待望の新型ディフェンダーが日本に上陸した。ランドローバーのアイコニックなモデルを現代風に解釈した、ポップで洗練されたデザインと実用的な機能を新たに採用。もちろん、史上最も頑丈なボディ構造により、高い走破性と耐久性を持つ本格的オフローダーであることは間違いない!
新型ディフェンダーの圧倒的な存在感
【比較試乗】「ランドローバー・2020年式ディフェンダー110 vs 2002年式ディフェンダー110 TD5」初代のDNAはどう受け継がれているのか?
どういう経緯だったのかまったく思い出せないのだけれど、ずいぶん前にイギリスでディフェンダーに乗せてもらったことがあった。それ自体が仕事ではなく、なにかのついでだったので、ボディタイプやエンジンなんかもまったく覚えていない。でもいまでも鮮明に記憶に残っているのは乗り心地がえらく悪かったことと、走っている時にフロアから路面が見えていたことである。錆び付いたフロアに穴が開いていたのだ。以来、ディフェンダーとはそういうクルマなんだと自分の頭の中に刻まれてしまった。初めて見た者を親だと思うようなものである。
だから新型ディフェンダーとの初対面ではしばし口をあんぐりさせてしまった。確かにエクステリアデザインの随所には、ディフェンダーのヘリテージを感じさせるモチーフや様式が取り込まれていて、ランドローバーのデザイナーの力量がいかんなく発揮されていると思う。そう頭では理解していても、あまりにもモダンな風体に様変わりしてしまって、自分の知っている穴の開いたディフェンダーとのギャップに戸惑うばかりだった。だって写真をご覧になっても分かるように、カメラマンが銀座の高級ブティックを背景に選びたくなるようなスタイリングなのである。以前のディフェンダーなら、とりあえず山か河原か湖畔あたりで撮影していたに違いない。
もうひとつ、口をあんぐりさせた理由がある。そのサイズである。おそらく新型ディフェンダーを初めて見た9割以上の人はまず「デカっ!」と思わず漏らすだろう。自分は「デカっ!」を3回くらい連呼してしまった。ボディサイズは全長4945mm/全幅1995mm/全高1970mm/ホイールベース3020mmである。そして圧倒的質量感を醸し出してる原因が約2mの全幅にあるのは確かだ。これまで自分が運転したSUVの中でもっとも全幅が広かったのはおそらくアウディQ8で、それも1995mmだったけれど、ディフェンダーのほうが全幅は広く見える。ちなみに本国仕様では全幅が2008mmで、ミラー展開時(=通常時)には2105mmと書かれている。感覚的には本国の数値のほうがしっくりくる。全幅に引っ張られて全高も高く見えるが、メルセデスGクラスよりは低い。
日本の自動車事情を取り巻く環境では、ディフェンダーが欲しくても自分の駐車場に入らない、あるいは入ってもドアが開かないなどの理由で購入を断念する人も少なくないだろう。たとえ駐車場問題をクリアして手に入れたとしても、日常の運転では全幅だけでなく、今度は3mを超えるホイールベースにも気を遣うことになる。前輪は思ったよりも切れるものの、物理的に広い全幅とホイールベースにより、取り回しは決していいとは言えない。特に都内の繁華街などに出掛ける際には、事前にディフェンダーを許容してくれる駐車場を探しておいたほうがいいかもしれない。
非の打ち所のない新型の仕上がり
ボディサイズ由来の不安を除けば、新型ディフェンダーはほとんど非の打ち所がなかった。ほぼ1日付き合ってみたけれど、イヤなところはひとつもなく、 むしろ 「これはいいかも」と感心して唸るところが多かったのである。それは主に操縦性と乗り心地で、110の乗り味を支配しているのはエアサスペンションに他ならない。
ロングホイールベースと2トンを超える車両重量のおかげである程度の乗り心地は担保できるはずだけれど、電子制御式ダンパーと空気ばねの組み合わせによるエアサスペンションが路面からの入力を巧みに吸収し、速度や路面状況を問わず常に一定レベルの快適な乗り心地を提供してくれる。クラストップレベルのオフロード走破性を備えたへビューデューティなSUVであることを考慮すると、オンロードでのこの優れた乗り心地には脱帽する。
前がダブルウイッシュボーン、後ろがマルチリンクのエアサスペンションのポテンシャルを十分に発揮しているのは、頑丈なボディやシャシーのおかげもあるだろう。新型ディフェンダーは“D7x”と呼ぶ新しいアーキテクチュアを使用している。資料によれば「従来のラダーフレーム構造と比較して3倍のねじり剛性を確保」とある。額面通りに受け取ると、ランドローバーにとってラダーフレームはもはや過去の遺産という認識なのだろう。以前のディフェンダーが採用していたラダーフレーム+リジットアクスルと同等レベルのオフロード性能を確保しつつ、オンロード性能を飛躍的に向上させることに、この新しいアーキテクチャで成功したというわけだ。
エアサスペンションはハンドリングでも大活躍をする。車高と重心が高いSUVではどうしてもばね上が大きく動いてしまう。このエアサスはばね下のみならずばね上も上手にコントロールしているようで、コーナーの進入から脱出までの間に発生するピッチ/ロール/ヨーのつながりがスムーズかつ適度に抑え込むから、いわゆる「グラッ」とした挙動は皆無だ。ステアリングの動きに対してクルマは従順に向きを変え、極端なアンダーステアも出ず、とにかく気持ちよく曲がってくれる。
こんなに大きなボディをここまでドライバーの意志通りに動かせるとは正直思ってもみなかったので驚いた次第である。
エンジンはいまのところ2Lの直列4気筒ターボのみで、これに8速ATが組み合わされる。300ps/400Nmのパワーは2.2トンを動かすのに十分なのだろうかと心配だったがさにあらず。市街地での発進、高速道路での加速や追い越しなど、日常の場面でパワー不足を感じることは一度もなかった。
今回は5ドアの110(ワンテン)だが、3ドアでショートホイールベース (全幅は110と同値)の90(ナイティ)も日本向けには用意されている。エンジンは1種類でボディは2タイプだけだが、新型ディフェンダーには多彩な仕様とオプションが用意されていて、カタログを眺めているだけでも楽しくなる。試乗車は110のベースモデルに“アドベンチャーパック”と呼ぶオプションが装着されている。中でも驚いたのが、ラゲッジルームに内蔵されたエアコンプレッサーである。タイヤに空気を入れることはもちろん、“ポータブルシャワーシステム”という6.5Lタンク付きの高圧洗浄機まで付属していた。このクルマの使われ方を熟知した装備は誠に天晴れである。
そしてやはり最大の魅力は価格だろう。試乗車の本体価格は589万円、アドベンチャーパックは約37万円である。競合のドイツ車に比べるとずいぶん安い。というか、やっぱりいまのドイツ車の価格が高すぎるのだ。
【Accessories】4つのアクセサリーパッケージを用意
以下の写真3点はエアコンプレッサーやポータブルシャワー、サイドマウントギアキャリア、スペアタイヤカバーなど、様々なアクティビティで役立つ機能を備えた「アドベンチャーパック」。ほかにも、走破性能を高める「エクスプローラーパック」、アウトドアで利便性を発揮する「カントリーパック」、スタイリッシュな機能美を備えた「アーバンパック」を用意する。
【Specification】ランドローバー ディフェンダー110[90]
■車両本体価格(税込)=5,890,000円[ディフェンダー90=4,990,000円]
■全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
■ホイールベース=3020mm
■トレッド=前1700、後1685mm
■車両重量=2240kg
■乗車定員=5/7名
■エンジン型式/種類=PT204/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行径=83.0×92.mm2
■総排気量=1995cc
■最高出力=300ps(221kW)/5500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000rpm
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=8.3km/L
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/エア、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後255/70R18(8J)
お問い合わせ
ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-18-5568
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