栃木県のツインリンクもてぎで開催されている2021年全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦。今シーズンのスーパーフォーミュラで強さを見せているのが現在ランキングトップの野尻智紀(TEAM MUGEN)だ。野尻はこの第6戦で12ポイントを獲得すれば無条件でタイトル決定となるが、そんな野尻に対して待ったを掛けたいのが、チャンピオンの可能性を残して第6戦を迎えた4名。10月16日の午後には公式予選が行われたが、悲喜こもごもな予選日について聞いた。
まずは、野尻から35ポイント差でランキング2位につけている大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)だ。大湯は午前中に行われた公式練習では4番手タイムを記録したが、クルマの持ち込みセットアップは「順調ではなかった」と語り、予選についてもQ1で記録した2番手タイムは「気合で出したタイム」と振り返る。
大津弘樹、ただ1人“スリック”で挑んだQ3で自身初ポールポジションを獲得【第6戦もてぎ予選レポート】
Q2でも2番手となりQ3進出を果たした大湯だが、Q3に関しては「大津(弘樹/Red Bull MUGEN Team Goh)選手が前で走っていましたが、最後に僕が近づき過ぎてしまい間隔を取っていたのですが、最初はすぐに追いついてしまいました。逆に(スリックタイヤの大津は)どんどんとペースが上がっていくので、そうなると途中で追いついてしまい、同じぐらいのペースになってしまいました。それで大分ロスをしてしまいました」と8番手に終わったQ3を振り返った。
明日の決勝に向けては「8番手からのスタートということで、一番クラッシュに巻き込まれる危険性もあります。だけど、ある意味8番手というのは逆にギャンブルにも出られる順位だと思うので、前方に何かがあったらすり抜け、ある程度のポジションアップができるかもしれません。明日のコンディション次第では良い結果を残せるかもしれないので、そこは楽しみにしています」と語った。
続いてはランキング3位につける関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)。公式練習では16番手に沈んでいた関口だったが、それには降雨の影響があった。
「走り始めはクルマの調子が良かったのですが、途中でどんどんとバランスが悪くなってきました。路面変化を見越してセッティングをしていたのですが、それが追いつかず、路面変化に対してのバランスが悪くなってしまいました。タイムが出なかったのは雨が降ってきたのでアタックを止めてしまったからです。別に16番手が本来のポジションではなかったです」
続く午後の予選で関口はQ1を6番手、Q2ではトップタイムを記録したが、そのタイムも前車に引っかかってコンマ4~5秒ロスしたときのものだという。そんな状態でQ2トップ通過を果たしたときは「これは絶対Q3は貰ったでしょという感じでした」と気持ちが高まっており、迎えたQ3のアタックも「もうミスなく決めて出し切った! と思ったらダメでした」と言うように6番手で終えてしまう。
決勝は「とりあえず優勝したい」と語る関口。「そのためにやらないといけないのは、やはりスタートと1周目をしっかりとして、あとはピットのタイミングとインラップ、アウトラップの速さ。やるべきなのはそこだと分かっているので、うまくやるように努力します」
■「今日は不運で噛み合わなかった」と平川亮
そして今季は第4戦SUGOで自身初優勝を飾り、ランキング4位につけるのが福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だ。福住は午前の練習走行ではトップタイムを記録しており、ドライコンディションでの速さには自信を持っていたようだ。
「ドライに賭けて、いろいろと前回の反省点や課題点、何をどうすればもう少しパフォーマンスを上げられるのかというところを、エンジニアの杉崎(公俊)さんと、今回は前戦から時間が空いていたので話しをさせてもらいました。それで持ち込んだ方向性というのは、今の季節、このコンディションにうまくあっていたのかなと思います」
そんな福住は、まだ雨が降っていなかったドライコンディションの予選Q1 A組でトップタイムを記録したが、続くQ2ではまさかのノックアウトを喫してしまう。
「雨が降ってきたときに周りがどのタイヤを使用したか分かりませんが、その状況で僕はニュータイヤでコースに入り、周りと比べてもまったくタイヤが温まらなくて全然ペースを上げられない状況でした。その段階で雨が振っているので、ピットに入ったほうがいいかなと思ったりもしましたが、僕自身もこのまま行って、ちょっとコンディションが良くなるのを待つことに決めました」
「ですが、それがちょっとうまくいかず、アタックの最後の周でも、2コーナー出口でトラクションが抜けたときに左側に飛び出してしまい、アタックすることができませんでした。フィーリングとしては非常にグリップしていない感覚だったので、(スリックで)トライをした時点で結構厳しい状況だったのかなと思います」
練習走行トップタイムマシンがまさかの予選14番手となってしまったが、明日の決勝に向けては「今回の予選がこういう風になってしまい、また集団のなかでのスタートになると思いますが、明日の天候次第では結構レースが荒れることも予想できますし、きちんと生き残り、少しでもポイントを持ち帰れるように頑張りたいです」と前向きに語っていた。
そして最後は、この第6戦の予選でポールポジションを獲得しなければ、タイトル争いから脱落となる平川亮(carenex TEAM IMPUL)に話を聞いた。
平川は予選に関して「朝の公式練習では調子が良かったので、そこからアジャストして臨みました。Q1では1台(小林可夢偉/KCMG)がクラッシュしてしまったので、ノックアウトが1台しかおらず、アタックも最後の1周しかなかったので、あまりリスクも取らず、練習走行の調子も良かったのでドライに関しては自信がありました」
しかし雨が降り始めたQ2で平川はまさかのノックアウトを喫してしまい、タイトル争いからはここで脱落となってしまった。
「Q2は運がなかったとしか言えないです。スリックタイヤで出ていきましたが(雨が降ってきた影響で)1コーナーでハーフスピンをしてしまって、次の周はスリックでは行けないと思いウエットタイヤに替えました。ウエットに交換しても(アタックに)間に合うという話だったのですが、残り2秒くらいで間に合いませんでした。基本的にウエットのほうがタイムは全然速かったので、そこは残念ですが、不運ということで仕方ないです」
タイトル争い脱落については「野尻選手が前半戦で3回勝っていますからね」とコメントした平川だが、気持ちはすでに次の戦いに向いているようだ。
「逆に自分たちが噛み合っていない感じもあるので、そこをしっかりと修正したいと思っています。今日は不運で噛み合わなかったですが、まだ残り2回レースがあるので、まだやれることはあると思います。あとはチームタイトルも掛かっているので、そこはチームとして狙いたいので、まだまだこれからです」
数字的には逆転タイトルは難しいチャレンジャーたちだが、明日の決勝はコンディションも不安定のようで望みがまったくないわけではない。今回の予選日は野尻に軍配が上がる形になったが、明日の決勝、すんなりとタイトルを決められるのと、そうではないのとでは、彼らの今後のドライバー人生にも関わってくる。より厳しくなった逆境のなかでのチャレンジャーたちのドライバーとしての矜持、そして意地を決勝で見てみたい。
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