部は1.6L 3気筒ターボですから、最新モデルだからといって有利といえるわけではありません。
最高出力&最大トルクの数値に加え、熟成度も不安
しかも、ライバルたちのマシンはラリーカーとして何年も熟成してきたもので、キャロッセがロールケージやサスペンションを開発したばかりのGRヤリスはその面でも不利といえます。そもそもGRヤリスの1.6L 3気筒ターボエンジンは、WRCマシンの1.6Lターボとはまったく関係ありません。WRCマシンはGRE(グローバルレースエンジン)としてTMGが開発した1.6L 4気筒ターボだからです。排気量こそ近い数字ですが、シリンダー数からして異なる、まったく違う生い立ちのエンジンなのです。
GRヤリスが積むターボエンジンの最高出力はカタログスペックで200kW(272PS)、最大トルクは370Nmとなっています。この数値はBセグメントのハッチバック車としては驚異的なものといえますが、前述した全日本ラリーでのライバルであるWRXのEJ20エンジンは227kW(308PS)、422Nmというスペックを誇っていますから、GRヤリスが見劣りするのは否めません。
ある意味でGRヤリスの実力を知る絶好の機会
とはいえ、柳澤宏至/保井隆宏の両選手は、いずれも全日本ラリーでは実績のあるドライバー、コ・ドライバーであり、とくに柳澤選手はそのクールでインテリジェンスあふれる雰囲気からは想像できないほどのアグレッシブな走りで知られています。デビュー戦かつ、排気量でライバルに不利という条件であればこそ、燃えるタイプのドライバーであり、ある意味でGRヤリスのパフォーマンスを知るには最高の条件が揃ったともいえます。
これまでも車両重量やエンジン、駆動系のポテンシャルなどGRヤリスのモータースポーツにおけるパフォーマンスについては疑問を投げかける声もありました。はたして、クスコレーシングのGRヤリスはどのような走りを見せるのでしょうか。
総合成績だけでなく、スペシャルステージごとのタイムなどを比較することで、全日本ラリーというレギュレーション下におけるGRヤリスの可能性が見えてくるはずです。トヨタがWRCテクノロジーのフィードバックで生み出したというGRヤリスの走りに注目です。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※画像提供:キャロッセ
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