7月30~31日に“聖地”インディアナポリスで開催された2022年NASCARカップシリーズ第22戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』は、今季第18戦のロードアメリカでシリーズ初優勝を遂げたばかりのタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、ロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)との激しい“オーバータイム・バトル”を生き延び今季2勝目を獲得。新たな“ロードコースの覇者”に名乗りを上げた。
全長2.439マイル(約3.925m)、14のターンを有するインディアナポリス・モータースピードウェイ(IMS)ロードコースが舞台となった週末は、土曜走り始めのプラクティスでオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が最速を記録する。しかし予選では、そのシンドリックに並んで平均99マイル台に乗せてきたレディックがセッションの最終盤で逆転を決め、昨季のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)に続くキャリア2度目のポールポジションを手にした。
インディアナポリス戦の2023年復活が正式決定。インフィールドでは“初の試み”も/IMSA
「実際の感触はあまり良くなくて、それが最後の最後までアタックを続けた理由のひとつだった」と明かしたポールウイナーのレディック。「もっと良い仕事ができたかもしれないが、最終的に充分なラップだったようで、僕らが本当に素晴らしい仕事をしたことが証明できてうれしいよ」と、前回の初優勝後には2024年からのジョー・ギブス・レーシング移籍もアナウンスしているレディック。
一方、この土曜が自身初のストックカー・デビューとなった元F1ドライバーのダニール・クビアトは、NASCARでの最初のラップを「本当に興味深い体験だった」と振り返った。
「今日は周回を重ねることが非常に重要だった。短いフリープラクティスに、短い予選だったし、今日、このクルマに慣れるために重要な周回をこなせたことをとてもうれしく思うよ」と、最終的には予選36番手となったクビアト。
「僕が最後に戦ったレースは、2020年にアブダビで行われたF1最終戦だったからね。とても興味深い経験だ。NASCARのマシンをドライブするのはいつも魅力的で、ついに実現できてとてもうれしいよ。本当に楽しかったし、心底カッコ良かった(笑)。明日が楽しみだよ」
クビアトはチーム・ヘイズバーグ・バイ・ローム・ブラザーズ・レーシングが用意した26号車トヨタ・カムリのステアリングを握っているが、チームが週末に2台のクルマを走らせたのはこれが初で、クビアトは今季少なくとも8月後半のワトキンスグレンと、10月のシャーロット“ローバル”への参戦を望んでいる。
「僕らは非常に小さなチームで、そのことは忘れないでいて欲しい。まだスタートしたばかりで、今回のクルマも最後の瞬間に準備が間に合ったようなもの。もしあなたがファクトリーにいたなら、そこにどれだけの労力が費やされ、すべてが最後の瞬間までどのように実行されたかに驚くだろうね。このクルマは本当に愛を込めて組み立てられたんだ!」
迎えた日曜決勝はスタートから“4-5ワイド”でターン1へと隊列が流れ込むと、その後は予想に反してクリーンな展開となり、ステージ1はフォード・マスタングのチェイス・ブリスコとライアン・ブレイニーのスチュワート・ハース陣営がワン・ツーで獲り、ステージ2はクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が制し、単発の接触スピンは多発したものの、最初のコーションは62周目まで待つことに。
レースは中盤の折り返しを迎え、ベルとレディックが見応えあるサイド・バイ・サイドで首位争いを繰り広げるなか、序盤の接触でマシン修復を強いられていたディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がターン1でコントロールを失い、タイ・ディロン(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)を道連れにクラッシュ。ここで初のイエローとなる。
■5番手チャスティン、最終決戦で型破りな戦略に打って出る
残り18周のリスタートでは、レディック、ブレイニー、そしてベルらが肉弾戦を演じ、この際のダメージが蓄積したか、ベルのカムリは右フロントタイヤが吹き飛びふたたびびのコーションとなる。このイエロー直前にはそのベルとの対決を制し、レディックを追走していたチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も、80周目のリスタート直後にターン1の3ワイドでサンドイッチ状態に陥りスピン。この結“"オーバータイム”リスタートの引き金となってしまう。
迎えた85周目の最終決戦は、首位レディックとその隣に並んだ昨季勝者A.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)に対し、5番手にいたチャスティンが、なんとブレーキングを回避するかのようにオーバルのエスケープロードへ突進。一方で、ターン2ではアルメンディンガーと絡んだブレイニーが“Tボーン”の横向き状態でプッシュされ、この2台は大きくポジションを失うことに。
結果、ラスト1周でレディックの前に立ちはだかったのは、アクセスロードから復帰してきた2022年の“台風の目”チャスティンで、2台はインフィールドで左右を入れ替えながら、サイド・バイ・サイドの勝負を繰り広げる。
しかし最終セクターで左右スイッチから、絶妙なトラクションを掛けたレディックが前に出ることに成功し、予選アタックのみならずレースラップでもIMS最速の座を証明してのトップチェッカーとなった。
「僕らは自分たちに何ができるかを知っていたし、ロード・アメリカでやったことを再現しただけさ」と、最終的にこの日最多の38周をリードしたレディック。「ここインディアナポリスでそれができたことを本当にうれしく思うし、ブリックヤードに少しキス出来たことに本当に興奮しているよ」と続けたレディック。
しかし、最後の勝負となったチャスティンの型破りな戦略を見て、少し「ショックを受けた」と明かした。
「さすがに『う~ん』と、考え込まされた(笑)。もちろん僕らも考慮していたシナリオで、ターン1で行き場がない時はアクセスロードに逃げるのも手段だ。でも、彼が僕より先に行ったなんて信じられなかったよ。だから彼がペナルティを受けるかどうか、ちょっと待っていたんだ。本当に驚いたし、それをやろうとしたロスには脱帽だが、うまくいかなくて本当に良かったよ(笑)」
このチャスティンの策略に対し、懸念を表明したNASCARのレーススチュワードは、レースタイムに30秒加算のペナルティを科し、チャスティンは27位に降格。結果、2位にチーム・ペンスキーのシンドリック、3位ハリソン・バートン(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)のトップ3となった。
「ターン1で混乱しないようにしただけなんだ」と、レース後に釈明したチャスティン。「僕らはターン1に向け4ワイドの状態で、これ以上は右にステアすることはできないと判断して、NASCARのアクセスロードに退避した。僕らのクルマに対する純粋な反応でもあったし、練習中にたまたまターン1をオーバーシュートしてしまい、アクシデントを避けて合流した場所に戻っていた。その経験を活かしただけさ」
プレーオフがあと6戦後に迫ったNASCARエクスフィニティ・シリーズ第20戦は、カップでも躍動した“AJ”が今季3勝目を挙げ、ロードコースでの全勝記録を継続。
一方、同じインディアナポリスのブラウンズバーグに位置する、レースウェイパークで開催されたNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズ第17戦は、ファイナルラップでゼイン・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォードF-150)を抜き去ったグラント・エンフィンガー(GMSレーシング/シボレー・シルバラードRST)が、プレーオフ最初のイベントで今季初優勝を達成。
服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズは、トヨタ・タンドラTRD Proの16号車タイラー・アンクラムがトップ3争いを展開しての今季最上位6位、チェイス・パーディの61号車は27位でレースを終えている。
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