性能と豪華さ 理想の条件が揃ったベントレー
1930年代の英国。一財を築いた親の息子として生まれたら、速くて高品質なクルマが欲しくなる。ロールス・ロイスは真っ当な選択だろう。ラゴンダは、ちょっと斬新。アルヴィスやサンビームも優秀ではあるが、中流階級的といえた。
【画像】90年前の富豪の理想 ベントレー 3 1/2リッターと4 1/4リッター 現行モデルと限定のバトゥールも 全123枚
そこで光が当たるのが、名門ベントレー。1933年に新しいモデルが発表され、性能と豪華さを両立。コーチビルド・ボディで徹底的な差別化も可能という、理想的な条件が揃っていた。
庶民が住む集合住宅なら12戸分を用意できる金額でありながら、ベントレー 3 1/2リッターと、その改良版の4 1/4リッターは、驚くほどの成功を残した。6年間に、2400台以上が販売された。
第二次大戦で世界が混乱するまで、実業家や政治家、俳優、貴族、パイロットやレーシングドライバーから選ばれた。その親会社だったのは、名門ロールス・ロイスだ。
世界恐慌で経営不振に陥ったベントレーは、航空機エンジンで業績を伸ばしていたネイピアと合併協議を進めていた。有能な技術者、ウォルター・オーウェン・ベントレー氏は、ネイピア・ベントレーのもとで新モデルを提供する可能性があった。
ロールス・ロイスはその噂を知り危機感を抱き、英国中央株式信託という架空会社を立ち上げ、買収へ参画。ネイピア側が示した、12万5256ポンドを2万ポンド上回る金額を提示し、ベントレーを傘下に収めた。
ザ・サイレント・スポーツカー
その新体制で提案されたのが、ひと回り小さいロールス・ロイス。コードネーム「ペレグリン」という試作車が作られたが、スーパーチャージャーで過給される2.4Lエンジンは、期待通りの結果を発揮しなかったようだ。
代わりに選ばれたのが、ロールス・ロイス20/25HPで定評のあった、既存の3669cc直列6気筒。クロスフロー・シリンダーヘッドと新しいカムシャフト、軽量なピストンとツインSUキャブレターが与えられ、当時は非公表だったが、115psを発揮した。
切り替えできる2基の燃料ポンプを備え、ツインコイルで信頼性も高められていた。シャシーには、前後アクスルに半楕円リーフスプリングが組まれ、ブレーキサーボを装備。1か所の注油で、必要な足まわりの潤滑をまかなうことができた。
ラジエターは、創業初期のベントレーへ忠実なデザインを採用。サーモスタットで稼働する、シャッターも備わった。開発テストは、英国の公道やブルックランズ・サーキットだけでなく、フランスでも実施。発売直前まで調整が加えられた。
ベントレー 3 1/2リッターの最大のストロングポイントは、技術力と製造品質。リーフスプリングにはカドミウム・メッキが施され、丁寧に磨かれていた。シャシーの各コンポーネントも、美しく設計されていた。
営業部門の1人は、このモデルへ「ザ・サイレント・スポーツカー」というキャッチコピーを与えた。実際は静かではなかったし、スポーツカーでもなかった。とはいえ、当時の基準では前例がないほど洗練されていた。
発売から90年を迎えるダービー・ベントレー
ロールス・ロイスの兄弟モデルと同じく、ベントレーもボディは用意しなかった。エンジンとラジエター、ボンネット、飾りのないダッシュボードが実装された、シャシーのみの提供だった。
6年間にラインオフした殆どは、4ドアサルーンに仕立てられた。813台には、英国のコーチビルダー、パークウォード社によるスタンダード・ボディが架装された。
ほかにも、欧州全土で55社以上のコーチビルダーが、独自のボディを製造した。2シーターのスポーツカーや優雅なドロップヘッド・クーペ、アールデコ調に飾られたファストバックなどが生み出されている。
当初、ロールス・ロイスのダービー工場で生産された3 1/2リッターや4 1/4リッターは、ロールス・ベントレーと呼ばれていた。第二次大戦後、その工場は航空機エンジンの専用施設へ変更され、以降はダービー・ベントレーとマニアから呼ばれている。
1960年代に入ると、ダービー・ベントレーの価値は低下。状態を維持する余裕がないオーナーへ引き取られることも多かった。ボディのウッドフレームは腐り、ランニングギアは摩耗した。
しかし、1990年代からクラシックカーとして再評価。近年では、極めて美しいボディを載せた例なら、50万ポンド(約9250万円)で落札されることもある。とはいえ、5万ポンド(約925万円)で楽しめる例も少なくない。
現存するダービー・ベントレーの殆どは、活発に走れる状態にある。ブランドの歴史を今に伝える、時間旅行の真っ最中。1933年の発売から90年を迎える2023年は、改めて振り返るのに絶好の機会だろう。
シンプルで優雅、伸びやかなボディ
今回の5台で、ヴァンデンプラ・ボディを搭載した2ドア 4シーターのツアラーが、最も軽量で安価。1934年の価格は、1380ポンドだった。
ヴォーン・ウィーラー氏が現オーナーで、祖父は1941年に購入したという。その6年後に売却されるが、叔父が1969年に放置された状態で発見。1980年代にレストアを受け、インテリアのヤレた風合いを残しつつ、壮観なダーク・グリーンの容姿が蘇った。
ラインオフから今年で89年。走行距離は15万8000kmに達している。特徴的なラジエターや、上部が切り欠かれたサイドドア、リアのスペアタイヤまで、スタイリングはシンプルで優雅。高さが低く抑えられ、伸びやかだ。
3 1/2リッターの最初期の特徴といえるのが、ルーカス社製の小ぶりなヘッドライト。後に、大径のP100型へ置き換えられている。
ブラックとダブ・グレーのツートーンが魅惑的な2ドアサルーンは、ジェレミー・マーシャル・ロバーツ氏のダービー・ベントレー。スラップ&メイバリー社製のボディで、1934年に2台しか製造されていない。ラゲッジラックが、リアに備わる。
この時期のベントレーは、ツートーンで塗装されることが多かった。安価に取引されていた時代には、派手な色で再塗装されることも。しかし、これは落ち着いた配色で、ブラウンのインテリアとのマッチングも良い。
2009年に彼が購入した金額は4万6000ポンド。その後、電気系統のリフレッシュと、エンジンのリビルドが行われた。1950年代には、最高速記録を複数保持したドナルド・キャンベル氏が所有していたという。
この続きは、ベントレー 3 1/2リッター 90年前の富豪の理想(2)にて。
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