この記事をまとめると
■いまだ納期遅延が続くトヨタ・ハリアーのZ“レザーパッケージ”に試乗した
ハリアーが前代未聞の「納車キャンセル」という異常事態! 契約者への対応はどうなる?
■レクサスブランドのクルマのような質感と静かで安定した走りにRAV4との差別化を感じた
■ハリアーに試乗し、なぜかハイソカーブームの頃の「マークIIイズム」を感じた
いまだ納期遅延が続くハリアーの人気グレード
ここ最近は人気車を中心に、長期の納期遅延となるモデルが目立ってきている。2022年7月に正式発売となった日産エクストレイルも、筆者が話を聞いたときには多くのバックオーダーを抱えるなか、販売現場では半導体の問題なのか、生産が停止されているので新規の受注も停止している、と説明していた。新規受注を停止しているモデルではほかにトヨタ・カローラクロスなどもある。そして、今回試乗する機会を得た、改良後のトヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ”(あとZ)も新規受注を停止しているモデルとされている。
エクストレイルやカローラクロスは、全車が新規受注を停止しているが、ハリアーはSやGグレードは新規受注を受け付けており、筆者が調べた段階で新たに発注すると、納車予定は2023年4月以降となっていた。
現行ハリアーは2020年6月にデビューしているが、昨今のサプライチェーンの混乱や半導体の供給問題などが起こる前、デビュー直後からとくにZ“レザーパッケージ”の納期遅延が顕在化したまま今日に至っている。「プレシャスブラックパールのオプションカラーを選び、調光パノラマルーフを装着すると、さらに納期が延びる」とは、デビュー直後にすでに販売現場で聞いた話。
2020年6月といえば、すでに新型コロナウイルス感染拡大が起こっており、同年4月と6月は全国的に厳しい行動自粛要請が政府より発せられ、新車販売も大きなダメージを受けた。しかし、2020年6月に厳しい行動自粛要請が解除されると、新車需要が一気に盛り返すこととなった。行動自粛要請解除といっても“厳しい”ものが解除されただけで、海外旅行はもとより、国内旅行や、外食もままならない日々が続いた。
そのなか、新車販売現場は法定点検などアフターメンテナンスも行っているということで、ほかの小売店が営業自粛を強いられるなか、営業時間を短縮するぐらいでほぼ通常営業体制となっていた。余暇への出費が減り、貯蓄が増えたという家庭もでてくる事態となるなか、“コロナ禍でも贅沢な買い物ができる数少ない商品”ということで、新車に乗り換える人が目立ってきたのである。
軽自動車や実用車では、コロナ禍で公共交通機関の利用自粛の動きもあって販売が好調となったが、ハリアーのような高額車両は“数少ない贅沢な買い物”として注目を浴びた。ハリアーは初代と2代目が、日本国内ではレクサス店がまだ開業していなかったころにラインアップしていたので(2代目途中の2005年から日本国内でもレクサスが開業)、海外での初代、2代目レクサスRXが、日本では初代、2代目のハリアーとなっていた。その名残りでいまもトヨタ車のなかでもとくに高級なイメージを感じる人が多いこともあったようだ。
また、トヨタは2020年5月にすべてのトヨタ系正規ディーラーで、すべてのトヨタ車が買えるようになっており、かつてはトヨペット店専売であったころから人気車だったハリアーを新規に扱えるようになったトヨタ店やカローラ店、ネッツ店でも現行ハリアーがよく売れるようになり大ヒットにつながった。
ただ、前述したハリアーの納期遅延が顕著な仕様については、生産に際し、ほかの仕様よりも時間がかかるということも納期遅延を長引かせたようだが、「残価設定ローンが普及して上級グレードを選択する人が増えるなか、コロナ禍となるとさらに高い上級グレードを選ぶ人が増え、本来はそこまで受注が集中するとは思わず、つまりはこれだけの需要予測を読み切れなかったのではないか」との話もある。
限られたコストのなかで高級感を演出する姿にマークIIを思い出す
今回試乗したのは、ハリアーのZ“レザーパッケージ”で、調光パノラマルーフをオプション装着し、有償色のプレシャスブラックパールという、まさにハリアーのなかで“もっとも納期がかかる”人気グレードといっていいモデル(生産の都合もあり納期が長くなるが、それでもニーズが減らないのだから人気グレードといっていいだろう)。
運転席に乗り込み、スタートボタンを押すと、今回の改良での目玉のひとつとなる、12.3インチのフル液晶TFTカラーメーターが表示される。この分野でも日本車は出遅れ感が否めなかったが、好き嫌いはあるだろうが、商品力アップにこのメーターが貢献しているのは間違いないだろう。
運転席から見える風景はトヨタブランド車ではなく、レクサスブランド車のような質感の高いものとなっている。さらに、座った瞬間にシートの出来がいいのに驚かされた。少々太めの筆者は、最近の多くのトヨタ車はサイドサポートがきつい(愛車である現行改良前カローラセダンもきつい)印象を受けるのだが、試乗車はきつい印象はない。座面もたっぷりしていてシートバック(背もたれ)では腰のあたりのフィット感がじつにいい。ファブリック+合皮やファブリックのシートでも同じ印象なのか確認したくなってしまった。
シフトをDレンジに入れて発進。アクセルを極端に踏み込まなければ、車内の静粛性はかなり高い。やや乱暴にアクセルを踏み込むと若干のメカニカルノイズが車内で目立ったので、欲を言えばもう少し何とかしてほしかった。
郊外の広い道路を走っていると、静かで走りも安定していることもあり。知らないうちにアクセルを踏み込み速度をどんどん上げているのに驚くことがあった。ベースとされるRAV4は、日本も含め世界的に大ヒットしているモデル。RAV4も運転してみると「世界で売れるのも納得」と思えるほど、素性の良さが運転していて伝わってくる。このRAV4をベースにラグジュアリームードを高めたクーペSUVとしてのハリアーがあるとすれば、トヨタらしいRAV4譲りの素性の良さを受け継ぎながら、性格分けがよくできているものと感じる。
個人的には、ハリアーぐらいの車格のモデルは、トヨタ車のなかでは価格と性能や質感のバランスが秀逸だなと常々感じている。調光パノラマルーフと有償色を選んでも車両価格は500万円を少し超えるぐらいとなり、誰でも手軽に買える価格ではないものの、試乗してみると、「これで500万円少し超えるぐらいなの?」と思える満足感を覚える人は少なくないはずで、それが人気につながっているものと考える。
今回ハリアーを試乗して、かつてのマークIIを思い出した。“ハイソカーブーム”などとも呼ばれた時代、そのブームをけん引していた4ドアハードトップでスーパーホワイトIIのマークIIグランデは、やはり当時誰もが気軽に買えるクルマではなかったが、爆発的に売れていた。筆者は当時は貧乏学生もしくは社会人になったばかりでもあり、人気絶頂だったころのマークIIを運転する機会には恵まれなかったが、今回ハリアーを試乗してなぜか“マークIIイズム”というものを感じた。
いまはマークIIクラスの正統派セダンは日本車ではほぼなくなっている。かつて、マークIIクラスのセダンに乗っていた人なども含め、幅広い層をひきよせる魅力を現行ハリアーは持っているようにも思えた。
レクサス車ほど、ずば抜けた高級感は追求していないものの、レクサス車よりは明らかに限られたコストのなかで(細かくコスト削減しているなと思えるところも見受けられるが……)、目いっぱい高級感も含めた高性能を追求している姿勢は、かつての日本車の真骨頂のひとつでもあり、とくにトヨタの得意技のひとつと考えている。このようなクルマ造りに対してDNAレベルというのは大げさかもしれないが、刺激を受ける人がまだまだ日本人には多く、現行ハリアーはデビューから一貫して人気車となっているのかもしれないと試乗して強く感じた。
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みんなのコメント
そりゃ、ハリアーも500万クラスのグレードとなれば、それに見合った質感じゃ無きゃ、選んでもらえないでしょ。
社会情勢、景気、物価の変化はあれど、クルマに500万出せる人となると、結構限られるからね。
この記事タイトルは2年も経ったのに受注停止みたく読み取るような誘導記事。
それともライターはそれすら知らないのか?
今はマイナー後なので普通に販売してた。