「根本的に大きな問題」が
MotoGP第13戦サンマリノGPは、オーストリアGPで新しいエンジンが投入されて3戦目のレースでした。それは中上貴晶(イデミツ・ホンダLCR)が以前から「ホンダが後半に投入する大きなアップデート」と言及していたものでしたが、端的に言えば、ライダーの期待に応えたとは言い難いものでした。
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中上選手は前戦アラゴンGPを今季自己ベストリザルトの11位で終えています。しかし、「それはフィーリングがすごく良くなったから、ということでもないです」と述べています。
そして今大会のサンマリノGPでは、週末を通してブレーキング時のリアの“跳ね”に悩まされることになるのです。
「ブレーキングからのターンインに一番苦戦していますね。ブレーキングを開始してから減速、寝かし始めるところのバイクのバランスとバイク自体のパフォーマンスが非常に悪いんです。ブレーキングでアクセルを戻した瞬間にリアがすごく跳ねています。アラゴンGPでも1カ所のコーナーでこの症状が出ていましたが、ここではどのコーナーでも、どのスピード域でも出てしまっています」
この「ブレーキング時のリアの跳ね」は、現地の最終コーナーのコースサイドで見ていてもはっきりと分かるほど大きなものでした。外から見て分かるほどですから、ライダーが感じている挙動の大きさは相当なもののはずです。
中上選手は、ブレーキング時のリアの跳ねについて「電子制御やセッティングから来ているものではない。おそらくエンジンかシャシーではないか」と考えています。また、ミサノ・サーキットはアラゴンに比べて路面のグリップが良いことと、レースをソフトタイヤで戦った、ハイグリップの影響も原因のひとつかもしれない、ということでした。
スプリントレースでは22番手からスタートして20位。決勝レースではレース直前に小雨が降り始め、ウオームアップ・ラップの時点で、レース中にピットインをして路面コンディションに適したタイヤを履いたマシンに乗り換えることを許可する白旗が提示された(フラッグtoフラッグ)、と伝えられました。
結果的に、レース序盤に少しだけ雨が強くはなったものの、以降は天候もコンディションも回復し、ピットインをしてレインタイヤのマシンに乗り換える判断をしたライダーが後退したことで、中上選手はポジションを上げてポイント圏内の13位でゴールしました。
「レースがスタートして数周後に、明らかにペースダウンしないといけないくらい路面が湿っていて、雨の量も多かったです。ただ、事前に情報は聞いていて、雨が通り過ぎるかもしれないけど、走り続けて欲しいと言われていました」
「この雨量、この路面の感覚だったらピットには入らないな、という感覚だったので、逆にピットに入ったライダーがいたことにびっくりしました。正直、“ラッキー!”って。今回は普通にレースしていたらポイントはとれなかったくらい、パフォーマンスが悪かったんです」
複雑なコンディションによってポイントは獲得できましたが、状況は厳しいものです。中上選手は「正直言って、(他と)同じカテゴリーでレースをしている感覚がない」と語っているのです。
「根本的に大きな問題を抱えていますね。自分たちのできる範囲でなにかしら改善、というのが現状です。(他のメーカーとは)相当な差があります」
このサンマリノGPの翌日、9月9日月曜には、ミサノ・サーキットで公式テストが行なわれました。中上選手は新しい空力デバイスをテストしたということです。ただ、長いこと改善点として抱えているリアのグリップや、加速時のトラクションはいまだ大いに不足しており、「ずっと改善されていないです。根本的に抱えている問題は一緒」だと語っています。
また、2025年から開発ライダーを担うことが決まっている中上選手は、こうした将来の役割の変化により、エンジニアと話す機会が増えているそうです。中上選手も、現状改善への貢献に意欲を見せています。
「7年ホンダに乗って来たので、一番グリップが良かった年のバイクは何ですか、など聞かれるようになっています。僕は考えることなく“この年のこのバイク”と言えますから、どんどん利用してもらいたいですね。フル参戦ライダーとしての僕のレースは、残り数戦しかありません。少しでも良い状態で終えたいという気持ちがあります。全力で改善の手助けをしたいです」
次戦のMotoGP第14戦エミリア・ロマーニャGPは、2戦連続で同じサーキット、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで、9月20日から22日にかけて行なわれます。同じサーキットでのレースでは、データ量が増えて比較、改善もしやすくなります。ホンダは少しでも前進したいところでしょう。そして、フル参戦ライダーとしての中上選手の最後の日本GPを納得のいく形で終えて欲しい、そんなレースを期待したいところです。
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後は中身だ。頑張ってコピーして追いつこう。