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事実上「まったく新しい」 ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(1) 679kmに952ps

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事実上「まったく新しい」 ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(1) 679kmに952ps

4年間に15万台が売れたタイカン

ケビン・ギーク氏は23年間、ポルシェの様々な部門へ所属してきた。社員食堂を除いて。もちろん、同社で最も影響力の強いモデル開発に携わった経験もある。

【画像】事実上「まったく新しい」 ポルシェ・タイカン 競合クラスのEVサルーンと比較 全150枚

バッテリーEVのタイカンでは、数100万kmにも及ぶ、走行試験プログラムを率いてきた。地球上の様々な場所で、極めて過酷な環境をともに過ごしてきたのだろう。

2030年までに、新車の販売割合の8割を電動化する目標を掲げるポルシェにとって、タイカンは非常に重要な一翼を担う。早いもので登場から4年を迎え、最新仕様として入念なアップデートが施された。

サルーンのタイカンと、クロスオーバー・ワゴンのタイカン・クロスツーリスモは、4年間で約15万台の販売を記録。英国では、同社のベストセラー・モデルに輝いている。

しかも現在のバッテリーEVでは、最も操縦性に優れた、魅力的なモデルだという定評を築き上げた。スタイリングは、未だに新鮮。フェイスリフトの必要性を、強くは感じさせない。

それでも、ライバルメーカーも攻勢の手は緩めない。BMW i4やメルセデス・ベンツEQEといったドイツ勢だけでなく、ヒョンデやキアなどの韓国勢も、実力では急接近中。ルーシッド・エアやニオET7、ポールスター5など、新興勢力も人気を高めている。

売れ行き好調のタイカンとはいえ、黙っているのは危うい。新技術やユーザーからのフィードバックによる機能強化が、顧客から歓迎されることは間違いない。実際には、さほど必要とされない水準だとしても。

事実上まったく新しい 679kmに952ps

ギークは、ポルシェの最長寿モデル、911の60年間に及ぶ進化を、改善で達成されるべきベンチマークとして掲げる。毎日のように改善点は発見され、車両開発へ落とし込まれると話す。

「技術は進歩し続け、新しい素材が入手可能になります。開発のペースはとても早く、発売から1年後でも新しいアイデアが実現し、これも施すべきだった、と感じる可能性はあります」

筆者は今、ボディへ僅かにカモフラージュが残された、アップデート後のタイカンに乗っている。開発のディレクションを任されたギークは、助手席だ。

ブラックアウトされた最新版で、アメリカ・カリフォルニア州を南下中。ロサンゼルスからサンディエゴへ向けて、高速道路の5号線を進む。

行程は、往復で約500km。駆動用バッテリーとモーター、シャシー、ダッシュボードのデザインまで、タイカンの進化ぶりの断片を確かめられるはず。スタイリングは、まだはっきり確認できないけれど。

ポルシェは、事実上まったく新しいクルマだと主張する。ヘッドライトの形状は僅かに変更されたとはいえ、そう見えない可能性があることも、認めているが。

航続距離は、最大で679km。今のところ、最高出力は最大で952ps。助手席側のダッシュボードにもタッチモニターが備わり、ディズニー+で映画を鑑賞できる。アップデートされた領域は、多岐に渡る。

エネルギーを吸い取るように電気が流れる

ギークは、改善を生むことを理由に、競争を歓迎していると口にする。とはいえ、タイカンで重要視されたのは、ユーザーの要望へ応えること。ライバルモデルを凌駕することには、さほど重きが置かれなかったそうだ。

世界中の道を約15万台のタイカンが走っており、実走行による膨大な知見を、ポルシェは集めることができる。これが、耐久性と充電能力の向上へ力が注がれた理由を作った。

リアの駆動用モーターは、今までより強力でありながら、軽量・高効率なものへ置換。駆動用バッテリーは容量が増やされた。回生ブレーキは、最大400kWの電気エネルギーを生成するようになった。急速充電能力は、270kWから320kWへ上昇した。

電動パワートレインの熱管理システムも、徹底的に見直された。気象条件で受ける影響を、小さく抑えるため。これらはいずれも、バッテリーEVのオーナーが共通して感じる不便へ応えたものといえる。

「当初は、航続距離と充電時間が最も大きい批判対象といえました。長距離移動は安全か? エネルギーが切れて故障することはないのか? 充電ステーションへのナビゲーション方法は? など、お客様は不安を感じていました」。とギークは説明する。

カリフォルニア州を数時間走行し、充電ケーブルを差し込む。ギークは、少し興奮した様子で「これを見てください」。と筆者へ声をかける。

ソケットを接続し、30秒後に達した流量は270kW。まるでポンプでエネルギーを吸い取るように、電気がバッテリーへ流れていく。

駆動用バッテリーが理想的な温度になるにつれ、充電量の数字が増えていく。306kW、311kW、316kWと、思わず声を出して読み上げてしまった。その日のピーク値は332kW。5分間ほど、300kW台が続いた。

この続きは、ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(2)にて。

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