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ミウラが現代に蘇ったら…そんな夢を見せてくれたランボルギーニ「ミウラ・コンセプト」【THE CONCEPT】

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ミウラが現代に蘇ったら…そんな夢を見せてくれたランボルギーニ「ミウラ・コンセプト」【THE CONCEPT】

■レトロ・コンセプト・プロジェクトとして生み出されたミウラ・コンセプト

 2005年、ランボルギーニ本社内で起案された「レトロ・コンセプト・プロジェクト」は、往年のランボルギーニのマスターピースたちを現代に甦らせるという意欲的なプロジェクトで、「エスパーダ」や「ミウラ」が復刻コンセプトモデルとして登場するなどと、まことしやかに噂されていた。

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 そして、翌2006年1月に開催された北米デトロイトショーで、「レトロ・コンセプト・プロジェクト」第一弾に相当するデザインスタディ「ミウラ・コンセプト」が、ワールドプレミアされることとなった。

 ランボルギーニ・ミウラ・コンセプトはその名が示すとおり、2006年に正式デビューから40周年を迎えた名作、「P400ミウラ」を忠実にモダナイズしたスタイリングのコンセプトスタディである。

 デトロイトショーに際して発表されたプレスリリースでは、メカニズムやサイズなどのスペック、あるいは市販化計画の有無などについてもまったく触れられず、ただ「かつて存在した美しいスタイリングを現代風に解釈した」というような内容のみが書かれていた。

 展示車両はあくまでモックアップながら、既にインテリアやエンジンなども一応は据え付けられていたという。ただしパワーユニットのレイアウトは、かつてのミウラのような横置きではなく、縦置きであった。

 おそらくは当時のランボルギーニV12生産モデルであるムルシエラゴ用の6.2リッターユニットが搭載されているだろうとの見方が多勢を占めていたが、あるいは短めに映るホイールベースから、ガヤルド用のV10ユニットが搭載されるとも噂された。

 さらに当時のスクープ系メディアなどでは、生産モデルでは縦置きミドシップを実現するために、ベントレーなどと同じW12ユニットを搭載するなどという、いささか荒唐無稽な噂話も取りざたされていたが、いずれも憶測の域を出ることはなかった。

 しかし、このコンセプトスタディにおける最大のトピックは、やはりボディデザインにあるというべきだろう。

●1960年代の名作ミウラをほぼ忠実に現代化したデザイン

 現代的な20インチのホイールに合わせて若干のサイズアップが施されるとともに、ロングノーズのオリジナルより少々キャビンフォワード的なプロポーションとはなっていたものの、そのスタイリングは、ほぼ忠実にミウラを再現したものとなっていた。

 有名な「まつ毛」もデザインに組み込まれた楕円形のヘッドライトや、左右ドア後方/サイドシル後部のエアインテーク、カンパニョーロ製マグネシウム・アロイをシンプルな意匠としたようなホイール、エッジの効いたショルダーラインを持つ一体型のリアカウル、そしてコーダ・トロンカに切り落とされたテールにテールランプの形状など、モダナイズはされながらも、全体像はミウラそのもの。

 さらにリアエンドに取り付けられた「Miura」エンブレムは、オリジナルのロゴがそのまま引用されていたのだ。

■傑作アルファロメオ156を手掛けたワルター・デ・シルヴァが手掛けた!?

 ランボルギーニ・ミウラ・コンセプトの発表に当たり、デザインを指揮したスタイリストについては、当代最高の自動車デザイナーのひとりとして名声をほしいままにしている、ワルター・デ・シルヴァ氏の名が公表された。

 1951年、北イタリアのコモ湖のほとりにある町、レッコにて生を受けたデ・シルヴァ氏は、1986年にアルファロメオ社チェントロスティーレのマネージャーに就任。この時代には、傑作アルファロメオ156を手掛けたことで、世界的に名を上げることになる。

 その後1998年になると、フォルクスワーゲン・グループの総帥フェルディナント・ピエヒ博士その人のヘッドハンティングを受けて、アルファロメオから引き抜かれ、まずは同グループに属するスペインのセアトのデザインディレクターとに就任した。

 さらに2002年には、セアトおよびアウディ系ブランドを任されることになった後、2007年2月をもってフォルクスワーゲングループすべてのデザインの最高責任者に就任。2015年11月に職を辞するまでに、VWグループ全ブランド(アウディ、ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲン)のデザインを統括する立場となった人物である。

 一方ランボルギーニ社内では、VWグループ内でアウディ傘下に収まったのちもルーク・ドンカーヴォルケ氏がチェントロスティーレを指揮していたのだが、彼が2005年夏にセアト社のデザインディレクターへと移動した後は、それを引き継ぐかたちで、当時アウディ系ブランドのデザインを総括する立場にあったデ・シルヴァ氏が、結果としてランボルギーニもカバーすることとなったとされている。

 その人事が正式にリリースされたのは、2005年12月のボローニャショーでのこと。そして翌月には、デ・シルヴァ氏が初めてデザインを手がけたランボルギーニとして、ミウラ・コンセプトが発表されたのだ。

 しかし、ドンカーヴォルケ氏の移動とレトロ・コンセプトの発表がほぼ同時期であることから、ミウラ・コンセプトは元来ドンカーヴォルケ氏が起案したものをデ・シルヴァ氏が手直し、もしくは再デザインしたという説もある。

 おそらく、その見方に間違いはないだろう。ただその一方で、デ・シルヴァ氏にとってもランボルギーニ・ミウラの復活が非常にチャレンジングなものであったことは間違いないようだ。こ当時の報道によると、デ・シルヴァ氏は「この2年間、ミウラの再デザインを手がけられたら……、と何度も夢に見てきました。今、ランボルギーニ社デザイン部門ディレクターという私の新しいポジションと、ランボルギーニ社CEO(当時)、ステファン・ヴィンケルマン氏の熱心なサポートのおかげで、夢が現実のものとなったのです」と語ったという。

●ミウラというかつての憧れを再現しようとした男たちの情熱

 たしかに、以前筆者がトリノの国立自動車博物館を訪ねた際、たまたま開催されていた現代の自動車デザイナーのプロフィールを語る企画展において、デ・シルヴァ氏のボードには「デザインに興味を持つきっかけになったクルマ」および「自身のデザインに影響を与えたクルマ」の双方で、ランボルギーニ・ミウラの名が記されていたことを記憶している。

 すなわちミウラとは、ランボルギーニに携わるすべてのスタイリスト、あるいはエンジニアにとっても、チャレンジしたくなる夢のクルマにほかならないのだ。

 ちなみにデトロイトショーに展示されたミウラ・コンセプト試作車は、そののち現在に至るまで長らくランボルギーニ社のサンタアガタ・ボロネーゼ本社に付設されたミュージアムに展示されていた。いまでも運良く展示されていれば、見学が可能だ。

 もしも「ランボルギーニ聖地巡礼」に行ったならば、デ・シルヴァ氏やドンカーヴォルケ氏などの一流のスタイリストたちが「ミウラ」という夢に懸けた証を、是非ともご覧いただきたい。

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