現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CAR

ここから本文です

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CAR

掲載 更新
ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CAR

2024年4月15日から21日にかけて皆済された「ミラノ デザイン ウィーク2024」。イタリア在住のジャーナリスト、大矢アキオ氏が、特に未来のモビリティを見据えた自動車ブランドの出展についてリポートする。

Milano Design Week 2024|ミラノ デザイン ウィーク2024

ポルシェ75年&テノールの巨星が選ぶ「至高のエンジン音」──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2023が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este

未来のモビリティを予感させたミラノ・デザインウィークの自動車ブランド

2024年4月15日から21日にかけて皆済された「ミラノ デザイン ウィーク2024」。イタリア在住のジャーナリスト、大矢アキオ氏が、特に未来のモビリティを見据えた自動車ブランドの出展についてリポートする。

Text by Akio Lorenzo OYA|Photographs by Akio Lorenzo OYA、 Mari OYA、 ITALDESIGN

「多機能化」と「シティEV」の次は?

「ミラノ デザイン ウィーク」が2024年4月15日から21日まで開催された。イベントは国際家具見本市に合わせ、毎年市内各地で展開されるものだ。主要オーガナイザーである「フォーリサローネ」のカタログには今回、前年比30%増の1125企画が掲載され、ウィーク全体では約2億6080万ユーロ(約438億円)の経済効果があったという。

自動車ブランドも多様なアプローチで出展し、イベントを盛り上げた。今回はそのなかで未来のモビリティを予感させるものに焦点を絞ってお届けしよう。

イタリアを代表するカーデザイン会社のひとつ「イタルデザイン」はEVコンセプト「アッソ・ディ・ピッケ・イン・モビメント」を世界初公開した。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARItaldesign Asso di picche in movimento(2024) via Web Magazine OPENERS

2023年のヴァーチャル公開に続くもので、インスピレーション源は1973年に「アウディ80」をベースに創立者ジョルジェット・ジウジアーロが手がけたフランクフルト・ショーカー「アッソ・ディ・ピッケ」である。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARItaldesign Asso di picche (1973) via Web Magazine OPENERS

オリジナルのシンプルさを尊重しながら、今日的カーデザインの原則を反映した全長4715mm✕全幅2032mm✕全高1300mmの2+2クーペである。いずれもシームレスなアルミニウム構造とポリカーボネート製ウィンドウで明るさと強度を確保している。

エクステリアと同様に注目すべきはインテリアに提示されている概念だ。今回の展示車はモックアップのためドアの開閉機構はなく、内部の造り込みも最低限にとどまっていた。

だが、ダッシュボードは筒型をしたオリジナルの意匠を残しながらミニマリスト志向に徹している。解説によれば、表示は必要時までほとんど目立たないよう配慮することで、最小限の労力や注意力の移動で済むという。

参考までにヨーロッパの自動車安全テスト機関「ユーロNCAP」は、過度なタッチスクリーン依存をしていないかを2026年にチェック項目として追加する。大型ディスプレイによる多機能化の次に取り組むものとして、こうしたシンプル化の模索は大変好ましいことである。

いっぽう中国の「GAC(広州汽車集団)」は、トルトーナ地区にある常設の欧州R&Dスタジオを開放。すでに始動している「カーカルチャー・プロジェクト」と名付けたEVコンセプトシリーズの第3弾をスケールモデルで展示した。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARGAC R&D Center Europevia Web Magazine OPENERS

「シティ_ボッド」は1950年代イタリアのマイクロカー「イセッタ」に触発されたミラノ向けのシティーカーだ。パノラミックガラスで死角の発生を極力少なくする。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARGAC CITY_PODvia Web Magazine OPENERS

デリバリー業務向けスリーホイーラーの「シティ_ボックス」は、ジッパーの付いた“バックパック”で、必要に応じてカーゴスペースの拡大を図ることができる。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARGAC CITY_BOX photo: GACvia Web Magazine OPENERS

2シーター・クーペの「シティ・ラン」は、既存の座席の代わりにエアシートを採用することで軽量化を図っている。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARGAC CITY_RUN photo:GACvia Web Magazine OPENERS

3車は、いずれも短時間で交換可能なモーター+パワートレイン・モジュールで後輪を駆動する。

パーツに焦点を当てたアウディ

アウディは前回に続き、フェラガモが所有する高級ホテル「ポートレイト・ミラノ」の中庭を舞台にし、総合テーマも「ハウス・オブ・プログレス」を継承した。

だが、今回は「リフレクション」の名のもと、照明のテクノロジーに焦点を当ててインスタレーションを展開した。

会場では、世界初の一般公開を果たした「アウディQ6 e-tron」の実車とともに、灯火類をオブジェのごとく展示。そこに秘められた技術を紹介した。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARAudi “House of Progress” via Web Magazine OPENERS

マトリックスLEDヘッドライトのデイタイム・ランニングライト(昼間走行灯)は122個のLEDセグメントで構成されている。デジタルライトシグネチャー機能+Appにより、点灯パターンをユーザーが選べるのも特色だ。テールランプのOLEDセグメント数は360にのぼる。

加えて、アウディOLEDテクノロジー2.0は、多様な表示能力で、将来は必要に応じ、危険な状況を察知してハザードの三角マークを表示することも技術的に可能だ。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARAudi Digital OLED Technology 2.0via Web Magazine OPENERS

筆者が考えるに、さらなる未来にはcar to Xコミュニケーションの一端を担えるだろう。たとえば、クラウドから配信される渋滞・危険情報を後続車に伝えることもできよう。

17日に開催されたトークセッションではアウディの照明担当デザイン・ダイレクター、セサール・ムンターダが登壇。「のろし」の時代から人々が照明と常に関わってきたことを説いたあと、これから、より自動車の照明が興奮に満ちたものになることを示唆した。

職人技との融合

いっぽうでインスタレーションを通じて、日本の職人技にまつわるアプローチを展開した出展ブランドといえば、2005年の初出展以来、15回目となったレクサスである。

2023年ジャパンモビリティショーで公開されたバッテリーEVコンセプト「レクサスLF-ZC」に着想を得たクリエイターたちによる2作品を展示した。

そのひとつ、ロンドンを拠点とするデザイナー吉本英樹(Tangent)による『BEYOND THE HORIZON』は、ジャパンモビリティショー2023で公開したEVコンセプト「LF-ZC」の背景に、越前和紙による高さ4メートル、幅30メートルの巨大なスクリーンが設け、夜明けから日没まで水平線の情景を映し出した。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARLEXUS “BEYOND THE HORIZON” via Web Magazine OPENERS

会場に置かれたコンセプトカー「LF-ZC」の内装材には、竹素材が用いられていることにもちなんでいるというが、その心は?

レクサスの担当者は 「主にレクサスが考える次世代モビリティの未来であるソフトウェアによる無限の可能性と、ソフトウェアがもたらす体験価値の変化というブランドの思想を表現しました。また、伝統的な職人技術と最先端のテクノロジーの融合も、ブランドの姿勢を表すものとして、インスタレーションに織り込んでいますが、お客様には感覚的に空間全体からその想いの一端を感じ取っていただければと考えておりました」と説明する。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARLEXUS “BEYOND THE HORIZON” via Web Magazine OPENERS

「見せる」から「リサーチする」へ

日本の職人技術を異なったかたちからアプローチを試みたのは、自動車用インテリアを手掛ける「トヨタ紡織」である。

こちらのテーマは「CONTINUUM- Roots of comfort」だ。富山の伝統工芸職人3名を起用。訪れた者を最初に迎えたのは、和室である。

中央に置かれた島谷好徳作「おりん」を叩くと、周囲に投影された光の輪が反応する。音を可視化することで、聴覚と視覚双方で感じる心地良さを追求したという。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?|CARToyota Boshoku : Collaboration with Yoshinori Shimatani, Orin Craftsman, Visualizing the sounds and vibration of orin Buddhist bellsvia Web Magazine OPENERS

第2室で来訪者に触ることを促していたのは、絹織物作家、松井紀子作の「しけ絹」だ。一頭の蚕は一つの繭を作るのが普通だが、稀に二頭の蚕で一つの繭を作ることがある。そこからできた不均一な糸を 横糸に用いたのが「しけ絹」だ。不均一な糸ゆえに、独特の神秘性を醸し出す。

Toyota Boshoku : Collaboration with Noriko Matsui, Silk Textile Artist: Shikeginuvia Web Magazine OPENERS

一角では、実際の菅笠(すげがさ)職人、中山煌雲(こううん)が床で実演していた。出展社が訴求したいのは、菅を緻密に織り込むことによる、触感や出来上がりの視覚的心地良さという。

ミラノ デザイン ウィーク2024リポート──自動車ブランドが描き出すモビリティの未来とは?via Web Magazine OPENERS

トヨタ紡織ミラノデザインブランチの為村亮所長と浅井佑アシスタントチーフデザイナーは、日本の人が快適に感じる不規則性・数字で表せない心地よさを、見たことがない人々がどのように感じるかをリサーチしたい」と抱負を述べた。

そのフィードバックを活用することで、「時代の変化に流されない心地よさ」「今日普及している押しが強いインテリアの次に提案できるもの」を模索したいと語る。

彼らのパビリオンは小さいながら「見せる」から「リサーチする」イベントへと一歩踏み出していた。

さまざまな新たなアプローチを開拓することで、自動車ブランドにおけるデザインの重要性がより広く周知されるようになる。

とかくエンジニア中心になりがちな自動車メーカーにおいて、デザイナーの地位を向上させるためにも、イタリア第2の巨大都市における春のイベントが、より良い機能を果たしてくれることに期待したい。

こんな記事も読まれています

220馬力のホットハッチ アルピーヌ新型「A290」世界初公開! ブランド初のピュアEVは全長4mの5ドア・スポーツモデル
220馬力のホットハッチ アルピーヌ新型「A290」世界初公開! ブランド初のピュアEVは全長4mの5ドア・スポーツモデル
VAGUE
2人乗りの斬新「和製スーパーカー」実車展示! 全長5mのエアロデザインがスゴい!? 謎の「VEGA」 今夏正式発表へ
2人乗りの斬新「和製スーパーカー」実車展示! 全長5mのエアロデザインがスゴい!? 謎の「VEGA」 今夏正式発表へ
くるまのニュース
スタイリッシュな新型「4ドアセダン」発売! 1000台限定で「495万円から!?」 日本の道で試したBYD「SEAL」の実力とは
スタイリッシュな新型「4ドアセダン」発売! 1000台限定で「495万円から!?」 日本の道で試したBYD「SEAL」の実力とは
くるまのニュース
全長5m!? 斬新「和製スーパーカー」実車展示! 6速MT×2人乗りのスタイリッシュマシン「VEGA」とは
全長5m!? 斬新「和製スーパーカー」実車展示! 6速MT×2人乗りのスタイリッシュマシン「VEGA」とは
くるまのニュース
トヨタ新型「FJクルーザー」…じゃないの!? 新型「本格SUV」公開! “既視感ありまくり”デザインが大反響! カクカクすぎる「V23」中国で登場し熱視線集まる
トヨタ新型「FJクルーザー」…じゃないの!? 新型「本格SUV」公開! “既視感ありまくり”デザインが大反響! カクカクすぎる「V23」中国で登場し熱視線集まる
くるまのニュース
「ロータリーエンジン搭載」赤と白のスポーツカー実車展示! “ナマ”のマツダ「アイコニックSP」にSNS大盛り上がり!! 市販化のゆくえは?
「ロータリーエンジン搭載」赤と白のスポーツカー実車展示! “ナマ”のマツダ「アイコニックSP」にSNS大盛り上がり!! 市販化のゆくえは?
VAGUE
ついに大人気モデルのカングーもEV化へ 実用的でクリーンだがこの値段では家族用のバンというコンセプトには説得力に欠ける?
ついに大人気モデルのカングーもEV化へ 実用的でクリーンだがこの値段では家族用のバンというコンセプトには説得力に欠ける?
AutoBild Japan
V8×6速MT搭載!? 「謎の和製スーパーカー」実車公開! 斬新レトロ顔&2人乗りの完全新型マシン展示!? 発売は?
V8×6速MT搭載!? 「謎の和製スーパーカー」実車公開! 斬新レトロ顔&2人乗りの完全新型マシン展示!? 発売は?
くるまのニュース
新型「ミニ・クーパー5ドア」登場 4車種揃った“新世代ミニ”はどう違う? 似ているようで異なるそれぞれの個性とは
新型「ミニ・クーパー5ドア」登場 4車種揃った“新世代ミニ”はどう違う? 似ているようで異なるそれぞれの個性とは
VAGUE
495万円からの衝撃、BYDがEVスポーツセダン『シール』日本発売 航続640km、テスラ標的に
495万円からの衝撃、BYDがEVスポーツセダン『シール』日本発売 航続640km、テスラ標的に
レスポンス
2024年と2025年にデビューするメルセデスとAMGの限定モデルを含む17台を一挙紹介!
2024年と2025年にデビューするメルセデスとAMGの限定モデルを含む17台を一挙紹介!
AutoBild Japan
観音開きのリアゲートを開ければピザ窯が登場!?  米国レクサスが高級家電メーカーとコラボした「モノグラムGX」に注目
観音開きのリアゲートを開ければピザ窯が登場!? 米国レクサスが高級家電メーカーとコラボした「モノグラムGX」に注目
VAGUE
イタリア国外初公開! 「アルファロメオ33ストラダーレ」が「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で英国デビュー
イタリア国外初公開! 「アルファロメオ33ストラダーレ」が「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で英国デビュー
LE VOLANT CARSMEET WEB
シトロエンが欧州で新型C3エアクロスSUVを発表、最新世代のプラットフォームで全面刷新
シトロエンが欧州で新型C3エアクロスSUVを発表、最新世代のプラットフォームで全面刷新
Webモーターマガジン
【欧州で先行試乗】たゆまぬ進化がもたらす未来への予感 マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
【欧州で先行試乗】たゆまぬ進化がもたらす未来への予感 マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
AUTOCAR JAPAN
謎の日産「すごいキューブ」!? “イナズマ”グリルが超カッコイイ! めちゃ“斬新”な「小型ハイトワゴン」の正体とは
謎の日産「すごいキューブ」!? “イナズマ”グリルが超カッコイイ! めちゃ“斬新”な「小型ハイトワゴン」の正体とは
くるまのニュース
BMWの大型2シーターオープンはV8搭載、『コンセプト・スカイトップ』…グッドウッド2024出展へ
BMWの大型2シーターオープンはV8搭載、『コンセプト・スカイトップ』…グッドウッド2024出展へ
レスポンス
アルピーヌ初のBEV「A290」はとっても実用的!?なのに刺激的な「らしさ満載」の5ドアホットハッチだ
アルピーヌ初のBEV「A290」はとっても実用的!?なのに刺激的な「らしさ満載」の5ドアホットハッチだ
Webモーターマガジン

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

82.7112.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

75.9398.0万円

中古車を検索
シティの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

82.7112.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

75.9398.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村