9月8日、台風の接近する富士スピードウェイで2023年WEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レースが開幕。FP1はウエット、FP2はドライコンディションで、それぞれ90分間のセッションが行われた。
この日、ケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evoでエントリーした宮田莉朋はWECへのデビューを果たしたが、初めてのGTE車両はどんな感触だったのだろうか。初日のセッションを終えた直後の宮田に話を聞いた。
跳ね馬先行の地元戦でトヨタ陣営がすぐさま反撃。ドライで8号車が最速、ワン・ツー奪還/WEC富士FP2
■初めてのマシンでセクター3はクラス2番手
11時から始まったウエットコンディションのFP1で、57号車は富士スピードウェイ初走行となるスコット・ハファカーから走行を開始。その後、木村武史へとマシンが引き継がれたのち、セッション終盤になって宮田の初走行が行われた。
「まずはクルマとタイヤを学ぶという感じで、タイムは追わず、習熟にあてました」と宮田。路面がドライアップしていったこのセッションでは17周を走行し、最終ラップに1分49秒706という57号車のセッションベストを記録している。
15時30分からのFP2では、走り出しを担当。コールドタイヤのウォームアップを経験し、ドライコンディションでのクルマの動きを確認した。総じて初乗りとなるフェラーリ488 GTE Evoへの習熟がメインの一日となったが、セクター3ではLMGTEクラス2番手のセクタータイムを叩き出しているあたり(ちなみに最速はフェラーリファクトリードライバーのダビデ・リゴン)、さすがのパフォーマンスだ。
宮田はマシンの印象を「早いか遅いかは別にして、フェラーリは乗りやすいですね」と総括した。
「他のGTEカーに乗ったことはないですが、GT3ではRC Fとアウディに乗ったことがあります。GT3とは比べられない部分はありますが、フェラーリは乗りやすいという評判も聞いていましたし、その感じはあるな、という印象です」
違和感を感じたのはブレーキだという。GT3車両と異なりABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が搭載されていないのは全日本スーパーフォーミュラ選手権やスーパーGT・GT500クラスのマシンで慣れたものだが、それらトップカテゴリーがカーボン製ブレーキを使用しているのに対し、GTE車両のブレーキはスチール製。「そこは少し違和感はありますが、大きな問題やトラブルもなく、自分自身もクラッシュせずに乗れたので、そこはよかったです」と安堵の表情を見せる。
なお、宮田はオフィシャルなレースイベントでは初めて、ミシュランのタイヤで走行した。その印象を、宮田は次のように語っている。
「(タイヤ競争のある)スーパーGTはやはり特別なのでしょうけど、そこでの印象とは少し違ったかなと思います。もっとウォームアップが早いのかなと思ってましたけど……あとは他のメーカーからミシュラン(陣営)に行ったドライバーにも『ピークグリップが低い』と聞いていたのですが、そこは意外と印象が近かったり。まぁ、エンデュランス(耐久)ですし、今年からウォーマーも禁止なので、タイヤの作りはかなり異なるとは思います。長く走っても壊れることはないので、安全面はいいのではないでしょうか」
国内で文字通りトップドライバーとして活躍する宮田は、チームにとっても頼もしい存在となっている。今回、代役としてスポット参戦を打診した木村は、「ル・マンで0.5秒くらい、挨拶しただけ」だったという宮田について、「思っていたよりも喋る子だな、と感じました」とチームに合流してからの印象を語った。
「昨日(木曜)も一緒に夕食を食べましたが、彼は英語もできますし、チームに溶け込むのも早い。すでにリーダー的に引っ張っていってくれていますし、非常に助かっています。セクターベストをつなげると(1分)39秒くらいが出ていますし、セクター3も全体で2番目。あとは合わせ込んでいければ」
チームとしてはドライとなったFP2でクラストップから1.2秒差の12番手とやや苦しい船出に。木村も「今回はちょっと(周囲の)レベルが高いですねぇ」とため息まじりに話すが、心強い“助っ人”とともに上位に這い上がっていきたいところだろう。
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