クルマに装備される機能のなかでさまざまな車種に普及しているのが、イオン発生装置です。この装備は、人工的にイオンを作ることで元の状態より空気中のイオンの数を増やすほか、プラスとマイナスのイオンを適切な比率にする機能などを持つ電装品です。
美容系の家電製品などに付いている機能ですが、なぜクルマに装備されるようになったのでしょうか。
カーエアコンの設定が眠気を催す? あなたは「外気」派?「内気」派? 本当はどちらがよい?
最近の新型車には、フルオートエアコン機能のひとつとしてイオン発生装置が付いている イオンとは、空気中の原子や分子が帯電したもので、負(陰)の電荷を帯びたものをマイナスイオン、正(陽)の場合をプラスイオンと呼び、どちらももともと大気のなかに存在します。
イオンに関する研究自体は、1990年初頭からおこなわれていましたが、一般的に知られるようになったのは2000年頃です。
テレビ番組などを筆頭に各メディアが、ストレス軽減やリラックス、空気中のチリやホコリを除去する空気清浄といった効果が期待できるとマイナスイオンを紹介。一躍大ブームとなり、数多くのイオン関連製品が発売されました。
イオン発生装置を国産車で初めて搭載したといわれているのが、トヨタ「センチュリー」です。2001年の一部改良にて、ルーフ中央に設置された機器からマイナスイオンを発生させます。
また、近年増えているエアコン組み込みタイプのものでは、2003年から日産「マーチ」でオプション選択できるようになった「プラズマクラスターイオン・エアコン」が最初です。
イオン発生装置がクルマの標準装備やオプション装備になった理由について、大手自動車メーカーの広報は次のように話します。
「もともとは、数ある快適装備のひとつとして、採用されるようになりました。普及したきっかけは、クルマの購入意識において、女性からのニーズが高まったことが大きいです。
そのため、イオン系の装備だけでなく、小物が多い女性ユーザー向けに収納スペースを増やすほか、可愛らしい内外装デザインも増えています。
また、イオンには、ストレスの軽減やリラックス効果のほか、除菌や殺菌など車内を清潔にするのにも役立つといわれています。それらの理由から、快適な室内環境を提供したい自動車メーカーからすると、クルマの快適装備品としては重要なものとなります」
※ ※ ※
現在では、標準装備などエアコン組み込みタイプ(エアコン機能のひとつ)か、後付けオプションのLEDルームランプなどと一体型のルーフ設置型が主流です。
また、どちらの場合もメーカー純正は、パナソニックの「ナノイー」またはシャープの「プラズマクラスター」のどちらかを採用しています。
「長持ちのナノイー」と「除菌のプラズマクラスター」大きな違いはなに?ホンダの純正オプションには、LEDライトと一体型の「ナノイー」装備も存在 メーカー純正で採用されているナノイーとプラズマクラスター。ナノイーは、パナソニックの商標で、空気中の水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの微粒子イオンを指します。
従来のイオンは、壊れやすいため拡散しづらいものでしたが、ナノイーでは水に包まれているため長持ちし広範囲に届きやすいというのが特徴です。
一方のプラズマクラスターは、シャープが開発したプラズマ放電を利用したイオン生成の技術で、空気中の水と酸素から水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させます。
このプラスとマイナスのイオンが結合することで、空気中の雑菌やカビ菌を不活性化させる効果があるといわれています。
イオン発生装置自体は、カー用品店でもさまざまな商品が販売されています。これらの汎用品の多くも、ナノイーとプラズマクラスターが中心で、5千円から1万2千円のものが主流です。
低価格帯のものはエアコンの吹出口に取り付け、エアコンの送風を利用してイオンを拡散するタイプで、高額なものは拡散用のファンを内蔵しています。
なお、ナノイーとプラズマクラスターなどにこだわらないのであれば、シガーソケットに挿すだけの簡易なものが2千円以下から購入可能です。
その相性の良さから高級車に搭載され、今では軽自動車でも採用するモデルがあるほど普及したイオン発生装置。
一方で、イオンは存在も効果も目に見えないため手を出しづらいという側面があるのも事実です。
しかし、「マイナスイオンブーム」から約20年経っても多くの商品があるということは、一過性のものではなく定番化した機能商品といえます。
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