レクサスの最新「F」モデルが、2019年5月にマイナーチェンジを受けた「RC F」だ。LFAの血統を継ぐスポーツクーペに、その開発の舞台となっている富士スピードウェイで試乗。その進化は果たして…。
サーキット走行に特化したパフォーマンスパッケージを追加
常設サーキットでは世界一長いストレートを持つ富士スピードウェイを全開で走る。最終コーナーを立ち上がった後、7000rpmを目安に4速、5速へと淡々とパドルでシフトアップ。
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シューンという大排気量NAならではの太くて乾いたエンジンサウンドとダイレクトな変速による間断ない加速Gとともに速度を伸ばし、230km/hはあっという間。6速に入れてからも481psの大パワーでなおも加速を続け、1コーナー手前250mの看板が頭上を飛び越していく。
少しは余裕を持っていたもののメーター読み254km/hからのブレーキングは少しの躊躇も許さず、1コーナーは瞬く間に接近する。しかし、そんな不安も、カーボンブレーキが右足に込めた力をしっかりと受け止め確実に減速。クリッピングポイントが見えた時には、少し荷重を残しながらターンインができるほど余力を残していた。
レクサスが今もっとも走りにこだわっているハイパフォーマンスモデル「RC F」の最新型で、しかも最強のモデル〝パフォーマンスパッケージ〞は、この富士スピードウェイ一番の醍醐味である最高速からのフルブレーキと低速コーナーへのアプローチを難なくクリア。その潜在能力を見せつけた。
日本を代表するプレミアムブランド「レクサス」が2005年に日本市場に導入され、今ではラインアップの拡充とともに、そのポジションは盤石なものになりつつある。
日本製ならではの徹底した作り込みの良さと、快適性能をとことん追求するなど、欧州ブランドでは味わえない上質さが魅力だ。
一方で走りの性能に関しても日々進化し続ける姿勢も、ブランド力向上の支えになっているに違いない。むしろレクサスブランドのおかげで、トヨタの走りへのこだわりは日本車の殻を破って世界に目が向けられていったと言っても過言ではないだろう。
その尖兵としてレクサスの国内デビューから遅れること2年、2007年に当時セダンの基幹モデルとだったISをベースにしたスポーツモデルIS Fを投入。その後継モデルとして2014年10月にデビューしたのがクーペボディをまとったRC Fだ。
ホイールベースはIS Fと変わらないものの、剛性感を高めたボディは一層その走りを進化させ、2019年5月のマイナーチェンジでは、さらに走りを極めると同時にサーキット走行を優先させた〝パフォーマンスパッケージ〞を投入してきた。
公道からサーキットまで走りを楽しめるベースモデルはニュルブルクリンクなどでのテストを元に、20kgの軽量化に加え、空力、サス、エンジンの基本性能をアップデート。
パフォーマンスパッケージはさらに、カーボンブレーキやカーボンエアロ、チタンマフラー等によって70kg軽量化するとともに、徹底した走り込みによって走りを進化させた。
その乗り味は富士スピードウェイの高速コーナーをSPORTモード・TRCオフ状態でリアをジワジワ滑らせながらも駆動力を失わず、ボディのフラット感もキープ。空気の力でボディを押さえ込みつつも、足元の動きを規制せずグリップ感を保っていることから外乱に強いことを表していた。
もっともSPORT+モードではツッパリ感が強くて前後左右に小刻みにボディがシェイクされ落ち着かない。エンジンも初期応答が敏感過ぎる。
トヨタの先代スープラ同様、雪道などで振り回すには楽しそうだが、限界領域特性という点ではあまり馴染めなかった。
それでもノーマルとSPORTモードでは、安定した姿勢と足元がスッと動き出して路面追従性の良さを見せてくれ、ドライバーがリアの動きをキャッチしやすくなっている。
まさにニュルブルクリンクに要求される安定性の高さと限界領域の扱いやすさを具現化した代物で、開発ドライバーの調理技術の高さを実感した。大人がサーキットを本気で遊べるスポーツクーペだ。
(文:瀬在仁志/写真:原田 淳、ホリデーオート2019年7月号より)
RC F パフォーマンスパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4710×1845×1390mm
●ホイールベース:2730mm
●重量:1720kg
●エンジン型式・種類:2UR-GSE型・V8 DOHC
●排気量:4968cc
●最高出力:354kW(481ps)/7100rpm
●最大トルク:535Nm(54.6kgm)/4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●タイヤ:前255/35ZR19、後275/35ZR19
●駆動方式:FR
●車両価格(税込):1404万円
[ アルバム : レクサスRC F はオリジナルサイトでご覧ください ]
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