半分の出力で320km/hオーバー
text:Mike Duff(マイク・ダフ)
【画像】公道最速のスーパーカー【ヘネシー・ヴェノムF5とライバルを写真で見る】 全106枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
米国のヘネシーは、市販車として最高速度記録となる500km/hの達成を目指して、ヴェノムF5の空力開発を完了した。
チーフ・エンジニアのジョン・ハインリシーが率いる空力開発プログラムは2月に開始された。F5は6.6LのツインターボV8の出力が900psに制限されていたにもかかわらず、320km/hを超えた。これは、本来発揮されるべき1817psの半分だ。
次の開発段階では、夏の間にハンドリングに重点を置き、秋には加速、高速安定性、ブレーキに取り組む予定だ。ヴェノムF5は、5月22日にアメリア・アイランド・コンクール・デレガンスで一般公開される。
ハインリシーは次のように述べている。
「わたしは40年以上にわたって高性能車を開発してきましたが、ヴェノムF5に勝るものはありません。驚異的なパワーとスピードを巧みに操りながら、優れたハンドリングを持つワールドクラスのハイパーカーをお客様にお届けするというミッションに向けて、わたし達は素晴らしい前進を遂げています」
「開発プログラムのすべての部分で、今年末にお客様への納車が始まる前にヴェノムF5を最高の状態に仕上げることに焦点を当てています」
創業者兼CEOのジョン・ヘネシーによると、生産予定の24台のヴェノムF5は、ほぼすべてが販売されたとのことだ。
ヘネシーのエンジン技術を全投入
ヴェノムF5は、ヘネシー初のフル自社開発のハイパーカーだ。2018年に初めて公開されたカーボンボディのF5は、ロータス由来のシャシーではなく、自社製プラットフォームを使用することで、2011年のヴェノムGTと差別化されている。AUTOCARは以前、米国への出荷を前に、英国で初めて完全に組み立てられた車両を目撃した。
ヘネシーは、その巨大なエンジンパワーと1360kgの乾燥重量の組み合わせにより、世界最速の公道走行可能なクルマとなる可能性があるとしている。ヘネシーの予想では、0-100km/h加速が2.6秒、0-200km/h加速が4.7秒、0-300km/h加速が8.4秒となっている。
車名の「F5」は、ハリケーンの強さを示す藤田スケールの最高ランクにちなんで名付けられた。英国のKSコンポジット社製のカーボン製モノコックを採用しており、これ単体での重量はわずか86kgに抑えられている。
チューブ状のアルミニウム製サブフレームには、テキサス州のヘネシーで製造された6.6L OHVのV8エンジン「フューリー」が搭載されている。鋳鉄エンジンブロック、アルミニウム製ヘッド、鍛造コンロッドとピストン、ビレットスチール製のクランクとカムシャフトを備えている。
これに、3Dプリントで作られたコンプレッサー・ハウジングを備えたボールベアリング・ターボチャージャーを2基搭載し、最大1.58barのブーストをかけることができる。
ヘネシーは、8000rpmで発揮されるピークパワーに加えて、164.6kg-mのピークトルクを発揮し、2000rpmから8000rpmまでの間に少なくとも138kg-mのトルクを得ることができるとしている。
ジョン・ヘネシーによると、プッシュロッド・エンジンを採用した理由は、小型で低重心であることに加えて、ヘネシー・パフォーマンス・エンジニアリング社のパワー技術によるものだという。同社は、C8シボレー・コルベットのアップグレード用に、1200psのツインターボを提供している。
ヴェノムF5のパワーは、CIMA製の7速シングルクラッチ・オートマチック・トランスミッションとリミテッド・スリップ・ディファレンシャルによって後輪に伝達される。
空気抵抗とダウンフォースのバランス
市販モデルとコンセプトカーの違いは、ほとんどが空力に関するもので、ウィングやディフューザーが大きく異なる。このクラスでは珍しく、可動式のエアロパーツは備わっていない。
生産責任者のデビッド・デイビスは、過度な空気抵抗を発生させることなく、高速走行時の安定性を確保するために十分なダウンフォースを生み出すことを目指したと語っている。コンセプトで目標としていた空気抵抗係数0.33は、現在では0.39と十分な数値を確保している。
バタフライドアやハイパーカーとしては十分な居住空間を備え、インテリアがレザーとカーボントリムの組み合わせで仕上げられている点も、コンセプトカーとよく似ている。そのほかにも、リアセクション全体が1枚のカーボンでできており、CNC加工(コンピューターの数値制御による機械加工)されたベントホールを備えているなど、印象的なディテールがいくつも見られる。
その圧倒的なパフォーマンスにもかかわらず、それほど速くない速度でも運転しやすいように設計されており、サーキットだけでなく一般道にも対応している。
ダブルウィッシュボーン・サスペンションはパッシブ・ダンパーを採用しているが、バンプとリバウンドのストロークを調整することができる。また、加速重視の「ドラッグ」、究極のスピードを追求する「F5」など、5つのドライビングモードが用意されている。
最初の個体は英国で製造されたが、以降は米テキサス州で製造される。生産台数は24台限定で、価格は210万ドル(約2億2800万円)だ。
ジョン・ヘネシーはヴェノムF5について、2014年にケネディ宇宙センターで435km/hの双方向(往復)平均時速を記録したヴェノムGTよりも「かなり速くなる」と断言している。ただ、市販車としての最速記録を出して、その性能を証明したいと考えているものの、問題はNASAの滑走路の利用可能なスペースが限られていることだと述べた。
「端から端まで、芝生から沼地まで、約5.5kmです。GTは、ブレーキをかけなければならないポイントに到達した時も、まだ加速していました。F5では、理想的なコンディションであれば480km/hに近づくことができると思いますが、ブガッティの数値(490.4km/h)を上回るだけの余裕があるかどうかはわかりません」
「絶対的なV-max(最高速度)を狙うなら、どこかの道路でやらなければならないと思います」
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みんなのコメント
記録楽しみだ。