2月25日、スバル/STIは、静岡県の富士スピードウェイで2022年モデルのSUBARU BRZ R&D SPORTをお披露目し、シェイクダウンを行った。2022年はGT300史上初のタイトル連覇を目指して臨むシーズンとなるが、新シーズンに向けて、スバル/STI、R&D SPORTは車両の改良に着手している。そのなかでも、鍵となるのはEJ20エンジンのECUになるかもしれない。
長年R&D SPORTとともにスーパーGTへの挑戦を続けてきたスバル/STIは、2021年から新型BRZをボディに採用したSUBARU BRZ R&D SPORTを投入。井口卓人/山内英輝の抜群のコンビネーションで、見事悲願のGT300クラスチャンピオンを獲得した。
スバル/STI、2022年モデルのSUBARU BRZ R&D SPORTをお披露目。GT300連覇を目指す
2022年に向けて、平岡泰雄STI社長が「なんとか連覇を目指したい」というように、GT300で連覇を飾ったチームはない。その挑戦への権利をつかんだSUBARU BRZ R&D SPORTは、シーズンに向け『シリーズ2連覇(シーズン1勝以上、表彰台3回獲得)』、『全戦ポイント獲得、最後までシリーズ優勝争いに絡み、ファンの期待に応える』、『空力性能向上および状況に合わせたセットアップを極め、コーナリングと速さにいっそう磨きをかける』という目標を掲げた。
この目標に向け、2022年のSUBARU BRZ R&D SPORTに織り込まれるのは、ダウンフォース増加と走行抵抗の低減を目指した空力性能の向上、コーナリングスピードのさらなるアップを目指したシャシー性能の向上、そしてEJ20エンジンの制御系を進化させた、信頼性とパフォーマンスの向上だ。
小澤正弘総監督はこの改良について説明を行ったが、車両について「昨年チャンピオンを獲ったこともあり、我々としてはパワーウエイトレシオが悪化する方向になるであろうと思っています」と参加条件の変更があるのではないかと予測する。
そのうえで、「エンジンの最高出力は比較的低い部類で、トップスピードがいちばんの課題になります。たとえ性能が落とされる、重量が上げられても、空力性能を向上させて、トップスピードを維持する」という方向性で開発していると語った。
この取り組みのなかで行われているのが空力の改良で、フロントフェンダー周辺を中心に2021年と違う形状となっており、今後も新たなパーツがトライされるという。そして、シャシーもセットアップの精度を上げていく。
また、これまでエンジンの制御については、ECUを変更することにしたという。2021年までSUBARU BRZ R&D SPORTに積まれていたEJ20エンジンのECUは「ラリーを戦っていた時代、それこそ2003年くらいに立ち上がったECUをずっと使っていて、熟成されていたもの」だったという。新しいECUを投入することで計算の精度を上げ、エンジン出力を「少しでも刈り取りたい」というのが狙いだ。
これらの変更については、すでに岡山国際サーキット等で行われたスポーツ走行等ですでに井口卓人、山内英輝のふたりがテストをこなし、フィーリングをチェックしてきた。空力については「ものすごく良いフィーリングのものがひとつありました。予選一発では良くても、決勝ではGRスープラ等のライバルがすごく良い印象がありました。その点をうまく採り入れたものです(井口)」と好感触を得ているという。
また山内も車体については、「基本的にまだ大きくは変わっていませんし、コンセプトも変わりませんが、今年はエンジニアも変わりましたし、良い部分も悪い部分もあり、その点を興味深く探りながらトライしています」と語っている。
ただ現段階では、新たに投入されたECUのセットアップが開幕までの課題となりそうだ。「正直に言ってしまうと、まだ不足している部分が大きいです」と山内は言う。「ECUは長年積み重ねてきた経験がパフォーマンスに繋がっていたので、そこにいくまではまだ時間がかかると思っています」と語った。
「もちろん触れる部分は増えているのですが、それを把握していく時間が必要です。まだマックスのパフォーマンスにはぜんぜんたどり着いていません。今の段階ではテストが必要です。メリットもたくさんありますが、デメリットをどう補っていくかですね」
井口もECUについては「変えて良くなった部分もたくさんあります。ただそれ以上に、エンジンとの合わせ込みがまだ正直足りていません。開幕までのテストで昨年までと同等までにもっていくことができれば」と語っている。
現代のレーシングカーではECUの制御は非常に重要度が高いが、開発には大きな労力がかかる。2022年に向けてSUBARU BRZ R&D SPORTが掲げた目標の達成には、ECUの熟成が大きなカギとなりそうだ。そして逆に言えば、このECUが期待どおりのパフォーマンスを発揮すれば、“連覇”という目標が大きく見えてくるのかもしれない。
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