世界戦略車構想を軸としたモデル展開を図ってきたオペル。80~90年代は『CORSA』『KADETT』『VECTRA』『OMEGA』『SENATOR』とその進化版がブランドを支えてきた。
ラインアップの拡充や品質の向上に注力しながら順調にその足場を固めていったOPEL。ゼネラルモーターズの元を離れ、ステランティスの一員として、新たな飛躍を目指し、未来へと歩み出している。
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挑戦なくして飛躍なし広がる活躍の舞台
創業以来のオペルのテーマと言えるのは、常に良質なベーシックカーを提供するということ。1980年代はその命題を具体化した『CORSA』のデビューで幕を開けた。『KADETT』の下に位置するこのコンパクトモデルは、引き続き当時のゼネラルモーターズが提唱していた世界戦略車構想の〝Sカー〟に当たる。グローバル・ベーシック・スタンダードを目指した『CORSA』は、実用コンパクトの公式とも言えるFWDハッチバックのスタイルで、スペースを最大限に活用し、エントリーユーザーの獲得に貢献した。
その上のクラスでもワールドワイドを意識したクルマ造りが続けられ〝Jカー〟と呼ばれる第3世代の『ASCONA』が登場したのは83年のことだ。この頃の技術的ハイライトといえば、やはり空力デザインの進化だろう。実際、どのセグメントにおいてもオペルによるボディーワークはトップクラスの空気抵抗係数を叩き出していた。そして90年代に向けてまた新たなステップを踏むように、一部のモデルはそのネーミングを刷新しながらラインアップを構築していった。そこに加わったのが『MANTA』以来のスペシャルティークーペである『CALIBRA』だ。流麗なボディーは当時、世界で最も優れた空力性能を得ていた。加えてドイツツーリングカー選手権での大活躍もあってその名前が歴史に刻まれている。また一方でコンパクトクラスにクーペの要素を持ち込んだ『TIGRA』も注目の的であった。80年代中期から90年代は、先に述べた空力デザインのほかにもECOTECエンジンの採用やボディーパネルをはじめとするパーツのリサイクル率アップ、水溶性ペイントの採用など、環境に配慮したソリューションが数多く盛り込まれたのが特徴だ。
そんな充実の一途をたどっていくオペルのラインアップをさらに強固にしたのが『ZAFIRA』だ。7人乗りのコンパクトミニバンはユーザーの声に応えるべく多彩なシートアレンジを提供。使い勝手のよいこのシステムは、後々の歴代モデルにも受け継がれていく。
また『ZAFIRA』をベースとした燃料電池車の展開も見逃せない。『GT』の時代からすでにEV開発に力を注いでいたオペルは、電動車の可能性を広げることも忘れず、2010年には『AMPERA』をリリース。その意志は最新の『CORSA-E』に受け継がれた。
かように、いつの時代もその時々の流れを読み、着実なステップを踏みながら成長を遂げてきたのがオペルというブランドだ。
その歴史はバランス感覚に優れた技術開発とモデル展開に支えられてきたのである。
『VECTRA』をベースに仕立てられたスペシャルティークーペ『CALIBRA』は、当時世界最良の空気抵抗係数を達成。OPELのエアロダイナミクスの集大成ともいうべきモデルだ。
市販車の開発とともに続けられる未来に向けた提案
交換可能なドライブユニットを備えたシティーコミューターコンセプトの『TWIN』や燃料電池車『HYDROGEN』、ディーゼル搭載の実験モデル『ECO SPEEDSTER』、EV『AMPERA』など様々なソリューションの提案も怠らない。
何よりも実を取る製品開発で、見よがしなデザイン的主張は避けてきたOPEL。しかし、巻頭パートでも紹介しているように、ここへ来てのフロントデザインは〝バイザーフェイス〟の採用で新たなフェーズに入った。
取材・文/桐畑恒治
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