この記事をまとめると
■日本では1969年に運転席へのヘッドレスト設置が義務化された
外すのは論外! 付いていても調整しないと効果は半減! 頭を休める役割「じゃない」クルマのヘッドレストの重要性
■正式名称の「ヘッドレストレイント」のとおり衝突事故などの際に頸椎を保護する働きがある
■走り出す前に乗員全員がヘッドレストの位置調節を行うことが大切
乗員の安全を守るためになくてはならない安全装備
クルマのシートに座ると、頭の後ろまで高さのある「ヘッドレスト」がついています。1969年に日本でシートベルトの装着とともに運転席へのヘッドレスト設置が義務化され、1973年には助手席にも義務化されました。後席への義務化は行われていませんが、現在販売されているほぼすべてのクルマで、乗車定員分のヘッドレストが設置されています。
なぜかというと、ヘッドレストは乗員の安全を守るためになくてはならない、とても重要な安全装置のひとつだからなのです。ヘッドレストという名前は通称で、正式名称は「ヘッドレストレイント」といいます。つまり、頭を「レスト=休めるもの」ではなく、「レストレイント=拘束するもの」。衝突事故の際の衝撃から頭を守り、鞭打ちなどの被害を最小限に抑えてくれる、大切な働きをもっています。
ちなみに日本語では「頭部後傾抑止装置」と呼ばれ、道路運送車両の保安基準第22条の4で設置が定められており、その性能についても次のように基準が定められています。 「一 他の自動車の追突等による衝撃を受けた場合において、当該自動車の乗車人員の頭部の過度の後傾を有効に防止することのできるものであること」
「二 乗車人員の頭部等に傷害を与えるおそれのない構造のものであること」
「三 頭部後傾抑止装置の後面部分は、衝突等による衝撃を受けた場合における当該後部後傾抑止装置を備える座席の後方の乗車人員に過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造であること」 シート差し込み式で取り外しができるタイプのへッドレストについては、振動や衝撃などによって脱落することのないように備えられたものであることも条件です。最近は部品点数やコストの削減、スペースの効率化やデザイン的な理由、包まれるような座り心地へのこだわりなどによって、ヘッドレスト一体式のシートも増えていますが、まだまだシート差し込み式が主流ではないでしょうか。
正しい調整をして万が一に備えよう
じつはこのシート差し込み式のへッドレストは、自分で高さを正しい位置に調整しておかないと、万が一の衝突事故の際に安全性能がうまく発揮されない可能性があることをご存じでしょうか。
交通事故総合分析センター(イタルダ)では、衝突の際に瞬時にヘッドレストが正しい位置に自動で調整されるアクティブヘッドレストが装備されていた場合と、装備されていなかった(つまり正しい位置ではなかった可能性が高い)場合で、2000年から2004年の間に起こった760件の追突事故において、運転者がむち打ち症を発症したかどうかを調査。その結果、アクティブヘッドレストありのほうは発症しなかった割合が16.7%、なしのほうは7.4%と明らかに差がついたことがわかっています。
では、へッドレストの正しい位置とはどこなのでしょうか。シートに深く腰掛け、背もたれに身体を密着させた際に、自分の頭頂とへッドレストの上部が水平(同じ高さ)にくるのが正しい位置です。もし、長身の方で自分の頭のほうが上に出てしまう場合には、できる限りへッドレストレイントの高さを上げ、「頭を後ろに傾けたときにヘッドレストの上部に乗り上げてしまうことがないような高さ」かつ、 「車両前方に、つまり、頭の近くにくるように」というふたつのポイントを意識しましょう。
もし、正しい位置に調整していなかった場合、追突事故が起こってしまったらどうなるのか。茨城県つくば市周辺でイタルダが独自に調査した例によれば、右折待ちをしているところに後ろから追突された女性は、ヘッドレストが低い位置のままだったため、全治14日間のむち打ち症と腰椎捻挫を負ったそうです。
ヘッドレストは決して頭を休める枕のようなものではなく、頭を守ってくれる安全装置であるということをしっかり認識して、走り出す前に乗員全員が正しい位置に調整することが大切ですね。
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