グランピングのテントにV2Lで電気を供給!
ホンダeは、ホンダ初の量産ピュアEV、都市型コミューターとして開発された電気自動車だ。EVとしてバッテリー積載量、航続距離は割り切られているものの、電動車の(vehicle to home)、V2L(vehicle to load)による電源供給車としての機能に注目することも忘れてはならない。そこで、太陽光発電所を兼ねた”泊まれる発電所”と言える宿泊施設、那須高原にあるLooop Resort NASUを訪れ、ホンダeによるV2H、V2L機能を体験してきた(前編から続いています)。
電気代は高い? 急速充電でも速度が違う? オーナーが語るEV「充電」のリアル
昼間、RRレイアウト、前後50:50の重量配分にもこだわったホンダeを那須高原の山道で、きれいな空気を汚すことなく生き生きと走らせ(ホンダeの充電はLooop Resort NASUの太陽光発電による電気で行っている)、満足し、Looop Resort NASUに戻ったあとは、災害時を想定した停電を意図的に起こし、ホンダeからV2H機器による放電でLooop Resort NASUのホール棟、つまりリビング&ダイニング&キッチンスペースに明かりを灯し、不自由のない滞在を経験。そして夜はホンダeのバッテリーから供給された電気で鉄板焼きディナーを堪能。部屋の照明や冷蔵庫などの電力のほか、約3時間、お肉や野菜を焼くために2台のホットプレートをジュージュー(肉や野菜の焼ける音です)と使い続けても、スマホで確認できるホンダeのバッテリー残量が約30%(スタート時の65%から45%に)しか減らないことにも驚かされたのである。
ここで、ピュアEVは、ガソリンエンジンを積み、ガソリンの入ったHVやPHVと違い、バッテリーが底をつけば、お・し・ま・い……と考える人もいるはずだ。たしかにそれはそうなのだが、じつはこんなデータがある。東日本大震災の後のライフラインの復旧日数では、停電約850万世帯のうち、当日約11%、1日後約52%、3日後約79%、1週間後約98%の復旧率なのである。その点、99%の復旧率になるのにガスは5週間、水道は3週間かかっている。そう、ライフラインの復旧にかかる順番としては、地中に管が通っているガスや上水下水に比べ、多くは電柱など地上に張り巡らされている電気(電線)のほうが復旧は著しく早いということになる。
大災害時、ホンダeのバッテリー残量が100%近くあれば、バッテリーを節約しつつ使い切るまでに、インフラの電気が復旧する可能性もあるということ(あくまで東日本大震災の経験に基づいた希望的な話ですが)。いずれにしても、ホンダeなどの電気自動車があり、V2Hまたは車両にAC100V/1500Wコンセント(ホンダeはアドバンスグレードに標準装備)があれば、停電時、家庭内に電力を供給することができる。AC100V/1500Wコンセントだけでも、お湯を沸かし、ホットプレートを使うことが可能で、停電をしのげるのである。
そう、電気自動車は自宅にある”走れる大容量バッテリー”と言うべき給電機器になりうるということだ。なお、ホンダeの場合、自宅でも行えるAC200V電源で満充電まで12時間(急速充電で80%まで約30分)かかるものの、自宅で夜間に充電しておくことを習慣づければ、万一の際に役立つこと間違いなし。充電中でもエアコンやオーディオ(ラジオ)などが使用できるから、さらに安心である。
ところで、ホンダeの電力だけでホットプレートによる豪華鉄板焼きを美味しくいただいたのだが、ひとつだけ、クレームがないわけでもなかった。それは、お肉と野菜焼きだけで、ご飯も焼きそばもなかったこと。買い忘れかっ!? 予算の都合かっ!? とも思ったのだが、そうではなかった。食後、気温0度近い外に寒々と案内されたボクたちは、そこでもうひとつの電動車、ホンダeの電力供給車としての使い方を見せつけられることになったのだ。
それは、那須高原の星降る夜空の下でのグランピングである。駐車スペースにはホンダeがヘッドライトを付けてたたずみ、駐車スペースの屋根にはいくつもの電球が吊るされ、それがあたりをほんのりと照らしている。そしてグランピングテントの中に入ってみると、なんと電気ストーブと照明が暖かく明るい空間を演出しているではないか!!
それらの電力は、EV、PHEV、FCVといった電動車、ここではホンダeの電力=交流から家庭で使える直流に変換するホンダのV2L対応可搬型外部給電気のパワーエクスポーター9000(9kW=9000W/ 100Vコンセント×6口、200Vコンセント×1口)によって供給されているのだった。しかもだ、鉄板焼きディナーにご飯や焼きそばなどがなかったのは、ここで、ホンダeの電力によって、那須高原の夜空の下、電気調理器によって温められ、調理されたカレーうどんをふるまうためだったのである。
ボクは、何種類かあるカレーうどんの中から、ホンダの中枢、ホンダ栃木研究所の社食で大人気だという、濃厚な欧風カレーテイストの”栃研”カレーうどんを、ホンダeの電力のおかげで、熱々のままいただいたのだが、これが、ナメちゃいけない、那須高原の春の夜の寒さを吹き飛ばすぐらい、お肉たくさんで美味しすぎたのだった!!
それはともかく、9kWもの電力を供給できるパワーエクスポーター9000の価格は約120万円。つまり個人向けではなく、法人、自治体向けとして避難所や、オフィス、店舗で活躍する機器なのだが、V2L機器として、ホンダeのようなピュアEVなどの電動車と組み合わせることで、災害時やイベントなどに大きく役立ってくれることは間違いない。
これから一軒家を建てる予定ならEV×V2Hを考えるのもあり!
こうして、太陽光発電所を兼ねた”泊まれる発電所”と呼べる宿泊施設、Looop Resort NASUでのホンダeを使ったV2H、V2L体験の1日を大満足のうちに終えたのだが、翌朝も、ホンダeから供給された電力、V2Hによる、ホットプレートで焼き上げられたホットサンドや、沸かしたお湯で淹れたコーヒーの朝食であった。
今さらではあるものの、日本は災害大国でもある。地震、台風、水害など、大災害が繰り返され、東日本大震災級の大地震がいつ起こるか分からない。そんな国に住む者として、改めてホンダeのピュアEVなどのような電動車による電源車としての存在価値を思い知ることになったのである。しかも、V2HやV2L機器は100万円級の価格というのに、走ることはできない。それだけでは雨風や寒さもしのげない。ラジオも聞けない。が、ホンダeは先進感たっぷりのデザイン、先進性、充実装備、快適空間、給電機能とともに、ピュアEVならではの静かでトルキーかつ、ファンな走り、移動も楽しめるのだ。今回のV2H、V2L体験から、AC100V/1500Wコンセントが標準装備されるアドバンスグレードの495万円という価格が、妙に割安!? に感じられたのも本当である。
ちなみに前編でも紹介したV2H機器の価格だが、現状、家庭のすべてのブレーカーが使えるプレミアムモデルで工事費込み約100万円と高価ながら、新車EVの同時購入(導入)、電気の契約プランによってはV2H機器に約40万円の補助金が出るため(約100万円→約60万円/一例)、これからEVを購入したり、電化住宅を新築して同時にEVを購入するようなケースでは、比較的お得なV2H生活が可能になるというわけだ。
最後に、今回、ホンダeとともにお世話になったLooop Resort NASUについてだが、電動車のオーナーならぜひとも訪れてほしいリゾートコテージだ。充電設備のあるホテルはあっても、充電可能な、V2H体験もできるコテージタイプの宿泊施設などなかなかないからだ(電動車のオーナーでなくてももちろん宿泊可能)。宿泊棟は2棟あり、ホール棟と呼ばれるリビングダイニング&キッチン棟とともに1グループでの宿泊が基本。
バスルームはひとつのみだが、知らないお客さんといっしょになることはない予約方式だから安心だ。人数によっては宿泊棟1棟+ホール棟のみの貸し出しもOK。料金は1人6875円から(曜日、シーズンによる)。夕食のケータリングメニューはBBQ食材セット1人前3300円(2名から)、しゃぶしゃぶまたはすき焼きセット1人前3300円(2名から)。朝食は自身で用意。チェックイン/アウトはTOWAピュアコテージのフロントにて。宿泊特典として、那須ハイランドパーク入園無料のほか、りんどう湖ファミリー牧場入園無料など、多数用意されている。
そんなわけで、これからの那須高原が緑に輝く季節に、那須の森の中で自然と一体になれる、アウトドア感覚満点の太陽光発電所を兼ねた”泊まれる発電所”体験を、家族や仲間とともに過ごしてみるのはどうだろう。BBQを楽しみ、宿泊棟Aのテラスに設けられた籐のハンモックチェアで寛ぎ、那須高原の大自然と対話するのもいい。
もちろん、ホンダeのようなピュアEVと相性抜群のLooop Resort NASUを訪れ、数日間滞在し、太陽光発電による200Vの普通充電を行えば、滞在中は那須高原の澄んだ空気を汚さない、爽快なリゾートドライブを満喫することができるだろう。そして今回体験した様々な可能性から、いつか、EVのある生活、リゾート地では電動車とLooop Resort NASUのような施設の組み合わせによる滞在、楽しみが、当たり前の時代になると思わずにはいられなかった。
ちなみに、那須高原は美味しいお蕎麦屋さんやステーキハウスなど、食通をうならせる行列店、観光スポットも多い。ドライブ先として絶好のリゾートエリアであることも、那須高原フリークのボクとしては、付け加えておきたい。
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