特別な意味を持つCSLのイニシャル
BMW M社が誕生から50周年を迎えたことは、AUTOCARをお読みのクルマ好きならご存知かと思う。そんな彼らは自らの起源を振り返るように、熱烈なファンに向けたM4 CSLを作り上げた。
【画像】ハードコアでも一般道に妥協なし BMW M4 CSL 競合モデルと歴代のCSLも 全131枚
M社は半世紀という大きな節目に、プラグイン・ハイブリッドの大型SUVも発表している。そのBMW XMは時代を捉えたモデルといえ、生まれた理由を理解することはできる。だが、真打ちはM4 CSL。最後の3文字に大きな意味がある。
そんなこと知っているよ、という読者は少しお付き合いいただきたいが、BMW M社の前身はBMW モータースポーツ社。その名の通り、モータースポーツにおける競争力を高めるため、1972年に設立された。
彼らが最初に手掛けた公道用モデルが、レースの参戦規定に合わせたホモロゲーション・モデルとなる、E9型クーペをベースにしたBMW 3.0 CSLだ。バットモービルというあだ名が付くほど、アグレッシブな見た目が特長だった。
それ以来、CSLというイニシャルは、ミュンヘンのブランドにとって特別な意味を含むようになった。しかし、実際の量産モデルへ与えられたのは、2003年に登場したE46型M3のCSLのみ。既に20年近く前のモデルだ。
これまでのM3や、後年に改名されたM4には、GTSやGTRなど特別な仕様が設定されてきた。しかし、CSLを関したモデルは過去に2例だけ。3番目となるG82型が、いかに特別な存在なのかを示している。
快適性を維持しつつM4から100kg減量
このCSLとは、コンペティション・スポーツ・ライトウエイトの略。2003年のE46型M3 CSLは、セミスリック状態のミシュラン・カップ・タイヤを装備し、BMWとして初の公道も走れるレーシングカーといえる内容だった。
カーボンファイバー製のルーフをまとった、同社初の量産モデルでもあった。防音材や純正ナビ、エアコン、パワーシートなどが省かれ、徹底的な軽量化が図られていた。希望すれば、リアシートも取り払うことができた。
その結果、ベースのE46型M3クーペより110kgをダイエット。ライトウエイトと呼ぶのにふさわしい仕上がりといえた。
今回ご紹介するG82型M4 CSLも、現行のM4から100kg車重を削っている。とはいえ、エアコンやステレオ、インフォテインメント・システムなどは残されている。
この手の高性能モデルを即決で契約できる裕福なカーマニアは、日常的に運転できる快適性も重視する。BMWは50年の月日を掛けて、その嗜好を学び取ってきた。
今から18年前に発売されたE46型M3 CSLの英国価格は、5万8000ポンド(約957万円)ほど。一方で2022年のG82型M4 CSLは、12万8820ポンド(約2125万円)となっている。
この間のインフレを換算すると、現代ならE46型M3 CSLは9万ポンド(約1485万円)前後になる。先代のCSLがお手頃な価格設定だったことも、最新版が大幅に値上がりしたこともわかる。
カーボンを多用 リアシートや防音材も削除
BMWは、究極のMモデルとして高い目標を掲げ、新しいM4 CSLを開発した。一定数が売れれば、M社には不足ない収益が入る。需要より少ない供給量の1台を獲得できた幸運なドライバーは、素晴らしいドライビング体験を享受できる。
巧みにバランスされた体系といえる。英国へ導入されるのは、100台に限られる。日本には25台だけがやって来る。
そろそろ具体的にクルマの確認を進めよう。特別なM4であることを誇示するため、大幅なパワーアップと明確なスタイルアップが施されている。
M4 CSLのボンネットとトランクリッドは、ルーフと同様に軽量なカーボンファイバー製。ボディからは、15kgぶんの防音材も取り除かれた。
Mカーボン・レーシング・バケットシートは、標準のM4のシートと比べて1組で24kgも軽い。シート高を変更するには、ディーラーへ持ち込んで作業してもらう必要があるという、モータースポーツにひたむきなアイテムだ。
さらにリアシートなどを省き、21kgを減量。チタン製のエグゾーストシステムは、4kg軽いという。
アルミホイールは特別な鍛造品で、ブレーキはカーボンセラミック・ディスクが標準装備される。それ以外の足まわりも特別仕様となり、シャシー側では21kgを削っている。
ただし、今回の試乗車には通常のMカーボン・バケットシートが組まれていた。ヒーターが内蔵されたパワーシートで、M4 コンペティションにオプション設定されるものと同一らしい。
この続きは後編にて。
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