2Lターボエンジンの勢いが凄い。国産車・輸入車を問わず、メーカーの伝統的なフラッグシップスポーツの積むエンジンといえば大排気量NAか3L以上のターボというのが定石だったが、それが変わってきている。
特に注目したいのが今年7月の英国で開催のグッドウッドで初公開されたメルセデスベンツAMG A45 4MATIC+(トップの写真)。フロントマスクにメルセデスベンツのコンパクトクラスとして初の「AMGパナメリカーナグリル」を採用するこのモデル、なんといってもエンジンが凄すぎる。
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このM139型直4、2Lターボはなんと最高出力392ps/最大トルク48.9kgmを発揮し、さらにその上に位置する「Sバージョン」は、最高出力421ps/最大トルク51.0kgmまで向上する。リッター当たりの出力が150psの300psエンジンでもかなりのパフォーマンス系ユニットなのに210ps超え!
ということで本企画では2Lターボにスポットを当ててみたい。
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※本稿は2019年9月のものです
文:永田 恵一、国沢 光宏/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年10月26日号
■国産初のセド/グロからインプvsランエボまで これまでの2Lターボ列伝
(TEXT/永田恵一)
現在は数えるくらいしかないが、かつて日本車は2Lターボ王国だった。その先駆けとなったのが、日産が日本車初のターボエンジンとして1979年に430型セドリック&グロリアに搭載した直6の「L20ET」(グロス値で145ps&21.0kgm)である。
●日産430型 セドリック/グロリア
1979年に登場した430型の5代目セドリック、6代目グロリアに初の日本車ターボとして直6、2LターボのL20ET型エンジンが採用された。最高出力145ps、最大トルクは21.0kgmと当時のグロス値としても控えめだったが、当時の2.6L NAを超える数値だった
日本が2Lターボ王国だった背景には、昭和の時代まで、日本の自動車税制が排気量2L以上を含む3ナンバー車では、5ナンバー車の倍以上になる、というものがあった。
そのため「5ナンバーでなんとか3L級の動力性能が欲しい」というのが、高級な6気筒エンジンの2Lターボが多数あった理由である。
「L20ET」はセドリック&グロリアの後、スカイラインなどの直6エンジンを積む日産車に搭載され、トヨタも1980年に日産のL型に相当するM型エンジンの2Lターボとなる「M-TEU」を開発し、クラウンなどに搭載。
その後トヨタは当時の日本で需要の多かった2L直6に特化した「1G型」を開発し、「1G」にはクラウンに搭載されたスーパーチャージャーと6代目マークII 3兄弟などに搭載されたツインターボもあった。日産もV6の「VG型」、「L型」の後継となる直6の「RB型」に当然のようにターボを設定。
しかし、「2Lの6気筒+ターボ」というのはそもそも1気筒あたりの排気量が少ないため、低速トルクが薄くなり今でいう「ドッカンターボ」であまりフィーリングのいいものではなく、無理のある存在だったのは否めなかった。
そのため、平成に入り自動車税が改正された3ナンバー車が買いやすくなると、徐々に姿を消していった。
2Lの直4ターボは6代目スカイラインのRSに搭載された「FJ20ET」(1983年。DOHCで、スペックはグロス値で190ps&23.0kgm)あたりから注目され始めた。
●日産R30型 スカイラインRSターボ
直4、2LターボのFJ20を積んだ6代目のR30型スカイラインは1984年にインタークーラー採用車、2000ターボインタークーラーRSターボCを追加。グロス値ながら205ps/25.0kgmを発揮するモデルで、精悍な外観と相まっていまだに根強い人気を誇っている
「FJ20」は短命だったものの、昭和のうちにトヨタからはセリカGT-FOURなどに搭載された「3S-GTE」、三菱からはスタリオンの「G63型」をDOHC化し、ギャランVR-4、I~IXまでのランエボに搭載した「4G63」、平成初めには現代も続くスバルの「EJ20」、日産の「SR20」が登場した。
●トヨタST165型 セリカGT-FOUR
4代目セリカデビューの翌年1986年に追加設定されたのが直4、2Lターボの3S-GTEを搭載したセリカGT-FOUR。最高出力165ps、最大トルク24.5kgmを発揮したこのエンジンは5代目セリカでは235ps、6代目セリカでは255ps、3代目カルディナでは260㎰に
特にトヨタ、三菱、スバルのものは3社がWRCに参戦していたこともありピークパワーだけでなく、パワーバンドも広がるよう実践で鍛えられていたこともあり、急速なスピードで進化。
特に三菱とスバルは1996年に2Lターボで当時の自主規制いっぱいの280psに達したほどだった。
●日産N14型 パルサーGTI-R
WRCへの参戦を前提に設計され、1990年に登場した4代目パルサーの最強モデルがこのGTI-R。直4、2LターボのSR20DETは230ps/29.0kgmを発揮した。ほぼ同時期に販売されたFRモデルの5代目シルビアKsと180SXは205ps/28.0kgm仕様だった
2000年代に入ると排ガス規制の強化もあり、2Lにかぎらずターボ車自体が激減するのだが、ダウンサイジングターボというコンセプトの登場で再びターボ車は注目され、現在日本車ではトヨタ、ホンダ、スバルが2Lターボで頑張っている。
●三菱ランエボvsスバル インプレッサWRX STI
1992年の初代インプレッサWRXと初代ランエボから始まった三菱とスバルの2Lターボ対決は、エボXの販売終了で終焉
■メーカーの動向は?? 2Lターボは今後どうなる!?
(TEXT/国沢光宏)
改めて考えてみたら私が所有している「エンジンで動くクルマ」はすべて4気筒の2Lターボを搭載している。
WRX S4の場合、スポーツユニットとして使われており300ps。先代BMW330eはPHVのパワーユニットで184ps。ボルボXC60もガソリンと共用ブロック使うディーゼルの190psといった具合。今や欧州の主力エンジンを見ると、エコからハイパワーまで2Lターボです。
なんで2Lターボなのだろう? こらもう、いろんな自動車メーカーのエンジニアに聞いたので自信を持って答えたい。「バランスがいいから」であります。
説明するまでもなく、燃費規制のクリアは最優先課題。6気筒エンジンを搭載したらエンジン内部のフリクションが大きくなり熱効率が落ちるうえ、軽量化しようとしても4気筒に絶対かなわない。
これからの乗用スポーツはすべて2Lターボになる!?
絶対的な排気量だけれど、大きくすると低負荷時に燃費を稼ぐことが難しくなる。かといって小さければブースト圧かかってない時のドライバビリティに課題を抱えてしまう。
また、クルマの質感に大きな影響を与えるエンジン振動は、排気量が小さいほど好ましい。といったあたりを総合して評価すると、最もバランスいいのは2Lということになるという。
技術の進化も大きい! 素材や形状、新しい制御などによりターボの効率がドンドン上がってきた。
ターボの黎明期、2Lで200ps出そうとしたら、いわゆる「どっかんターボ」になってしまったが、今や200ps馬力くらいならターボラグをほとんど感じさせない。
WRX S4に搭載されている300psですら、乗っていてターボラグでイラつくことなどありません。
そればかりかボルボの2L 320psに代表される最新のハイパワーユニットの大半が、中高回転域でターボ。低回転域はレスポンス遅れのないスーパーチャージャーを組み合わせて使うことにより、大排気量エンジンと同じようなドライバビリティを実現している。
いや、むしろ2Lで300psを超えるエンジンの大半が凝った技術を採用しているため、むしろターボラグを感じないほど。
はたまた330eの如くモーターと組み合わせるケースも増えてきた。アクセル踏んだ瞬間はモーターに頑張ってもらい加速。その間、充分なブーストがかかったターボエンジンが目覚めさせる、といった具合。
モーターと組み合わせているターボに乗ると、ターボラグという概念を忘れてしまいそうになります。遠からずモーターと組み合わせて使うのがスタンダードになる?
今後どうなるか? 2021年秋から極端に厳しくなる騒音&燃費規制をクリアさせようとすれば、スポーツモデル(一部を除く)といえどもエンジンだけで走らせることなどできなくなるだろう。
冒頭でも紹介した新型メルセデスAMG A45。M139型直4、2Lターボは421ps、トルクも51.1kgmと超強力!
6気筒エンジンの今後はかぎりなく厳しい。考えてみてほしい。最新の技術で2L 4気筒ターボを作れば400psだって可能。これに200psのモーターを組み合わせることで、600ps近くなります。
となれば大排気量6気筒など不要。はたまたアイドリングや低速走行はモーターで走るようになるため、小さい排気量も意味なし。最も効率のいい排気量が求められるようになります。
それが2L 4気筒ターボなんだと思う。おそらく車重にして1500kg以上の乗用車やスポーツモデルのパワーユニットは、すべて2Lになっていくと私は予想している。
それ以下の車重のクルマは1500cc以下の3気筒が効率からするとベスト。
BMWやボルボのように効率いい2L 4気筒を作り、小さいクルマには1気筒減らした1.5L 3気筒でカバーするというのが今後の流れになっていくと考えます。
ちなみにアメリカも4気筒ターボが主流になりそうながら、排気量はかぎりなく3Lに近い。面白いですね。
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