“カーブレイカー・ラリー”の異名をとるギリシャのアクロポリス・ラリーが2013年以来、8年ぶりにWRC世界ラリー選手権のカレンダーへのカムバックを果たし、9月9~12日に開催される。そんな2021年シーズン第9戦ギリシャのスタートを前に、最高峰カテゴリーであるWRCクラスを戦うMスポーツ・フォード、ヒュンダイ、トヨタの各陣営から今戦に出場するドライバーたちの事前コメントが発表された。
今年19年ぶりにWRCに復帰した『サファリ・ラリー・ケニア』と同じく長い歴史を持ち、シリーズにおいてもその名をよく知られるイベントが、8年ぶりに世界選手権の1戦『アクロポリス・ラリー・ギリシャ』として復活する。
トヨタWRCチーム、8年ぶり開催のアクロポリス・ラリーへ「経験を活かし好結果を期待」とラトバラ
以前のアクロポリス・ラリーは、非常に荒れた路面と高い気温のなかで争われることから大きなダメージを負うクルマが続出。冒頭の異名で呼ばれることもあった。しかし年々路面状態が改善され、とくに今年はラリーの主催者が路面の整備に注力したため、比較的良好なコンディションの道での戦いになることが予想されている。
そんな2021年大会は9日(木)に古代都市アクロポリスの城塞下でセレモニアルスタートが行われた後、アテネ中心部の市街地ステージでスタートが切られ、翌10日(金)から本格的なグラベル(未舗装路)ラリーが開始される。
その金曜はアテネ西部でSS2~4が行われた後、サービスパークが置かれるラミアに戻る途中でSS5~6を実施する。土曜は6本のSSを日中のサービスを挟んで走行する予定。同日のステージ合計距離は132.56kmと今大会最長だ。
最終日の12日(日)は有名なステージである“ターザン”と大会最長ステージ、全長33.2kmの“ピルゴス”で計3本のSSが行われ、最終SS15“ターザン2”はトップ5タイムを記録したドライバーとマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられるパワーステージとなっている。全15本のSSから成る競技区間の延長は292.19km。リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は1285.85kmだ。
■Mスポーツ・フォードWRT
●ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)
「アクロポリスは、ラリーをやめることになる前に出てみたい僕のイベントリストにあるラリーだから、長いこと楽しみにしていたんだ。僕はラフなラリーを楽しむ傾向がある。どのようになるかアイデアを得るために昔の映像を見て、準備を万全に整えているよ」
「また、非常に高い気温が予想されてるので、9日間加熱室に入った。今の予報は摂氏40度ではなく30度になっているけれどね。それでも暑い方だけど普通のことだ」
「アクロポリスとトルコを比べると、誰もがずっと全開で走行しているのが分かる。つまりラフな環境に集中しながらも、ある程度機械を労らなければならないということだ。なぜなら岩盤はサスペンションやタイヤにとって厳しいものになるだろうからね。通常、路面がラフな場合はあらゆることが起こり得るから、エキサイティングな状況だ」
「1回しか走行しないステージが多くあるということは、以前よりもラフにはならないということだ。2回目の走行がなく、僕たちの走行順は有利になるからね。したがって金曜日は僕たちにとって非常に良い日になるだろう。このチャンスを最大限に活かそうと計画しているよ。僕たちにはラフなコンディションに合ったマシンがあるし、とても強力なラリーができると思う」
●アドリアン・フルモー(フォード・フィエスタWRC)
「ほとんどの場合と同じように、ここも僕にとって初めてのラリーだ。でも子供の頃プレイステーションで遊んだことは覚えているけれどね! 一部のドライバーは経験があるが、それも8年前のことでマシンも大きく変化している」
「他のラリーでそうしているように、しっかりと準備をしている。ビデオを見て心身のトレーニングをしているんだ。前回のベルギーでのラリーではトラブルがあったから、シーズン序盤のポジティブな姿勢に戻りたい。そして経験を積み重ねていくよ」
「アクロポリスは来年もWRCに組み込まれているから、すべてのステージで経験を積む必要がある。暑さのなか予想もしないようなところで、大きな岩が道の真ん中に現れるようなとてもタフなラリーになることは分かっている。大きなチャレンジになる。パンクが起きたり、もしかしたら機械にダメージを被るかもしれない」
「トルコとサファリでの経験を活かすつもりだ。それはマシンのセットアップにも役に立つ。サファリでの金曜日は、マシンを労わるのに慎重になりすぎたかもしれない。でもラフなラリーでのマシンの限界についてはさらに理解できているし、マシンが非常に強力だということも分かっている」
「この種のイベントでは多くのことが起きることは分かっているから、ラリーではベストを尽くすし、良いステージタイムを出す努力をする。でも一番重要なのは、トラブルなしで良い結果とともに完走することだ。過去にMスポーツが得意としたラリーだ。2021年も同様であることを期待しているよ」
■ヒュンダイ・シェル・モビスWRT
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「アクロポリス・ラリーはタフなイベントになるだろう。2012年と2013年にここでラリーをしたが、当時のアルゼンチンと並んでもっともタフなラリーのひとつだった。いつも楽しんでいたけれどね」
「僕たちは2年前、ラリー・トルコの準備のためにギリシャでテストをしたから、ここの地形については多少の知識がある。ステージはとても曲がりくねった形状をしていて、路面にはもろい石がたくさんある。気温は高いし、トルコの荒れたコンディションととても似たものになるだろう。とてもチャレンジングだね」
「全開で進む必要がある一方で、マシンとタイヤを労らなければならない。戦略が非常に重要だが、僕たちはそれが気に入っている。また好結果を出せるだろうと高い期待を持っているし、楽しみにしているよ」
●オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)
「8年前にギリシャで行われた前回のWRCラリーから長い時間が経っている。アクロポリス・ラリーは長い歴史と伝統を持つイベントだ。だから戻ってこられてうれしいよ」
「前回ここでラリーをしたのは2012年のことだ。ずいぶん前のことだが、素晴らしい思い出がたくさんあるよ。アクロポリス・ラリーは、いつもならその年の一番ラフなイベントとなるラリー・トルコの代替地としてぴったりだ。素晴らしいイベントになると思う」
「骨の折れるラリーだが、ステージは本当に特別で流れるようなところなんだ。ラリーに戻って良い結果を持ち帰るのが待ちきれないよ」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「アクロポリス・ラリーは、過去にここでラリーをしたときは、もっとも過酷なラリーのひとつだった。でも全体的に良いステージがある素晴らしいラリーだよ」
「通常、主な課題は岩が突き出た路面だ。タイヤにとって本当に厳しいし、気温も高い。このラリーでは多くの問題が出るかもしれないが、カレンダーにはポルトガルやサルディニアのように、同様に過酷なラリーが他にもある。だからこの種のイベントに対して僕たちはより準備ができているかもしれないよ」
「全体を眺めてみれば、僕たちの出走順は有利だ。後の方でスタートできるのは良いことだし、初日の出走順を最大限に活用するつもりだ」
「スタートするのが待ちきれないね。これはカンディード(・カレラ/コドライバー)と僕が組む初のラリーとなるから、良い結果が出せるよう願っている」
■TOYOTA GAZOO Racing WRT
●セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)
「WRCがギリシャに戻ってくるのはうれしいことだ。アクロポリス・ラリーはWRCの歴史を作ったイベントのひとつだが、ここ数年は開催されてこなかった。ギリシャは大好きな国なので、また訪れるのが楽しみだよ」
「もちろん、過去の経験からどんなことが起こり得るかある程度予測できるが、全員が新しいペースノートを作成しなければならないという意味では、新しいイベントであるとも言える」
「1番手でステージを走ることが難しいラリーだとは思うが、選手権で首位につけているのは素晴らしいことだし、このリードを保つために全力を尽くすのが我々の目標だ」
●エルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)
「2012年に一度だけアクロポリス・ラリーに出場したことがある。しかし、その時は二輪駆動車だった。だからWRカーでアクロポリスに臨む今回は、間違いなく前回とは大きく異なる体験になるだろうし、新たに多くのペースノートを作成しなくてはならない」
「スコット(・マーティン/コドライバー)の方がやや経験が多いとはいえ、僕にとってはまったく新しいラリーに出場するようなものだ」
「今回は一度しか走らないステージが多くあり、それが他のラリーと異なる点だ。そのため、通常ドライコンディションのグラベルラリーで強いられる、路面のルーズグラベルを掃き飛ばしながら走る機会がいつも以上に多くなる。どのような展開になるのか予想できないが、最高の結果を得るためにいつもと同じように努めるよ」
●カッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「今回もまた、歴史的なWRCイベントに出場できることをうれしく思う。以前のアクロポリス・ラリーは、非常にタフなイベントだったと理解している。映像を見る限り、今年の大会の路面コンディションは以前よりも良くなっているみたいだから面白いイベントになりそうだね」
「ただし、一度しか走らないステージが多くあるため、路面が滑りやすい最初の走行時にマッチしたセットアップに仕上げることが重要だし、その点を重視して事前のテストを行った」
「今回もまた表彰台を狙えるようなペースで走りたいけど、まずはクリーンにラリーを戦い、どのような結果を得られるのか様子を見たいと思う」
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