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【試乗】ポルシェ718ケイマン&ボクスターGTS 4.0は自然吸気フラット6の官能的走りでファンの心を揺さぶる

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【試乗】ポルシェ718ケイマン&ボクスターGTS 4.0は自然吸気フラット6の官能的走りでファンの心を揺さぶる

718ケイマン&ボクスターに「GTS 4.0」というモデルが追加設定された。先に登場した同じ自然吸気ボクサー6を搭載する718ケイマンGT4&718スパイダーとはどこが違うのか? どちらも試乗している河村康彦レポーターがGTS 4.0の真価を検証する。(Motor Magazine 2020年12月号より)

1950~60年代に活躍したレーシングマシン由来の718
911のGTSやGT2モデル、さらにはケイマンのGT4など、ポルシェのヴァイザッハ研究所に居を構えるモータースポーツ部門が直接開発へと直接携わった、ラインナップの中でも特別にスポーティなさまざまの作品群。

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そもそも、モータースポーツの世界とは切っても切れない縁を持つポルシェ車だが、その中にあってもとくに「戦うための特別な存在」というキャラクターが強く押し出されたいわゆる「役付き」のモデルたちに対しては、ベースであるカタログモデルには通常許されることのない、凝った構造や高価なメカニズムが惜しみなく投入されることが通例になっている。

一方で、「だからこそ、このモデルは例外的存在」と言いたくなるのが、今回紹介する2台。新たに「GTS4.0」という名称が与えられたボクスターとケイマンのシート背後には、実はモータースポーツ部門の監修による最新設計の心臓が搭載されているからだ。

もちろん、こうした心臓部の出典は、ひと足先にデビューを果たした718ケイマンGT4と718スパイダー(以下718GT4)にある。結論を先に言ってしまえば「ハードウェアは同様ながら、ソフトウェアの違いによって微妙な出力スペックの違いが演じられている」のが、GT4.0の心臓部であるのだ。

718というサブネームが加えられ、2016年に刷新が行われた現行982型ボクスターとケイマンには、当初はターボ付きの水平対向4気筒エンジンが搭載されていたのはご存じのとおり。先代981型に対して基本的なボディ骨格やデザインは踏襲。

一方で、パワーユニットはダウンサイズを敢行すると同時にターボでチャージを行い、同時にレスシリンダー化を図ったユニットへとフルモデルチェンジ。その理由を、当時の担当エンジニアは「厳しさを増す一方のCO2排出量規制に対応するため」と明言していた。

そもそも、前述の718というサブネームは1950~60年代にかけて活躍した、往年のレーシングマシン名に由来したもの。「水平対向の4気筒エンジンをミッドマウントする」という共通性を根拠に、ポルシェが温存する「栄光の引き出し」の中から選抜されたのがこの3桁の数字であった。

それゆえ、杓子定規に言ってしまえば「形容矛盾」になってしまうのが「6気筒エンジンを搭載した718」でもある。それでも、新たに水平対向6気筒エンジンを積むことになった「718ケイマンGT4/718GT4」がさしたる不思議もなく世の中に受け入れられて来たのは、それが特例が許される「役付き」のモデルであったからに違いない。

911GT3と同排気量ながら完全新開発のエンジンを搭載
102.0×81.5mmのボア×ストローク値に、3995ccという排気量。いかに「新開発」と謳われようがそうしたさまざまなスペックが同値であることから、前出718GT4に搭載された水平対向6気筒エンジンが、これまでの911GT3用に由来するアイテムだろうと想像されたのも、むしろ当然のことなのかもしれない。

ところが「あにはからんや」で、サーキット走行にフォーカスをしてとくにスポーティなシャシチューニングが施された718GT4にミッドマウントされたのは、実は完全に新開発が行われた水平対向6気筒ユニットだった。

同排気量で共にモータースポーツ部門の息が掛かったユニットでありながらも、こうして911系とミッドシップモデルで(おそらくコスト的にも)異なる心臓部が搭載された背景には、「似たもの同士」のエンジンを搭載するに至ったこの段階で、改めて両者のヒエラルキーを明確にしておきたいという、マーケティング戦略に関しては殊更のこだわりを示すポルシェ社ならではの意図も感じられる。

実際、もはや500ps級のスペックを手に入れたGT3系用ユニットに対して、718GT4用の最高出力は420psとその差は歴然。レブリミットも、GT3が9000rpmと「常識外れの高回転」であるのに対して、718GT4では8000rpmと1000rpmもの差が存在する。率直なところ歯を食いしばって(?)アクセルペダルを踏み続けた際の官能度にそれなりに大きな差が開くのは、実際に体験済みの事柄でもある。

とはいえ、こうして「やっぱり911GT3にはこのモデルだけの孤高の世界があるよね」と強く実感させられるのは、得意とする舞台をサーキットに特化させたことで、そのパフォーマンスが「頂点勝負」で仕上げられているからでもある。

かくして、そんな限界領域で比較をしない限り、今度はさしたる動力性能の差も明らかにならないとびきりの速さを味わわせてくれるのが、718GT4用をディチューンした心臓の持ち主である今回主役の718ケイマン/ボクスターの「GTS4.0」なのだ。

すでにPDK仕様の追加設定も明らかにされているこのモデルだが、まずは最初にローンチされた6MT仕様が日本への上陸を果たしたので、さっそくテストドライブへと連れ出すことになった。

サーキットより街乗りで感じたGTS 4.0の個性と魅力
すでにポルトガルで開催された国際試乗会でのファーストコンタクトを終え、サーキットドライブは経験済み。それゆえ、その走りの印象が痛快そのものであることは理解ができていた。それにしても改めて日本の地でドライブしたGTS4.0の印象は、何とも「期待以上にゴキゲン」と言えるものであった。

すでに幾度となく確認済みであった事柄ながら、右ハンドル仕様でもドライビングポジションはパーフェクト。率直なところ、もはやこうなると、この国であえて左ハンドルモデルに乗ることは「危険で不便」以外の何物でもないと思えてしまうほどだ。

同時に、少々混雑した街中を走ってみると、小気味の良いスタート時のクラッチミートの感触すら心地良く感じる。ショートシフター採用によるちょっと硬めながらストロークが短くカチッと剛性感に富んだシフトフィールと、思いのほか軽く操作感に優れるクラッチペダルのタッチ、そして4Lという大排気量ゆえのアイドリング回転近辺からのトルクの太さなどが絶妙にマッチしていることに気付かされる。

ポルシェ車に限らず数あるMT車の中にあっても、「これほどまでにクラッチミートが心地良い」と思わせるモデルには、なかなかお目に掛かれないのである。

さらに、これはGTS4.0モデルに限らないが、こうした街乗りシーンでの好印象には、現行ボクスター/ケイマンが持つ元来の視界の良さも影響をしている。とくにドライバー側ドアミラー周辺の「抜け」の良さと、パッセンジャー側ダッシュボード上面の低さは出色。このあたりがよく見えないと、とくに街乗りシーンでは無用なストレスを強要されることになってしまうからだ。

たとえ1000rpm付近からでも、不快なこもり音を伴ったりせずに「快適加速」が行えるのも、4Lエンジンの成せる業。望んだとしても急加速など行いようもない常用の場面では、1→2→4→6速といった「飛ばしのシフト」も楽々と行えるのだから、ストレスフリーであることこの上なし。

ただし、減速時に車速ゼロを待たずして作動するアイドリングストップ機構だけは、とくにそこからの再加速時などに鬱陶しく好感は抱けなかった。クルージングシーンでのこもり音を伴う3気筒運転をカットする機能と兼用のアイドリングストップ停止ボタンを、思わず押したくなる衝動に度々駆られることとなったことを告白しておこう。

718GT4系と違って、快適なツーリングが楽しめる
と、このあたりまでの動力性能に関する印象は、すでに経験済みだった718GT4のそれと「何ら変わる部分はない」と言ってもいいもの。だが、一方で「日常使いをするならばやはりこちらで決まりだナ!」と思わされたのは、しなやかさで圧倒的に勝るフットワークのテイストと、対障害角の大きさだった。

共に20インチと同径のシューズを履くにもかかわらず、そのメイクスとサスペンションセッティングの違いによって、路面のおうとつや継ぎ目に対するあたり感はGTS4.0の方がはるかに優しい。

通常の車止めとして用いられる縁石に対してさえも気を遣う必要に迫られる718GT4に比べると、GTS4.0はさすがはカタログモデルだけあって、ベーシックなケイマン/ボクスターと同様の気持ちで縁石や段差へと接近をして行くことができる。これは、とくに街乗りシーンでの実用面で大きなアドバンテージだと感じられる。

クーペゆえボディの剛性感がボクスターを圧倒するケイマンでは、オープンボディのボクスターに対してわずかながらも無駄な動きが抑制され、さらに高いフラット感が提供される。こうして、ストイックに走りの機能が優先されたケイマンを選ぶか、オープンエアモータリングという飛び切りのプレゼントがアドオンされるボクスターを選択するか、このあたりはまさに「お好み次第でどちらでも」という印象だ。

というわけで、日常的な使い方にフォーカスをした場合、当然718GT4に対するアドバンテージが大きく感じられるGTS4.0だが、その気になってアクセルペダルを深く踏み込めば、0→100km/h加速タイムが4.5秒という怒涛の加速力、4気筒ユニットではどうやっても表現が不可能な、回転数の高まりと共に透明度を増して行く官能的サウンドを聞かせてくれるという二面性が固有の魅力を提供してくれることになるのもまたこのモデルならではの特徴だ。

燃費や騒音、その他さまざまな規制が次々と押し寄せ、「純エンジンを搭載するスポーツカーも、いつまで生きていける?」と問われる今の時代、一度は諦めかけた自然吸気のフラット6を搭載し、実際にそうした記号に負けることのないGTS4.0の名が与えられたケイマンとボクスターは、往年のポルシェファンにとっても、そして何よりも「私的」にも、大本命のモデルであることは間違いないのである。(文:河村康彦)

■ポルシェ718ケイマンGTS4.0主要諸元
●全長×全幅×全高=4405×1800×1285mm
●ホイールベース=2475mm
●車両重量=1480kg
●エンジン= 対6DOHC
●総排気量=3995cc
●最高出力=400ps/7000rpm
●最大トルク=420Nm/5000-6500rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=6速MT
●車両価格(税込)=1101万円

■ポルシェ718ボクスターGTS4.0主要諸元
●全長×全幅×全高=4390×1800×1270mm
●ホイールベース=2475mm
●車両重量=1480kg
●エンジン= 対6DOHC
●総排気量=3995cc
●最高出力=400ps/7000rpm
●最大トルク=420Nm/5000-6500rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=6速MT
●車両価格(税込)=1140万円

[ アルバム : ポルシェ718ケイマン&ボクスターGTS4.0 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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