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「ホンダらしさ」はどこへ… 新社長の思惑と新型シビックとスポーツカー戦略の行方

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「ホンダらしさ」はどこへ… 新社長の思惑と新型シビックとスポーツカー戦略の行方

 ホンダは米国でこのほど新型シビックのSiを発表。シビックSiは、高性能モデルの「タイプR」と、標準モデルの間を埋めるグレードだが、間もなく登場が期待されている320psの2L新型ターボを積む新型シビックタイプRはふつうのクルマ好きには過剰なモデルであるのも事実。

 現在のホンダの舵取りをしているのは今年4月から就任した三部敏宏社長だが、実は三部社長は1987年の入社当時、ホンダでF1をやりたくて入社してきた熱いエンジニアだったのだ。そこで、気になる三部体制での今後のホンダスポーツ戦略について、国沢光宏氏が分析する。

F1レッドブル・ホンダピンチ! なんと同点で最終戦! 勢いは完全にメルセデス。ここまで差をつけられたワケとは?

文/国沢光宏、写真/ホンダ、ベストカー編集部

[gallink]

■ホンダの社長が「手の届きやすい価格のスポーツカーを考えている」らしい!?

 ホンダがトヨタの「トヨタイムス」と同じような自社メディアである「ホンダストーリーズ」を立ち上げた。三部社長も登場しており、今後のホンダについてさまざまな話をしている。そのなかで興味深かったのが「必ずそう遠くないうちにホンダらしいクルマを出します。スポーツカーも手の届きやすい価格帯含めて複数の選択肢を考えている」という下り。

Honda公式サイトのHonda Stories「今が第二の創業期」~経営の覚悟とHondaらしさ  で三部社長は「スポーツカーも手の届きやすい価格帯含めて複数の選択肢を考えているので、楽しみにしていてください。」と語っている

 ここで大いに気になるのが「ホンダらしいクルマ」という概念。筆頭項目はスポーツモデルなのかと思いきや違いました。三部さん曰く、「新しい価値を表現して、それをお客さまに新しいモビリティとして提供していくことがホンダらしさじゃないかな」。これだけ聞くと漠然とした内容なのだけれど、具体的な内容を少し説明している。

 ひとつ目に「空間価値がこれから重要になっていく。単なる移動手段ではなく、クルマという空間の使い方の可能性が広がります」。インタビュアーはスポーツカーに対する答えを期待したんだと思う。「EVでもタイプRのようなホンダならではのワクワクするクルマを期待していいのでしょうか」と空間以外の質問をしている。

 それに対する答えは非常に短い。文頭で書いた「手の届きやすい価格帯を含むスポーツカーを出す」ということのようだ。残念なことに「ホンダらしさ」について触れているのは、空間価値とスポーツカーだけだった。三部社長、就任以来、メディアの個別取材を受けないため、ホンダの方向性をどうしていくのかわからないです。

■ホンダらしさの象徴は「スーパーカブ」であり、「N360」だと思う

 参考までに書いておくと、私にとってのホンダらしさとは「本田宗一郎さんのDNAを感じること」だと思っている。本田宗一郎さんの原点といえば、最初作った社是にあるとおり、「性能の優れた廉価な製品を生産する」。誰にでも買えるプライベートな移動手段で人間を幸せにしたい、ということ。象徴的なのがスーパーカブです。

スーパーカブに乗るホンダ創業者の本田宗一郎氏(1971年に鈴鹿製作所で行われた二輪車生産累計1000万台達成セレモニーでの写真)

 スーパーカブを移動手段にすることでさまざまな仕事ができるようになった。仕事の道具にもなっている。自動車の黎明期、安価で性能がよかったN360はスバル360と並び日本の重要車の元祖です。はたまた燃費よくて高性能なシビックがアメリカで自動車の概念を変えた。ホンダのヒット作、すべて社是のとおりだと思う。

 本田宗一郎さんの面白さは、単なる道具で終わらせなかったところにある。技術に夢を乗せた。だからこそ早い時期に世界へ出て行き、レース活動を開始。鈴鹿サーキットを作り、4輪車を販売する前からF1参戦を決めている。私がインタビュアーなら三部さんに「車両空間をホンダらしさの一丁目一番地だと本当に思いますか?」と問いたい。

■「タイプR」に「Si」登場の新型シビックにホンダらしさを感じるか

2021年8月に発表された新型シビック。ホンダは軽自動車以外でMT車を設定しているのはシビックだけであり、受注における6MT車の割合は3割を超える好調ぶり

 新型シビックに試乗した。さすがアメリカで絶大な人気を持つだけあり、正統派のいいクルマだと思う。ただ、残念なことに日本市場においては「廉価」と言えない。「性能の優れた」という点でも、燃費や動力性能で競合車に勝てていると思えない。新型シビックに乗って「ホンダらしいか?」と聞かれたら、う~んとウナるのみ。

 登場がアナウンスされている「新型シビックタイプR」はどうか? 320psとも言われており、2LFFで世界最速を狙うようだ(4WDだと421psのAMG A45に届かない)。こちらはホンダらしさを感じる。ホンダストーリーズのインタビュアーも、タイプRに対する期待値が大きいように思う。ただ、少しばかり高価。

次期型シビックタイプR(画像はベストカー編集部制作の予想CG)。次期型タイプRは2L直4VTECターボを継続採用する公算が高く、最後の純内燃機関仕様となる可能性がある

 おそらく次期型も500万円超えになるだろう。やはり手が届く価格帯のスポーツカーに期待しまう。ちなみに新型シビック、アメリカで1.5L直噴ターボから200psを引き出すSiを発表している。Siというグレード、我が国におけるシビック全盛期のスポーツタイプのモデルです。SEMAショーでもスポーツモデルという位置づけ。

12月にアメリカで開催される「サンダーヒル25時間耐久レース」参戦するために製作されたチームホンダリサーチウエスト(THR-W)のシビックSiレーシングカー

 このエンジンを日本で出したらどうか? 今のホンダであれば、標準のシビックの182psから200psに向上させ、エクステリアもスポーティな雰囲気として400万円くらいだと思う。猛烈なファン層が買うかもしれないが、往年のシビックSiのようなイキオイにはならないだろう。オサイフのヒモを千切るような魅力という点で厳しい。

 いろんな意味で「ホンダらしさ」を感じないです。このあたりで三部さんが発起人になり、ホンダらしさの源となってきた「ワイガヤ」(立場を問わないフリートーク)を真剣に考えたらいかがか? 外部の人を入れたっていいと思う。このままだと日本人にとってホンダというブランドイメージはドンドン薄れていくと考えます。

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みんなのコメント

80件
  • >国沢光宏氏が分析する。

    記事に興味はあったけどここで読むのやめた
  • ホンダの場合、将来の邪魔をするのは
    安地ではなくむしろ熱狂的信者。

    特に1980〜1990年代のホンダ車やその周りで
    あった出来事を基準にああしろこうしろと
    騒ぐヤツがそうだ。

    その頃に20〜30代だった人は今何歳だと思う?
    60〜70代のおじいちゃんがギャーギャー騒いで
    いるんだよ。つまりホンダ版サンデーモーニングの
    状態、そんなの相手するな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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