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伝説的な物語になった「黒歴史」 ロータス・カールトン(2) 盗難被害から水没状態で発見

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伝説的な物語になった「黒歴史」 ロータス・カールトン(2) 盗難被害から水没状態で発見

窃盗団追跡の最終手段はヘリコプター

グレートブリテン島中部、ウェスト・ミッドランズ州のレディッチやブロムスグローブという町では、同じ商店が2度も窃盗団に襲撃された。逃走に使われたロータス・カールトンは、望まれない形で注目を集めた。

【画像】世界最速だった4ドアサルーン ロータス・カールトン 最新5ドアの電動ロータスも 全108枚

「このクルマは、遠くの場所に隠されていたのでしょう。特定の管轄内で、被害が繰り返されました。そこで真剣に向き合うべく、3つの警察署で連携して解決に当たることになりました」。当時警察官だった、ブライアン・オズボーン氏が話す。

11回目の襲撃は、手荒な内容だった。1994年1月6日、警察署の向かいにある新聞販売店が狙われた。ロータス・カールトンは、バックで店に突っ込んできたという。

駆けつけた警官は、警棒で応戦。1枚のサイドウインドウを叩き割るものの、2人組の犯人は逃げ去った。盗んだタバコを、路上に撒き散らしながら。

地元の新聞は、警察が犯人のクルマへ追いつけないことを問題視した。わざとスピードを落とし、パトカーを挑発。巨大なトルクで、からかうように逃亡した様子も報じられた。

しかし、高速で走る逃走車の追跡には危険がつきまとう。窃盗団を死なす可能性だけでなく、警官の命も安全とはいえなかった。

「ヘリコプターが最終手段になりました。犯人がクルマを放棄したのは、その効果でしょう」。新しく導入された航空機による支援が、大きな抑止力をもたらした。

40 RAのナンバープレートだけが戻ってきた

1週間ほど平穏な日が続いたある時、ウェスト・ミッドランズ州に水没車両があるという通報が入る。運河を塞ぎ、船の通行を妨害していた。

水中から回収されたロータス・カールトンは、ステレオデッキがなくなっていたが、40 RAのナンバーは付いたままだった。バーミンガム警察の科学捜査研究所へ運ばれると、指紋採取用の紫外線パウダーが全体に吹きかけられた。

6週間に11回も続いた、連続窃盗事件は幕切れとなった。「彼らはハイパワーなクルマを再び手に入れて、繰り返すだろうと考えていました。しかし、再発はありませんでした」

「犯人は、その後も捕まっていないようです。スリルを楽しみながら、戦利品を持ち帰ったのでしょう。われわれは、犯人へ接近できませんでした」。ブライアンが振り返る。

捜査を終えたカールトンは、無惨な形のままスクラップ置き場へ。40 RAのナンバープレートだけが戻ってきたリチャードへ、保険会社は別のクルマを手配した。だが、それへ満足することはなかった。

それから30年近くが過ぎた2022年、もう一度購入できるチャンスが彼へ巡ってきた。「長い間、探していたんです。インターネットで発見したんですが、グレートブリテン島の北にある、ルイス島の住人が売り手でした」

「かなりの修理が必要で、新車のように仕上げるのは難しいだろうと考えていました」。とリチャードは説明するが、このモデルを専門に扱うアガメムノン社によるレストアで、美しく仕上げられた。

パトカーとして活躍したローバーSD1 3500も

ウェスト・ミッドランズ州で、リチャードと合流。以前と同じナンバープレートが張られた、ロータス・カールトンの鍵をお借りする。直列6気筒ツインターボエンジンは、すぐに勇ましいサウンドで目覚めた。

当初の愛車が放置された運河は、ここからさほど遠くない。「自分の記憶へ強く刻まれた事件になりました。社会の注目も高かったですね」。1999年に警察を退職したブライアンが、インペリアル・グリーンのカールトンを見つめながら口にする。

「毎朝、これを見かけなかったかと聞かれました。目立つクルマなのに、ナンバープレートも覚えやすい40 RAなんです。生意気でしたよね」

今回、一緒にご登場願ったのは、レストアを終えたばかりのローバーSD1 3500。ウェスト・ミッドランズ州のパトカーとして活躍してきた車両だ。1984年式で、当時でも旧式になっていたが、40 RAを追跡した可能性はある。

これを所有するのは、デビッド・ニューボールド氏。100km/hで走るには、ツインSUキャブレターの調整が必要になるらしい。彼と一緒に、メカニックのジェイミー・ウィリス氏もやって来た。

ブライアンはロータス・カールトンに乗り、かつて向き合った困難を回想する。「これは、当時の最先端でした。速さへ対応する手段が、われわれにはありませんでした」。だが今では、路上にはナンバープレートの読取りカメラが整備されている。

伝説的な物語になった黒歴史

1994年でも、V8エンジンを積んだランドローバー・レンジローバーより、特別なカールトンは余裕で速かった。SD1 3500には悪いが、動力性能には圧倒的な差がある。

6速マニュアルは、シボレー・コルベット ZR-1のものが流用されている。ロータスの技術者はトランスミッション・トンネルを加工し、シフトレバーの場所を確保した。

ターボチャージャーが回転数を高める前から、24バルブの直列6気筒ユニットはパワフル。リミテッドスリップ・デフと、チューニングされたサスペンションが、しっかり57.8kg-mの最大トルクを受け止める。

ただし、トラクション・コントロールはない。窃盗団がコントロールを失うことなく、11回も逃走できたことには驚いてしまう。

高速道路を降り、ウェスト・ミッドランズ州のとある商店街へ。現在は違うが、過去に窃盗被害にあった新聞店があった場所だ。ロータス・カールトンとパトカーのペアは、少なくない注目を集める。

かつてを知る地元の人が、「盗まれたクルマですか?」。と興味深げに聞いてくる。インペリアル・グリーンの落ち着いた4ドアサルーンへ、次々にスマートフォンのレンズが向けられる。

新車当時、40 RAのナンバーの1台は、ロータスにとってもヴォグゾールにとっても頭痛の種だった。黒歴史かもしれない。しかし時間が過ぎた今では、不謹慎だとしても、このカールトンの速さを裏付ける伝説的な物語になったようだ。

協力: ウェストマーシア警察、ブルーライト・ビークル保存グループ
執筆:ライアン・スタンデン(Ryan Standen)

ロータス・カールトン(1989~1992年/英国仕様)のスペック

英国価格:4万8000ポンド(新車時)/9万ポンド(約1818万円/現在)以下
生産数:949台(ロータス・オメガを含む)
全長:4763mm
全幅:1930mm
全高:1435mm
最高速度:283km/h
0-96km/h加速:5.2秒
燃費:8.1m/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1690kg
パワートレイン:直列6気筒3615cc ツイン・ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:382ps/5500rpm
最大トルク:57.8kg-m/4200rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)

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